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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
闘技場編

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516/2218

504.模擬戦闘

※加筆修正を行いました。

 シチョウが治める『トウジン』魔国での復興作業も大半が終了して『闘技場』も近々再開される事となった。


 そしてそんな『闘技場』に参加するラルフの為に、彼の師である大魔王『ユファ』と、ラルフに興味を持った『九大魔王』の『リーシャ』が、自分の研鑽がない日は共に『ラルフ』の修行に付き合ってくれていた。


 遂に『闘技場』が開催される日が近くなると、いつものように研鑽を続ける彼らの元にソフィとディアトロスがその姿を見せるのだった。


 ――ソフィがこの場に姿を見せたのには二つの理由があった。


 一つ目は配下である『ラルフ』の修行を見に来るという理由であるが、もう一つはシスがようやく一大決心をして自分の中に居る()()()()()()()()()()()が決まったと『ユファ』に伝えたからであった。


「これは驚いたな。生身の人間でここまでやるのか」


 ディアトロスはリーシャと模擬戦をしている『ラルフ』の動きをその『慧眼』で観察をしながら呟く。


「うむ。素晴らしい程に『青』の練度も高くなって、無理のない範疇での成長を果たしておる。流石お主が稽古をつけているだけの事はある」


 そう言ってユファの方を見るソフィであった。


「ありがとうございます。しかしここからですよ?」


 ユファがそう言って、ソフィ達の意識をラルフ達に向けさせるのだった。


 リーシャが右手に持つ短剣をラルフに振り下ろそうと振りかぶる瞬間に、ラルフから『殺気』が放たれてリーシャはぴくりと一瞬身体を震わせる。


 ほんの僅かと呼べる時間であったが、それでもラルフに届く筈の一撃が、その『殺気』で身体が硬直した分で数秒程長くなると、ラルフは先に当たる筈だったリーシャの一撃を掻い潜り、彼女の間合いへと入り込んだラルフが握っていた拳を開き、三本の指でリーシャの脇腹を突く。


「あぐっ!」


 ――『貫手(ぬきて)』と呼ばれる指での刺突である。


 ずきりという鋭い痛みがリーシャを襲ったかと思うと、そこから更にラルフの追撃が迫る。


 リーシャの顔の前に右手を出しながらラルフが手を広げると、手の平がリーシャの視界を塞ぎ、僅かな時間ではあったが、ラルフの攻撃が見えなくなった。


 リーシャは痛む脇腹を無視して、一歩下がり態勢を変えようとするが、その刹那に今度はラルフが右足でリーシャの左足を払ってみせる。


 後ろへ下がろうとしたリーシャだったが、そのタイミングで足を浮かされて重心が崩れる。この時点でリーシャは自分の攻撃パターンをラルフに読まれていると悟り、自分の攻撃パターンを今から変えるか否かでここでも悩みが生じるが、結局は今更普段の戦い方を変えたところで、攻撃が中途半端になって、為す事が付け焼刃になると考えて普段通りの行動を心掛けると、背中から地面へと倒れる寸前に身体を捻ったリーシャは、下から左手を振り上げる。


 ――その行為はラルフの繰り出そうとする追撃を、防ぐ為の一撃であった。


 しかし反動もつけられていないリーシャのその一撃は、いくら常人より早くとも()()()()()()


 リーシャの振り上がってくる左手より、ラルフは頭を低くしながら上から覆いかぶさるように、自身もリーシャへと飛び掛かる。そしてリーシャの左手を掻い潜ると二人が空中でもつれ合う。しかしその間にも互いのやりとりは続く。


 リーシャは右手で地面に叩きつけられるのを防ぐ為に受け身をとろうとするが、ラルフは左手を伸ばしてリーシャの首を掴んだ後、ぐいっと前に押しながら圧力をかける。


「かはっ……!」


 リーシャはラルフに全体重を乗せられて、押さえつけられた形で地面に叩きつけられるのだった。


 そのままラルフはリーシャの首を掴んでいる手を広げて、首の血の流れを探るように、頸動脈(けいどうみゃく)に指を置き始める。


 そこで殺られると判断した『リーシャ』の目の色が変わり、首元に置かれた『ラルフ』の腕を掴もうと手を伸ばした瞬間――。


「そこまでよ!!」


 ――ユファが慌てて声を掛けて試合をストップさせるのだった。


 その瞬間にピタリとラルフは、急所を突こうとした指を止める。


「素晴らしい……! これは見事だ!」


『青』を纏うラルフ相手に『リーシャ』は『加速』等の技術どころか、ギリギリまで力を抑え込みながらの体術メインの試合ではあったが、それでも『大魔王』領域に居るリーシャから、ラルフは一本を取ったのである。


 ラルフとリーシャの戦闘の一連の流れを見たソフィは、感服するような声を出すのだった。


「全く何処から見つけてきたんじゃ? お主の配下のあの人間はとんでもない奴じゃな。これは化けるぞ?」


 ディアトロスも感嘆の声をあげながらラルフを褒めるのだった。


 …………


「お兄さん。やっぱり強いね!」


 押し倒された状態で自分の身体の上に馬乗りになって、見下ろしているラルフを見上げながら、リーシャは試合中のやり取りを思い出して感想を告げる。


「リーシャさんこそ、ありがとうございました」


 無表情のままそう言って『ラルフ』はリーシャの身体から身を起こす。


「ふふっ。お兄さん、かっこいいじゃん!」


 礼を言った後に一瞥もくれずに歩いていくラルフの後ろ姿を見ながらリーシャは、ぽつりとそう漏らすのだった。ラルフがユファの前まで歩いていくと、ユファはラルフに笑みを見せた。


「私のアドバイスから良くここまで仕上げたわね? ルールのある試合の中でならもう『リディア』にも十分通用する筈よ?」


「ありがとうございます。残りの日数で仕上げて勝ってみせます!」


 そう言ってラルフは師であるユファに決意を告げた後、見に来ていたソフィを一瞥する。


 そのラルフを見返したソフィは、よくやったと頷くと『ラルフ』は主である『ソフィ』に、深々と頭を下げるのだった。

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