表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
大魔王シス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

476/2223

465.魔族を封じる事に特化した魔法

※加筆修正を行いました。

「レアさん!?」


 精霊女王『ミューテリア』が叫びながら手を伸ばすが届かず、レアはリーシャの元へと地上から向かっていく。


「ん? あれは……!」


 リーシャからの返答を待っていたルビリスは、地上から迫ってくる気配に視線を向ける。


(なるほど。私達の話を聞いていて生贄になろうという考えですか。いやはやたいした覚悟ですねぇ)


 向かってくるのが『対象』の人物だという事を確認したルビリスは、レアの覚悟を察して笑みを漏らす。


 しかしそこで、先にこちらに向かってきたレアを追い越す影が見えたかと思うと、一瞬でルビリス達の居る上空へと到達する魔族が姿を露にするのだった。


「誰だ?」


「!?」


「貴方は確か『リラリオ』の魔族達の大陸にある国の女王でしたか……?」


「?」


 その場にいる組織側の最高幹部の者達が突如現れた『シス』を見て、訝し気に睨みつけるのだった。


「……」


 シスは無言のままだが、彼女を纏うオーラが『金色』になるのを見たルビリスは、直ぐに真剣な表情に変えて『リベイル』や『ユーミル』と同じ『神聖魔法』を用いて捕縛しようと魔法を放つのだった。


 ――神聖魔法、『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』。


 魔族を『対象』にすると効力が普段より遥かに増幅する『神聖魔法』。

 更に『組織』の中でも大賢者ミラに次ぐ程の『魔力』を誇るルビリスという大魔王の放つ『魔法』は、そのままシスを捕縛するとその場に居る者達は信じて疑わなかった。


 如何に金色を纏う実力者であっても魔族に特化するこの魔法は、あの大魔王『ディアトロス』でさえも封じる程なのである。


『邪』を封じる一筋の光が降り注ぎ、そのまま魔族である『シス』の四肢と魔力に影響を及ぼす。


 シスの手足が光りに包まれた後に『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』の効力によって、シスの魔力が周りにも可視出来るようになり、具現化されたシスの『魔力』を更に外側から光が包みこむのだった。


「何をしようとこの場に来たかは知りませんが、()()()()()()()が踏み入れられる領域ではありませんよ?」


 ルビリスは勝ち誇った笑みを浮かべて、シスに実力違いを教え施すようにそう告げるのだった。


 手や足に魔力までもを『神聖魔法』によって封じ込まれた筈のシスだったが、一切の焦りを見せずに動けない身体の代わりに目だけを動かして視線を『ディアトロス』に向け始める。


 そして『ディアトロス』が『シス』の方を見た瞬間に、彼女の唇が高速で動き始める。


「!?」


 ディアトロスは一瞬であったが、シスの唇の動きを読唇術で読み解いた。


 ――『今から貴方の捕縛を解く、魔法の準備をしておきなさい』。


 それはまさに、一瞬の声のないシスの言葉だった――。


 数分前に会ったばかりで『シス』がどういう存在かすら知り得ない『ディアトロス』だったが、今この時において何故かディアトロスは、この魔族に『ソフィ』と見紛う程の何かを感じて、全てを信用させられるのだった。


 ディアトロスは背後に居るリベイルや、この場を支配するルビリスの存在を忘れたかの如くディアトロスは視線をシスに返して頷いてみせた。


 その頷きを確認したシスはまるで『ディアトロス』に()()()()()()()()を見せた。


 それは『良く出来ました』と正解を示した子を褒めて可愛がるようであった。


 ――やがてシスは自身にかけられた『()()()()』のその効力を試すかの如く『魔力』を高めて魔力回路に注ぎこもうとする。


 当然魔族に対して効力を増大させる『ルビリス』の『神聖魔法』が効果を発揮して『シス』が行おうとした行動を妨げようとしたが、シスは『ルビリス』の『神聖魔法』の効力を実感しながら、まるで『この程度の練度』かと言わんばかりに笑い始めるのだった。


 そして何かを呟いた瞬間に自身を封じていた『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』をあっさりと解除したかと思えば、次は『ディアトロス』にも同様に『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』を呟いただけで解除してみせるのであった。


 『ディアトロス』からはもう視線を外した『シス』は、今度は『ルビリス』の方を見る。


「なっ!?」


 目の前で手や足に『魔力』が光で包まれたまま、自由に動くシスに驚き目を丸くするルビリスだったが、それに留まらず、突如ディアトロスに掛けられた『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』が解かれた事で一瞬迷いが生じた。


 ルビリスは咄嗟の判断で無意識に、ディアトロスを捕縛しようとしてしまったのだ。


 しかしここで彼が本来取らなければ行けなかった行動は、()()()()()()()()()()()()()()()()()、自分を含めた組織の幹部達をこの場から()()()()()()()()()()()()が唯一の正解だったのである。


 ルビリスは間違いなく、()()()()()()であり、その道に関しては天才であり一流である。


 そして一流であるからこそ、この一瞬の間に取るべき選択肢が、頭に多く思い浮かんで取捨選択を選び損ねてしまった。


 するべき事を明確に決めている天才『シス』を相手に、一流と言えど迷いが生じたルビリスでは相手にならない。


 捕縛が解けたディアトロスは、視線を前に向けたまま背後に居るリベイルの鳩尾を肘で打ち抜く。


「ぐはっ……!?」


 まさか動く事が出来ない筈の『ディアトロス』から攻撃を受けたことで、何が起きたのかという理解が追い付かないことに加えて、突然走った激痛のせいで『リベイル』はつい『ディアトロス』から意識を外して自分の身体に視線を動かしてしまう。


