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588.ミラの後悔

※加筆修正を行いました。

 イザベラ城の地下牢から玉座のある部屋に戻ってきたミラは、ルビリスから治療を受けているヌーに話しかける。


「一体どういう事だと思う?」


「チッ……! アイツの支配が出来なくなった事か?」


 どうやら未だに魔神と戦っていた時に行った『ミラ』の裏切りとも呼べる行為に、不満を持っているのであろう。満身創痍の身体から、ようやく動けるようになったヌーだが、今度は体力をルビリスに回復させながらもヌーは苛立ちを隠そうともせずに、言葉だけはミラに返す。


「これまでかなりの年月を操ってきたというのに、突然自我を取り戻されるとは思わなかった。魔神の影響だとは思うが、どうやら抗体のようなモノを今のアイツの身体には出来ている。このままでは色々とマズイな」


「もうあいつは用済みなんじゃないのか? 魔神から得た力は、十分だと言っていただろう」


「確かに今のままでもかなりいい線はいくだろう。魔神から二つ目に得た大魔王達を即座に浄化させた力は、不死の存在でなければ、あの魔神すらも無抵抗にするだけの力があると私は感じたし、実際にお前が相手でも容易に消し飛ばせると睨んでいる」


 ジロリと床で座らされて治療を受けているヌーを、見下ろしながらミラはそう告げた。


「ふんっ! お前の相手は化け物だ。そう上手く行くとは思えんがな」


 確かに今のミラにはヌーは勝てないだろう。


 それを理解出来ないヌーでは無い為、ミラから視線を外して厭味のある声でそう告げた。


「その通りだ。今回の作戦で得た力は確実に九大魔王や『エルシス』を越えたと実感出来る。


 だが、魔神に打ち勝ちあろうことか、配下にまでしてしまった大魔王ソフィには、当然このままでは足りないと理解している」


 ミラはそこで一度話を切りながら天井を見上げる。


「だからこそ『フルーフ』は()()()()だと言っているのだよ」


 そして溜息を吐きながら突然に自らの支配から抜け出した『フルーフ』の処遇に悩むミラであった。


 単純に殺すだけならフルーフの強さなど問題にならないが、再び支配下に置くとなれば面倒の加減は一気に増す事になる。大魔王フルーフは、大賢者エルシスと同じくらいに天才だとミラは見ている。


 ――そしてそれは決して間違いではない。


 だからこそミラはフルーフに目をつけて、ソフィの元から奪ったのである。


 しかし『金色の目(ゴールド・アイ)』ですら操れないとなれば、こちら側に引き込むのは難しい。


 それにどうやらこの数千年操っていた期間の出来事を『フルーフ』は、うっすらと気付いているようであった。


 何よりミラやヌー。そして魔神と戦った時の『発動羅列』などを解析することが出来るフルーフは、今後エルシス以上に厄介な()になり得る。


 ――このタイミングで、一番とるべき行動として最良なのは『始末する事』であるといえる。


 大魔王ソフィも面倒だが、大魔王フルーフもまた、容易にはのさばらすワケには行かない存在であるのだ。


呪縛の血(カース・サングゥエ)』といった呪文は、別世界の魔族達にも多大な影響を及ぼした。何より『概念跳躍(アルム・ノーティア)』など『煌聖の教団(こうせいきょうだん)』という『組織』の総帥であるミラにとっては、必要不可欠な魔法となっている。


 ここでフルーフを消し飛ばすのは簡単だが、それは今後を考えると決して取ってはいけない選択肢だろうとミラは考えるのであった。


「最初の計画通りに行っていれば、ここまで悩む事も無かっただろうにな」


 ミラはソフィを別世界に跳ばした時点で、ある種勝利を確信していた。


 後は慌てる事なく冷静に、時間を掛けてフルーフから『概念跳躍(アルム・ノーティア)』以上の新魔法を編み出させて、完璧な状態で『魔神』を利用する計画を企てていたのである。


 それがまさかエルシスの生まれ変わりのような存在が『リラリオ』の世界に現れるとは夢にも思わなかった。


 もしリラリオの世界ではなく、ダールや別の世界に跳んでいてくれたのであれば、こんな事にはならなかっただろう。


 折角『アレルバレル』の世界から大魔王ソフィを追放するという、再び行うには絶望的な事が出来たというのに、こうなるとは誰が予想出来ようか。


 ――余りにも現実はよく出来ているものである。


 次から次にこういった後悔が『ミラ』に押し寄せてくる。


 ミラは舌打ちをしながら仕方のない事だったと割り切り、今後の展望を考え始めるのであった。

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