483.今後の方針と、問題発言
※加筆修正を行いました。
ソフィはシスとレアが無事に戻ってきた事で、各国の戦争準備状態を解除するように伝えた。レイズ魔国では国民達が大いに喜び、ユファは帰ってきたシスに付きっきりで面倒を看ていた。
だが、まだ組織の総帥であるミラや他の幹部連中が残っているために、完全には安心はできないとし、ラルグ魔国に戻ったソフィはすぐに配下達を招集して、今後の方針を話す為の会議を開いた。
――この開かれた会議での議題は、今後の組織の者達についての対応が主となった。
組織の最高幹部であった『ハワード』については、この『リラリオ』の世界に単独で襲撃を掛けてきた事で、大魔王『ソフィ』の手で葬られて魂ごと消滅させられて、二度と現れる事はなくなったであろうが、まだまだ組織の軍勢は多く残されており、総帥であるミラや、司令官であるルビリスは尚も健在であるために今後もこの世界へ彼らが攻めてくる事は否定が出来ないとした。
また、ソフィは『概念跳躍』の習得には至っておらず、他者を同時に送る事の出来る『シス』もまた常時『潜在する力』を使えるわけではないために、いま直ぐに『アレルバレル』の世界へ向かうという事は出来ない。
しかしソフィはこのままされるがままでいる事を良しとはせず、いずれは『組織』が蔓延っている筈の組織の者達を討伐するために、いずれは『アレルバレル』の世界へ乗り込むという案を提示した。
それが何時になるかまでは明言出来ないが、それまでの間は『ラルグ』魔国が中心となり、ヴェルマー大陸の安寧を守るという結論に至った。主に現在組織の者達に狙われているであろう『シス』『ユファ』『レア』。二度とこの者達を組織に連れ去られる事がないようにと、この三名の護衛を徹底する事が決められた。
『ラルグ魔国』の同盟国である『レイズ魔国』との同盟関係を更なる強固にするという名目で『ラルグ』魔国から多くのソフィの配下達が『レイズ』魔国の周辺を警備する事となった。
『レイズ』魔国上空の守りに、龍族キーリを中心とした龍族が三交代制で見張り、シティアスやレイズ城周辺の警備には、ベアやロード達を中心とした軍隊を派遣。
レイズ城内に居るユファやシスを守るために、レイズ城には九大魔王である『ブラスト』と『イリーガル』が配備される事となった。
そして九大魔王『リーシャ』の強い要望によって『ラルグ』魔国の『レア』の護衛役には『リーシャ』が任命された。
だが、護衛をつけられたレアは『ラルグ』魔国に居る間は、今後狙われる確率は少ないだろう。何故なら『ラルグ』魔国の王にして『最強の大魔王』である『ソフィ』と、九大魔王筆頭の参謀『ディアトロス』が常に『ラルグ』魔国に居るためである。
ヴェルマー大陸の表面上はいつも通りの様子だが、裏ではこうした組織に対する戦争の準備が行われているのであった。
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そして会議が終わった後、ソフィは当初から決めていた通り、ラルグ魔国の国民達にレアの紹介を始める事にした。ラルグ魔国全域に伝わるように、レアはとある『レパート』の世界の『魔法』を使い始めるのだった。
次の瞬間。過去の『リラリオ』で『魔人族』が『ヴェルマー』大陸に戦争を仕掛けてきた時のように、空に映像が映し出された。
すでに組織との一件でレアの事は公に知られる事となっていたが、このレアという人物が『リラリオ』の歴史で一番最初の魔王となった魔族と知らされて、当然の如く国中が騒然となるのであった。
数千年経った今でも魔族という種族を導いた『レア』は、今の『リラリオ』の世界に生きる魔族達にとっては信仰するような存在であり、何よりも『ヴェルマー』に生きる魔族達が認めるソフィの配下という事も手助けして、子供のような愛くるしい姿もまた人気の秘訣となった。
こうしてレアがラルグ魔国中に知れ渡り、今後はレア様と呼ばわれて親しまれていく事となるのであった。
――そしてレアの紹介が行われた次の日。
ソフィは自分の屋敷にレルバノン達を集めて、今度はディアトロス達の紹介を始めるのだった。
