409.金色の体現者レアVSエイネ
※加筆修正を行いました。
集落の外に行くといつものようにリーシャとエイネが戦っていた。レアがこの集落に来る前までは、いつも行われていた光景だった。
現在はレアがエイネとの修行を終えて自己研鑽の領域へと入っているために、これからは再びリーシャの修行が続いていくだろう。
そして今日レアはある決意を持ってこの場に来たのであった。
――それは今日エイネと戦う事を最後に『レパート』の世界へ帰ろうと決めてきたのである。
この世界に辿り着いてから相当の日数が経ち、前回のソフィの『魔王軍』とやらの一件で、本当に『フルーフ』はもう、この世界には居ないのだと理解して諦めるに至ったレアは、自分の世界に戻り、何か分かるまでフルーフの『魔王軍』をこの手で守り、主の帰りを大人しく待つことにしたのであった。
だがこのまま帰るのではなく、ここに来てから圧倒的な差を見せつけられたエイネにここでの成長を見せつけて、顔色を変えるような一撃を放つことで、恩返しをしてやるつもりなのであった。
森へ顔を見せたレアに気付いたリーシャは声を掛けようとするが、レアの纏う雰囲気に慌てて押し黙った。そしてそんなリーシャの視線の先を追ったエイネは、自分をまっすぐに見つめているレアに、ある種の覚悟を感じた。
「リーシャ。悪いけど今日の修行はここまでね?」
「う、うん。今回は私にも直ぐに理由が分かった……」
いつもであれば愚痴の一つも漏らすところではあるが、二人の本気を感じ取ったリーシャは大人しく言葉に頷くのだった。
「おはようございます。レアさんもう体調はよろしいのですか?」
「ええ、昨日は迷惑をかけたわね? もう大丈夫よ」
レアはエイネの前まで歩いていくと、決意の旨を伝える為にしっかりとエイネの目をみる。
「エイネ。私は今日結果がどうあれ『元の世界』へ戻ろうと思うのねぇ?」
大陸では無く、世界と告げるレアに、エイネはレアの決意の深さを知った。
「だから最後に私と戦って欲しい!」
「分かりました。貴方は本当に強くなられましたね。最後に私に忘れられないくらいの貴方の本気を見せて下さい」
エイネの言葉にレアは笑った。そして声には出さないが口元が静かに動いた。
――ありがとう。
声の乗らないその五文字をしっかりとエイネは受け止める。
エイネは目を閉じると森の広域に結界を張る。今までとは違って『エイネ』の出せる全力の結界である。そしてリーシャに離れる様に手で合図すると、それを見たリーシャは頷いてそこから離れた。
レアは結界を張ったエイネには気を配らず、自分の戦闘の準備に全神経を注ぐ。いつもの二色の併用を使おうとしたが、ここに来る前にビル爺の言っていた魔瞳『紅い目』のことを思い出して、言われた通りに魔力の余波を内包させずに全てをありのままに開放するのだった。
『青』3.5 『紅』1.2。そして目は『金色』ではなく炎のように『紅い目』になる。そしてレアは目を閉じると、ゆっくりと息を吐いた。じんわりとレアの周りをオーラが具現化されてオーラに色が彩られていく。
『金色のオーラ』の体現。そして宿主を認めたかの如くそのオーラによって魔力の余波が暴れ狂うこともなく、オーラ自身がまるで操作しているかのように、全ての金色の影響で膨れ上がった『魔力』が全てその場に静かに収まり始めた後、再びレアの体内に戻るように可視化出来る程の『魔力』は消失していった。
【種族:魔族 名前:レア(大魔王) 年齢:9歳
魔力値:4500万 戦力値:3億1500万 所属:レパート】。
↓
【種族:魔族 名前:レア(真なる大魔王) 状態『金色』
魔力値:4億5000万 戦力値:31億5000万 所属:レパート】。
前回のように『魔力』が一切外に漏れ出ることもなく『金色』のオーラに目覚めたレアは全ての魔力を集約してみせていた。
――それは、もう完全に自分の魔力を支配している証拠であった。
「レアさん……。昨日あなたが倒れたのは、これ程の恐ろしい魔力を慣れないその身体で受け続けたからだったのですね」
普段のレア相手であれば涼しい表情でレアの魔力を受け流していたエイネだったが今は違う。すでに『青』3.5程を展開しているというのに、顔を歪めてレアの膨大な魔力を前に脂汗を流していた。
「ええ。ここに来る前にビル爺にコツを教わったおかげで、どうやら今は何ともないわぁ」
レアの言葉にエイネは、ビル爺が何故?という表情を浮かべたが、今は戦闘に集中することにするのだった。
「レアさん。私はですね? 貴方の潜在能力に疑いは持ってはいませんでしたけど、まさかこの短期間でここまで強くなられるとは、流石に予想だにしませんでしたよ」
「そう? 貴方にそう言ってもらえて嬉しいわよぉエイネ。貴方を本気にさせる事が、今の私の目標だからねぇ」
「光栄です。しかしレアさん? 重要なのはここからだという事を分かっていますよね?」
レアはエイネの言葉に笑って頷いてみせた。
「「『戦力値や魔力値の高さなんて所詮指標のようなモノ』。重要なのはその戦力を活かせる戦い方!」」
――レアとエイネの言葉が重なった。
そして次の瞬間。エイネの目が『金色』に光り輝いた。レアとの模擬戦では『青』を2以下までしか使った事はないエイネが、今回は『青』4.0まで上げている。
それはつまり今の『金色』に包まれているレアを見て、彼女自身が普段通りでは勝てないと認めたからに他ならなかった。
――そして遂に『レア』と『エイネ』の最後の戦いが始まるのだった。
『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!




