399.ミラの行いに魅了されるバルド長老
※加筆修正を行いました。
ソフィの『魔王軍』は全ての敵側残存勢力の拠点を破壊し終えて表面上の作戦は終了を迎えた。『組織』は壊滅。ヌーはこの世界から『フルーフ』を連れ去り消えたとされた。
ヌーや『組織』が完全にこの世界から消えたことにより事実上『アレルバレル』の『魔界』は、完全にソフィが掌握する事となった。
レアもまた施設から帰ってきたあとに『魔王軍』側を調べまわったが、ヌーを隠匿している気配は全くないようで、どうやら本当にこの世界には『フルーフ』は居ないのだと判断するのだった。
「どこに行ってしまったの? フルーフ様……!」
レアはぽつりと集落の外にある森で独り言つ。
結局彼女がここに来た事で得られたモノは、フルーフがこの世界に居た事を示す『概念跳躍』の詳細が書かれたメモと、この『アレルバレル』の魔族が異常な程強いと知った事。そしてエイネ達に鍛えられて強くなった事くらいだった。
「レア! そろそろご飯だよ!」
あとはリーシャと仲が良くなった事だろうか――。
リーシャの言葉に頷いたレアは、長老の家へと再び足を踏み入れる。あの施設から帰ってきてから、レアはエイネとリーシャとは修行をしなくなった。
それは研鑽をやめた訳ではなく、相手を通して戦う修行は現在では、やり切ったと判断した為である。後は習った事を自分の研鑽に取り入れて、地道に練度を高めたりする段階に入ったのである。
レアは長老の家でいつものように夕飯を食べさせてもらうのだった。
――ここ最近で変わった事はまだあった。
この集落の長老『バルド』が飯時に酒を呑まなくなった事と、皆が寝静まった頃に『バルド』が一人でどこかへ行っているようだった。
どこに行っているかは知らないが、フルーフに関係することではないと判断したレアは、バルドがどこへ行こうと全く興味が無かった。
レアはそろそろ元の世界へ戻ろうかとも考え始めていたが、その前にエイネに本気を出させて自分とどれ程の差があるのかを知りたいと考えていた。
(エイネをある程度本気にさせられたら『レパート』の世界へ帰ろうかしらぁ)
すでにこの世界に来た時より遥かに強くなったレアは『青』の練度を上げる研鑽を続けるのだった。
……
……
……
――そして皆が寝静まった夜、長老バルドはゆっくりと集落を出る。
目指す場所は『魔王軍』によって、壊滅させられた南方の大陸にある施設後である。
バルドは『高速転移』を使って一気に施設後まで跳躍した後、いつものように周囲に『結界』を張り、大きな魔力を周囲に漏らさないようにする。
そして細心の注意を払いながら『二色の併用』を用いて大きく魔力を上昇させたかと思うと、とある『時魔法』を発動して『除外』させていた空間を再び復元させるのだった。
迸る魔力は結界内で暴れまわるが、その全てをバルドは魔瞳である『金色の目』で完全にコントロールして『結界』の外にはかけらも魔力を漏らさないようにしてみせる。
そして『除外』されていた空間は完全に現世に表した。
――そこには培養液に浸けられたままのカプセル装置が出現した。
当然あの施設にあった『カプセル装置』をそのまま持ってきたために、中には首から上だけの『人間』のようなモノが入っている。
他のカプセル装置は全て『魔王軍』によって施設ごと破壊されてしまったため、残存しているカプセル装置はこの世界でここにあるのが全てである。
「やはりあの時『空間除外』させて正解だった」
バルドは口角を吊り上げて誰も居ない施設後の空間で『カプセル装置』の中身を食い入るように見る。
中身の『生物』はそんな『バルド』を虚ろな目で見返したかと思うと、自我があるのかバルドに笑い返すのであった。
「す、素晴らしい……!」
まるでバルドは何者かに操られたかの如く、この培養液の中身に執着する。しかし別に何かをするわけでもなく、バルドは唯々観察を行い続けるだけであった。この光景を見る者が居れば、この行為を毎晩繰り返すバルドは異常だと思うだろう。
――だが、もしこのバルドの行為を咎められたりでもすれば、今の彼は狂ったようにその妨害者を消し去るだろう。
彼は懸命に『中身』を眺めることに一種の幸福を噛みしめているのであった。
……
……
……
※第一次魔界全土戦争の終結後。ソフィがアレルバレルの世界の統治に少しずつ着手する事となります(魔界全土の統治はまだこの段階ではしてはいません)。
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