「うむ。よく集まってくれたな」
ソフィの屋敷に集められた『ラルグ』魔国の主だった者達は、この場に居る『九大魔王』達の溢れ出る『魔力』に目を奪われていた。
先日の紹介にあった『レア』でさえ、現在に生きるリラリオの世界の魔族達にとっては、恐ろしい程の力を持った『魔王』だと認識されていたが、今この場に居る『リーシャ』『イリーガル』『ブラスト』『ディアトロス』といった者達は力を抑えている今でさえ、圧倒的な力をレルバノン達には感じられていた。
「この者達は我が元に居た世界の配下達でな。今後は我の側近として『ラルグ』魔国に籍を置く事になるだろう。皆宜しく頼むぞ」
ソフィの言葉の後にディアトロス達は、各々が自己紹介を始めるのだった。
「いやはや驚きましたが、事情は先日の会議で聞いています。私がこの国の『フィクス』と、そうですね。役職といいますか『フィクス』とは国の宰相や大臣のような立場に居る者を指してまして、私が現在ソフィ様に任命されて『ラルグ』魔国の『フィクス』を務めさせて頂いている『レルバノン』と申します。どうぞ宜しくお願いします」
ディアトロス達の自己紹介の後、今度はレルバノン達ラルグの者達が紹介を始めていくのだった。そして全員の顔合わせが済んだ頃。ディアトロスはレルバノンに話し掛ける。
「お主がこの世界でソフィ様の片腕なのじゃな。ワシも『アレルバレル』では、ソフィの片腕を務めていた者なのだ。お主とは良い関係を築きたいと思っている。どうか宜しく頼みたい」
そう言って手を前に出すディアトロスに、レルバノンもすぐに頷き手を出す。過去に握手という挨拶がある事を知った『レルバノン』は、直ぐにその手を握るのだった。
そして自己紹介がすんだ後、屋敷では現在と過去の『ソフィ』の配下達の間で宴が行われる事となった。
「ディアトロス殿、聞いてくれ!」
宴が始まってからそれなりに時間が経った頃。ブラストはおもむろにディアトロスに話しかけるのだった。
「なんじゃ、どうしたんじゃ一体?」
『アレルバレル』の世界では見る事のなかった程に、饒舌に話し始めるブラストに、ディアトロスは驚きつつも返事をする。
甲斐甲斐しく料理をしたりお酒を出したりして、部屋を往復しているリーネを見ながら『ブラスト』は口を開いた。
「あちらに居るリーネさんが、実はソフィ様の妃なのです!」
「は?」
その言葉にディアトロスだけではなく、イリーガルやリーシャも一斉に『ブラスト』の方を見るのだった。
「な、何でこのタイミングなの!?」
「何という事だ!」
イリーガル達はすぐに立ち上がり、料理を並べたりして空いた皿を運んでいるリーネの元に向かう。
「あ、貴方がソフィ様のお妃様とは知りませんでした! こ、こんな……、働かしてしまって申し訳ありません!」
「申し訳ございませんでした! あたしが後はしますのでどうか『リーネ』様はソフィ様のお隣に!」
イリーガルとリーシャが、突然そんな事を言い始めたので、リーネはきょとんとした表情を浮かべるのだった。
「えっと、お妃って、べ、別に私は、まだソフィの、つ、妻じゃないんだけど!?」
顔を赤くしながら突然の言葉にしどろもどろになるリーネだが、その様子にまんざら『ブラスト』のウソではないのだと悟ったリーシャ達は温かい目でリーネを見るのだった。
「カカカ! まさかお前が別世界で女に手を出しておったとはな。全く驚かせよるわい!」
酒を呷りながらソフィの隣に座って、からかうように笑うディアトロス。
「うむ……。リーネには世話になっておるしな。いずれは我の傍について『アレルバレル』の世界について来て欲しいと考えておる」
――突然のソフィの言葉にその場にいる者達が再び驚きの顔を浮かべた。
からかうつもりで喋った『ディアトロス』までもが、酒の入ったグラスを持ったまま固まるのだった。
「え、ええ!?」
突然のソフィのプロポーズのような言葉を受けて、素っ頓狂な声をあげるリーネであった。
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