 ――その瞬間『ディアトロス』は『高速転移』で『リベイル』の拘束から外れて、その場から脱出するのだった。


「し、しまったっ!?」


『リベイル』と『ルビリス』の射程圏内から離れた事で、完全にディアトロスは自由になる。


「よくもやってくれたな若造共! 倍にして返してくれるっ!」


 慌ててルビリスとそしてリベイルが、ディアトロスを追尾しようと動き出す。


 ――しかし……。


「!?」


「な、何故だ! 何故動けない!?」


 ――何かに引っ張られるような感覚を覚えたルビリスとリベイル。


 そしてどんどんその引っ張られる感覚から、重たい瓦礫や岩等と言った重たいモノに挟まれて動けなくなる感覚を覚えていき、やがて最後には自分の手足がまるで石になったかのように完全に動かなくなった。


 首から上だけが動く二人は、動かなくなった理由を探るように辺りを見回して、そしてこちらを見て笑う『シス』の顔が目に入るのであった。


「これはまさか()()()()()ですか?」


 ルビリスは一瞬で冷静さを取り戻して『シス』を懐疑的な目で睨む。

 彼の視線は『シス』の金色に輝いている目を見て、先程封じた手や足、そして『魔力』がもう完全に自由になっていると理解するのだった。


 ルビリスが先程放った『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』は、一度掛けられてしまえば『()()』では単独で解除する事は出来ない筈である。


 何故ならこの魔法はかつての大賢者『エルシス』が相当の時間をかけて、大魔王『ソフィ』の動きを止める事にのみ心血を注ぎ編み出された『神聖魔法』の中でも相当な難度の『魔法』なのである。


 ソフィでさえ数秒間もの動きを止められた『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』は、今を生きる中途半端な『魔力』しか有していない魔族達では、決して解除することなど出来る筈がない。


 現に先程『九大魔王』筆頭であった『ディアトロス』や、今も捕縛されている『リーシャ』を見ていてもそれは明白である。


 彼ら『九大魔王』と数えられる大魔王達でも動けていないのである。


 それをただの一介の魔族が『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』を解いてみせて、自由に動いている。そしてそれだけではなく今度は、賢者としての修行を積んでいる訳でもない『シス』が『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』をその『ルビリス』と離れた場所に居る『リベイル』に同時に使ってみせたのである。


 そんな事が如何に優れた魔力を持つ『()()()』であっても出来る筈が無かった。


 そもそもこれは『アレルバレル』の世界の『(ことわり)』を理解した上で、この魔法に対しての十分な『知識』。それこそ『(ことわり)』だけではなく『発動羅列』なども知っていなければ絶対に使えない筈であり、見様見真似で行える芸当ではない。


 ――だが、ルビリスの視界に映る『シス』という『金色の体現者』は何故か『神聖魔法』というモノを()()()使()()()()()()()()()()()()()()


「くっ……!!」


 そこでルビリスは視線をシスの更に上空に居るディアトロスへと向ける。無視が出来ない程に膨大な魔力を感知したためである。


「貴様らが二度と逆らおうと思えぬ程の絶望をこのワシがくれてやるわぁっ!!」


 キィイインという音と共に、ディアトロスの目が『金色』へと変わっていき、膨大な魔力が注ぎ込まれた魔法が撃ち出されようとしていた。


「流石にそれはさせない」


 いつの間にか『リーシャ』を捕縛をして動かないように監視していた『組織』の人間の大賢者『ユーミル』が、いつの間にか『ディアトロス』の背後に回っていた。


 そして『無詠唱』でユーミルは『神域魔法』をディアトロスではなく、そのディアトロスの魔力回路から放出させられた魔法の『スタック』のタイミングを目掛けて放たれる。


 つまりユーミルの狙いは『ディアトロス』本人ではなく『ディアトロス』から放たれるであろう『()()』であった。


 ――それはコンマ数秒違い。


 魔力を充填した魔力回路から放出された僅かの一瞬。その放出した魔力が『魔法』の発動へと移るタイミングで『ユーミル』の魔法が先に発動されてしまうのだった。


 ――神域『時』魔法、『次元防壁ディメンション・アンミナ』。

 ――神域魔法、『崩壊ス、摺リ砕ク虚構ノ世界』。


 ほぼ同時と言えるタイミングで『ディアトロス』の神域魔法と『ユーミル』の『時魔法(タイム・マジック)』が発動されるのだった。


 一瞬の魔力の余波同士がぶつかり合い。周囲の雲々が膨大な音と共に吹き飛んだ。


 ――そして()()()()()()()()()


 完全に隙を突いて『魔力』を注ぎ込んで放った『ディアトロス』の神域魔法は、大賢者『ユーミル』によって放たれた『防衛魔法』のせいで、完全に防がれたのであった。


 だが、ディアトロスの攻撃は防げたようだが『九大魔王』は一体では無い――。


「あたしから目を離して、好き勝手してんじゃねぇよぉ!」


 そしてディアトロスの一撃を防ぐために『リーシャ』への『聖動捕縛セイント・キャプティビティ』が外された事により自由に動けるようになった『リーシャ』が、ブレて見える程の速度でユーミルに肉薄して恐ろしく重い一撃を繰り出してみせるのであった。


「うっ……!」


 リーシャの一撃を咄嗟に左手で『障壁』を用いて防御したが、あっさりとその『障壁』を割って多大なダメージを受けながら、大賢者ユーミルは『精霊の大陸』から、別の『魔界』にある大陸まで吹き飛ばされて岩山に激突させられるのだった。


 ……

 ……

 ……

『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