49.約束の時
※加筆修正を行いました。
ソフィ達が宿の部屋を引き払い『グラン』の町へと戻る日がやってきた。
ギルドの対抗戦はやはりというべきか、リディア率いる『サシス』の町のギルドが優勝した。
準優勝には『マケド』が所属する『ローランド』の町のギルドが決めたようだった。
――これも順当だったといえるだろう。
召喚士という希少の職のレンが居る『ウィラルド』が三位でこちらも前回大会の戦績から比べると大健闘といえた。
そして『グラン』と戦い二回戦に上がった『ニビシア』のギルドだったが、この町のギルド長が大会を棄権した事で『グラン』と『ニビシア』の両ギルドの敗退となったようだ。
ソフィに会う事を恐れたのか『ソリュウ』を含めたニビシアの魔法使い達は『ルビア』を失ったその日の内に『サシス』から姿を消していた。
――あの日の夜。
ソフィに眠らされていた者達を『ソリュウ』が叩き起こした後、全員でソフィ達の居る場所へ向かおうとしたようだが『ルビア』の魔力を空で感知した瞬間に、大爆発と共に『ルビア』の魔力を感知出来なくなった事で、ソフィによって消されたのだと悟った。
彼らも『魔』に携わる者達である為、あの時のソフィの『魔法』を目視した事でどう足掻いても勝ち目はないと判断してたようで『ルビア』には悪いが我が身の方が大事だとばかりに、その場を去ってそのまま『ニビシア』へと戻ったようである。
――『ニビシア』の町ではこの日を境に『グラン』のギルドには人知を超えた魔法使いが存在していると伝えられる事となり、ソフィという大魔法使いの名は『ミールガルド』大陸の大勢の魔法使い達に恐れられるようになった。
そしてヘルサス邸で会心したスイレンは言葉通り、リーネに会いに来てしっかりと話をしたらしい。
リーネは当初こそ複雑な思いで兄と喋っていたが、話していく内にスイレンが昔に戻った事を感じたようで、最後の方には笑顔も見せたようだった。
何やらスイレンは執拗にソフィと仲良くする事を勧めてきたようでリーネも戸惑ったようである。
どうやらスイレンは今回の事で妹を任せられるのは、ソフィしか居ないと本能で感じたようである。
――そして何といってもニーアたちを驚かせたのは『微笑』の存在だろう。
ヘルサスの館から戻って来た後、正式にソフィはギルドの仲間達に『微笑』を紹介した。
自分達を傷つけた『微笑』に当初こそ思うところはあったようだが、『微笑』の謝罪とソフィの説得もあり、何とかソフィの配下として認めてくれたようだった。
冒険者ギルド長の『ディラック』は襲ってきた青服の男が大陸最強として知られる暗殺者の『微笑』と知って、そんな存在がソフィの配下となったと聞いた時には、驚愕した表情を浮かべていたが、ソフィならあり得るかもと思ったのか最後には納得をしたようである。
……
……
……
――そして、冒頭に戻る。
サシスの町を出ようと一行が門を出ようとした時にその男は近づいてきた。
「ソフィを出せ」
腰に刀を差した髪の長い長身の男が、突然現れて『ディラック』達にそう告げたのであった。
――その男の名前は、『リディア』。
今年のギルド対抗戦で連覇を飾り、二年連続でサシスのギルドを優勝に導いた最強の剣士である。
事情を知らないディラックたちは慌てたが、直ぐにソフィがリディアの前に出る。
「ディラックよ、お主たちは先にグランへ戻ってくれ。我はこの男に用があるのでな」
リーネが心配そうにソフィに声を掛けようとしたところをラルフが手で制止した。
「ご安心下さいリーネさん。ソフィ様には私が付いていますし、直ぐに追いつきますよ」
ニコニコと微笑を浮かべながらラルフは、心配そうにしていたリーネにそう口を開いた。
ソフィがお前もついてくるのかとラルフを見上げたが、そのラルフはソフィの心を読んだかのように見つめ返して微笑を浮かべた。
「貴様、別についてきても構わないが、俺とこいつの殺し合いに手を出すような無粋な真似だけはするなよ?」
リディアは牽制をするように、そうラルフに言い放つのだった。
「ご安心下さい。ソフィ様がお相手をなされる以上、私が貴方に対して何もする必要はございませんので」
ラルフは目を細めて微笑を浮かべながらそう返す。
「クックック、面白い奴だ。それならばいい、それでソフィどこで殺り合う?」
ソフィに向き直ったリディアは、戦う場所をどうするかと口にするのだった。
「お主との戦闘は少しばかり派手になりそうだ。周りに何もない僻地のような場所でやりたいのだが、それで構わぬか?」
ソフィはすでにリディアとの戦闘が、そんなにすんなり終わるとは思ってはいなかった。
「ああ……。俺はお前と戦えれば何処でもいい。お前が好きに場所を決めて構わんぞ」
その言葉にソフィは静かに頷いた。
そしてソフィはサシスの遥か西の場所。
『微笑』と戦った時に森を更地にした場所で戦うことを決めて『高等移動呪文』で『リディア』と『微笑』をその場所へと運ぶのであった。
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