594.深まる謎
※加筆修正を行いました。
中立の者達が集まっている魔界の最西端。
その大陸の空を進んでいくイリーガル達は『ステア』の言う『結界』をようやく目視が出来る場所まで辿り着いた。
すでに結界の内側へと入っていったステアだがその姿はもう見えない。魔力自体は感知出来る為、どうやら結界の内側に入らなければ、目で確認は出来ないようであった。それだけでかなり高レベルの結界という事が理解出来たリーシャ達だった。
「イリーガル様? ソフィ様の命令でもありますし、ステアさんが行ってたようにこのまま入りましょうか」
結界を気にせず入ってくれとステアに言われはしたが、この『アレルバレル』の世界で初対面のモノが言う事を正直に信用する馬鹿はいない。
しかし今は彼らの主人であるソフィの命令でこの場所に来ている以上、渋々ではあったがイリーガルは、リーシャの言葉に頷いて結界を抜けるのであった。
…………
「何だと?」
結界を抜けた先に待ち受けていた光景に、イリーガルは驚きの言葉を漏らす。驚いていたのはリーシャも同じだったようで、呆気にとられたように目を丸くして驚いていた。
どうやら外からは結界の影響の所為か、中の様子が分からなかったようだが、結界の内側には数千以上を越える大勢の魔族達が整列して立っていた。
「驚かれましたか?」
驚いているイリーガル達を見て満足そうに笑う男は、先に結界の内側へ入っていたステアだった。
「ああ。これは驚いたな。これも『結界』の力なのか?」
これだけの数の魔族が集結していたというのに、同じ大陸に居ながらにして『結界』の外側からは、全く彼らの魔力を感知が出来なかったのである。
イリーガルやリーシャは単なる魔族ではない。大魔王上位から最上位の入り口に立つ選ばれし『九大魔王』達なのだ。
そんな領域に立つ者がたかだか結界一つで、これだけの人数の認識を阻害されたという事実に、イリーガルもリーシャも驚かざるを得なかった。
「そうです。ですが素直に喜べる事でも無いのですがね」
ぼそりとそう呟くステアだったが、イリーガルは含みのあるステアの言葉よりも、かつての魔王軍がソフィを前に列を成している時を思い出す壮観な光景に目を奪われるのだった。
「凄い人数でしょう? ですがもちろんこの場に居る者達全員が、この大陸出身の魔族という訳ではありません。教団のやり方に嫌気がさして魔界中から反旗を翻そうと集まってきた者達なのです」
イリーガルとリーシャは、ステアの言葉に成程とばかりに頷くのだった。
確かにこの大陸だけであったなら信じられない数ではあったが、この広い『アレルバレル』の世界の魔界全土から集まった『反教団の魔族達』だというのであれば納得がいく。
逆にこれだけしか居ないという事は、残された大半の者達が『煌聖の教団』の在り方に比較的肯定的、もしくはもう諦めた者達だという事になる。
ソフィの魔王軍が全盛期の頃であったならば、同盟を含めるとほぼ『煌聖の教団』以外の全ての魔族がソフィに従っていたのだ。
ソフィと主だった『魔王軍』達が教団の者達に跳ばされた後のこの僅かな期間で、ミラ達がここまで勢力を伸ばしたという事実の方が驚くべきかもしれない。
大魔王ソフィという絶対者が居なくなれば元々気性の荒い魔族達は、好き勝手に暴れたがるところだろう。
それをあっさりと従えて見せた『煌聖の教団』の総帥であるミラもまた侮れない『カリスマ性』と『力』を持っている証拠なのかもしれなかった。
「しかしもう気づいておられるかもしれませんが『煌聖の教団』の者達はここに居る人数の数倍、いや数十倍の数の組織へと変貌を遂げています」
しかしとそこでイリーガルは一つ疑問が脳裏に浮かんだ。
『煌聖の教団』の総帥であるミラは、この世界から今はいないのかもしれないが、ほとんど潜伏している者達の魔力を感じ取れないのである。
先程まで追尾してきていた者達でも少しは魔力を感知することが出来たが、この場に居る魔族よりも教団の魔族が多く居るのであれば、もっと感知出来ても可笑しくはない筈なのである。
イリーガルが悩む素振りを見せた事で、ステアはすぐに口を開いた。
「先程からイリーガルさんが考えているのは、教団の者達の『魔力』が感じ取れないという事でしょう?」
ステアにあっさりと見抜かれた事で、イリーガルの表面上は冷静さを保ち続けているが、内心では相当の驚きであった。
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