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39.反則負け

※加筆修正を行いました。

 リングの上は『ルビア』の攻撃の所為で凄惨な状態ではあるが、一度試合が始まってしまえば大会ルール上は第一試合が全て終わるまで修復作業が行われる事はない。


 そしてそのリングの上に今ソフィと『ルビア』が相対した。


 しかし次の試合が始まる寸前に審判が両手を挙げ始めて制止をかけるのだった。


「お待ちください! 大会運営本部からの通達により、この試合は一時中断とさせていただきます」


 試合開始のコールを待っていたソフィだが、そのソフィの目の前で突如審判がそう告げるのだった。


「何だと……?」


 審判は何やら耳につけているインカムで運営と話を交わしているようだ。


 どうやら緊急で入っている情報のようで、審判も慌てている様子が見て取れる。


 そして何度かの頷きの後に審判は会場に伝わるようにマイクで説明を始めた。


「ただいま行われていた『ニーア』選手対『ルビア』選手の試合ですが、反則を犯したのは意識を失っていた『ニーア』選手ではなく『ソフィ』選手であった為に大会ルールに基づいて、対戦相手である『ルビア』選手に『ニーア』選手と『ソフィ』選手の()()()()()()()()()()()()()()を与える事として委ねられる事になります」


 『ニーア』があのまま戦っていれば『ルビア』の勝利は確実であった為に『ソフィ』の介入によるニーアの反則負けでは、割に合わないという大会運営の判断であった。


 確かに大会ルールとしてこういう場合は、反則を行った選手を反則負けにするというルールがあるが故に、今回の運営の処置は間違いではない。


 だが、今回のソフィの反則がなければ、逆に『ルビア』が『ニーア』を殺して反則負けとなっていたのだとという見方もあるために、一方的にソフィの反則負けにするのも公平性に欠ける。


 しかしどうやら運営本部が強引にこういう決定を下した理由には、()()()()()()()()()()()()()()()()()が裏で働いているようである。


 ……

 ……

 ……


(ざまぁみろ……! これで『グラン』のギルドの反則負けは確実。そして表立ってはルール上問題はない)


 にやにやと笑みを浮かべているヘルサスの横で、ディラックもまたヘルサス伯爵が不正を働いたという証拠がない為に糾弾する事も出来ない。


(こ、これではソフィ君が反則負けとなり、すでに戦うことが出来ないニーア君の連闘で勝負が決まる! それでは我々の負けが決まってしまう。な、何か、何かないのか……!)


 頭を抱えて必死に考えるディラックではあったが、解決策は浮かばなかった。


 そしてリング上では、ルビア選手が笑みを浮かべて当然の答えを口にした。


「ニーア選手があのまま放っておいても気絶していたのは明白だ。勝手にソフィ選手が試合の邪魔をして、手を出してきた事によって反則となったのだから、俺としては()()()()()()()()()()と宣言するよ」


 ニヤニヤとルビアは笑みを浮かべて、ソフィの反則負けを選んだのだった。


 これにより意識がないニーアとルビアの再戦が決まり、ルビアがニーアに勝利した時点でニビシアの勝ち上がりが決定となる。


「おい! ふざけるなよ、そんなの有りなのかよ!」


「運営本部は何を考えているんだ? 誰もこんな結果を納得しねぇだろう!」


 試合を見ていたあらゆる場所の観客席から、文句を言う声があがりはじめるのだった。


「そ、そんな事が許されるの? だってソフィが助けなかったら、ニーアが死んじゃってたんだよ?」


 観客席もブーイングで盛り上がる中、リーネもこの結果に納得出来なかった。


 しかし、当然納得出来ないのは彼女達だけではなかった。


「ふざけるな! ソフィを反則負けにしてみやがれ。奴らを……っ! あのイカレた魔法使い共を()()()()()()()()からな……」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、今回の運営本部の勝手すぎるといえる決定に対して、納得が出来るわけがなかった。


 結局ニーアは意識を失ったまま試合を行えなかったため、ギルド対抗戦第一試合は『ニビシア』の冒険者ギルドの勝利で幕を閉じてしまうのであった。


 ソフィの所属するギルド『グラン』は、決勝トーナメント一回戦で敗北が決定した。


 ――しかしこの場にいる誰もが気付いて居ない。


 一番納得のいっていない者は『()()()』だ()()()()()()


「うっ……、こ、ここは?」


 『サシス』の宿の中でルビアの魔法で意識を失っていたニーアが、ようやく目を覚ました。


 彼の周りには看病していたリーネやソフィ達が、ようやく目を覚ましたニーアに笑顔を向ける。


「よかった、目を覚ましたのね」


「ニーアよ、無事で良かったぞ」


「良かった……! で、でも無理はなさらずに、そのまま横になっていて下さい」


 みんな笑顔でニーアの目覚めを喜び顔を綻ばせる。


 しかしどこかその笑顔の中に悲壮感なるものが浮かんでいて、直ぐにその事にニーアは気づいた。


 そこで試合がどうなったのかが頭を過り、気に掛かるようであった。


「た、確か僕は決勝で……? 『ニビシア』の魔法使いに敗れて、そ、その後はどうなったのですか!?」


 そのニーアの言葉に、笑顔を向けていたリーネ達の顔に陰りが見え始める。


「その事は、私から説明しよう」


 タイミングを見計らったかのように部屋の中へ入ってきたディラックが、暗い顔のまま口を開いた。


 そしてディラックの話を聞いていたニーアが、みるみるうちに顔を青くしていく。


「そ、そんな……! 僕じゃなくてソフィ君が反則負け!? 負けたのは僕の実力不足だっただけでしょう? な、何で!!」


「もう終わったのだニーアよ……、その話はよそうではないか。今更その話をしたところで結果が覆るわけではないのだからな」


「そ、ソフィ君……」


 これ以上話をしてもニーアが最終的に自分の力不足を嘆いて、落ち込む事を察したソフィは強引に話を終わらせる。


「さて、我は少し外に出てくる。ニーアよ自分を責めてはいかぬぞ?」


 リーネはソフィについていこうかと思ったが、ソフィが一人にして欲しそうな表情を浮かべていたため、声を掛ける事もついていく事も出来なかった。


 そして部屋の扉を閉めてソフィが出て行った後、ニーアは後を追いかけようとしたのだろうか、泣きそうな顔を浮かべながらソフィの後を追いかけようとしたが、隣に居たリーネが同じく泣きそうな表情を浮かべながらニーアの服の裾を掴んで首を横に振った。


「……くっ! ぼ、僕がつまらない意地を張ったせいで! ソフィ君に言われた通りに直ぐに交代を行っていれば、こ、こんな事にはならなかったのに……!!」


 ガクリとその場で膝から崩れ落ちたニーアは、両目から零れ落ちる涙を拭おうともせずに、この場に居ないソフィに何度も謝罪を繰り返すのであった。

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