525.ソフィVSレキ
※加筆修正を行いました。
「ただオーラを纏わせるだけでこれだけ時間を掛けさせられるとはな。やはり早く使える別の身体を手に入れなければいけねぇな」
ソフィは無言でレキの言葉を聞いていたが、もういいだろうという意思を込めた視線をレキに送るのだった。
「おっと。待たせて悪かったな。別世界の支配者よ」
「クックック。お主は『代替身体』なのだったな? 命まではとらずにおいてやるから安心するがよいぞ」
「ククククッ! この俺にそこまで舐めた口を利くか。いいだろう。ある程度本気で相手をしてやる。さっさとかかってこい」
「では、行くぞ?」
その言葉を最後にソフィは『魔力回路』に一瞬で溢れる程の魔力を注ぎ込みながら、レキに向かって突っ込んでいく。
対するレキは腕を組みながら堂々とソフィの出方を窺う。現在のソフィは何もしていなくとも、恐ろしい程の威圧を周囲に放つほどであり『スタック』で『魔法』の準備をしながら突っ込んでくるソフィは、並の大魔王では恐怖で竦んで動けない程だった。
――しかしレキはそのソフィの行動に対して『スタック』の準備もせずに、本当に微動だにせずにソフィを待っているだけであった。
「ではまずはこの辺から行ってみようか!」
――超越魔法、『終焉の炎』。
ソフィは『レパート』の世界の『理』を用いた『終焉の炎』で、どう防御をするかで今後の行動を決めようとする。
――しかしここまで来てもまだレキは動かない。
大魔王の領域に居る魔族であれば、確かに超越魔法程度で脅威など一切感じないのは分かる。しかし今この魔法を放っているのは『アレルバレル』の世界の支配者にして、この無視が出来ない程の膨大な魔力をみせているソフィである。
それも通常形態ではなく『ハワード』を一撃で葬った『第二形態』と変身を遂げている。この形態で『三色併用』を用いた時の『終焉の炎』は、魔神の使う結界に亀裂を入れる程の威力を有していて、当然それほどの魔力で放たれた魔法差し迫っているというのに、レキは防御手段を何も取らずに薄く笑みを浮かべているだけだった。
やがて炎はレキを包み込んで外からはその姿が見えなくなる程に、炎のその勢いは更に増していくのだった。
「何だ? そのまま死ぬ気なのか?」
レキの出方次第で追撃の方法を変えようと考えていたソフィは、一切その動きを見せないレキの様子に流石に動きを止めてそう呟きを残す。
「……」
炎に包まれたままのレキの姿がまだ見えない為に、ソフィは仕方なく『漏出』で、レキの『魔力』を確かめようとする。
――その瞬間であった。
燃え上がるソフィの魔法の中心地点。その場所に居た筈のレキから衝撃波が放たれた。まさに一瞬の閃光は、炎を吹き飛ばしながらソフィに真っすぐと向かってくる。
「!?」
ソフィでさえ目や感知では間に合わず、別の魔法の発動の為に準備していた『スタック』を使って咄嗟に無詠唱で魔法を使わされるのだった。
――神域『時』魔法、『次元防壁』。
次元の彼方へ衝撃波を弾き飛ばすソフィだったが、視線の先には既に『レキ』の姿はなかった。
ソフィはすでに目でレキを追う事を諦めて、魔力感知を使いながらレキの場所を探る。そして魔力を感知して真上にレキを捉えたソフィは、そちらに視線を送ることはなく、極大魔法を放つ為の『発動羅列』を刻み並べていく。
キィイインという甲高い音が響き渡ったかと思うと、ソフィの目が金色に輝き『アレルバレル』の世界の『理』が刻まれた魔法陣が高速回転する。
――神域魔法、『普遍破壊』。
瞬間――。
上空の死角からソフィを攻撃しようとしていたレキは、一瞥もくれずに放ってきたソフィの『普遍破壊』の威力の規模の想定を行い、そこから行動選択を変えざるを得なくなった。
自分勝手な性格をしている彼にとって、行動選択を無理やり変えられる事は許せなかったのだろう。彼は舌打ちをしながら『魔力回路』から魔力を外へと放出する。
――神域魔法、『累減』。
ソフィの極大魔法によってレキの身体が木端微塵に吹き飛ぶかと思われた矢先、レキの用意していた『スタック』で咄嗟に魔法を発動させる。どういう効果なのか分からないレキの魔法をソフィは目で追うが、レキの周囲一帯に影響を及ぼす程の大爆発を起こす筈が、レキの『累減』によって、魔法の規模が縮小される感覚をソフィは感じるのだった。
どうやら先程のレキの見た事のない魔法である『累減』とやらは、ソフィの魔法の威力を削る類の魔法のようであった。
しかしそれでも完全に相殺する事は適わず、爆発が始まるかと思われた。その瞬間に再び『レキ』の金色の右目が輝きを増していく。
ソフィは光り輝くレキの『金色の目』を見て、また自分を動けなくさせられるかと予測をしたが、自身には全く影響を及ぼさなかったために訝しげにレキを見る。
――そこで魔法発動がすでに行われていた筈の『普遍破壊』に向けて、魔瞳『金色の目』が発動されたのだとソフィは理解する。
魔瞳『金色の目』での効力で今のソフィの魔力が込められた『普遍破壊』を解除するなど、相当な魔力コントロールに自信を持つ『ディアトロス』や『ブラスト』でさえ不可能な領域であった。
しかしどういうカラクリか、ソフィの極大魔法『普遍破壊』はその効果を発揮することなく、完全に消し去られるのだった。
「全く、やべぇ魔法を使いやがって……」
レキは悪態を吐きながら続けて右手に魔力を集約し始める。直ぐに魔法を放つでもなく『レキ』はゆっくりと、魔力を『スタック』させていく。隙だらけのその姿をみてソフィは好機と判断し『転移』を使って一気にレキとの距離を詰める。
「少しばかり時間を掛け過ぎではないかな?」
ソフィはニヤリと笑った後にまだ魔法陣さえ発動されてはいない『レキ』に向けて手を伸ばす。どうやら今度は先程みたいに待つことはせず、相手の居る状況であまりにも余裕を見せるレキを咎めようと、今度こそソフィは攻撃を仕掛けようとするのだった。
――しかし。
「いーや? お前がここまで来るのを今か今かと待っていたくらいだ」
「むっ!?」
どうやら誘いだとようやく気付いたソフィだったが、すでに伸ばした手を収める時間は残されていなかった。
「そろそろ本気と行こうか。別世界の支配者よ!」
レキの両目が『紅』と『金色』に同時に発光するのをソフィは、目前で見る羽目になるのであった。
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