341.大魔王の使い
※加筆修正を行いました。
「な……なんだ、ディガンダはどうなった!? す、姿が完全に消えた……だと……!」
精霊達は『魔力の権化』がある為、一定期間の間自然と同化して魔力が戻れば現世に戻ることが出来る。そして精霊達同士であれば、同化状態でもその存在を確認できるのだが、今はディガンダの魔力を確認できないでいた。
「安心していいわよぉ? 貴方達の仲間の精霊ちゃんは別に死んだ訳ではないわぁ」
そしてゆっくりと二色の光に包まれた『魔王』はバーンに向き直る。
「私が戻さなければ、永久に姿は見せられないけどねぇ」
そう言うと迸る程の魔力を精霊達に見せつけながら、ジワリジワリと『バーン』に近づいて行くのだった。
…………
「そ、そんな……! ディガンダの魔力が感じられない!」
その頃『トネール』の魔法の準備を手伝っていた『リューカ』は、同胞の魔力が無くなったことに、驚きの声をあげていた。
「精霊は死ぬ事はない筈、まさか封印の類か?」
トネールはそう口にしながらも自らの最大魔法を放つ為に、魔力を込め続けている。
…………
「どうやら我らの『理』から外れた『魔』は、予想以上のようだ」
同胞達の戦闘を見守っていた精霊王『ヴィヌ』は見たこともない魔法に驚いていたが、やがて自らも戦闘に参加するために『バーン』の元へと転移する。
「ようやくお爺ちゃんも戦う気になったようねぇ? もう逃げ出しちゃったのかと思ったわよぉ?」
煽るように憎まれ口を叩くレアに精霊王のヴィヌは眉を寄せるのだった。
「『精霊の権化』に頼りきっていたワシも悪いが、お主はどうやら予想以上に危険な存在のようだな。お主を倒して『ディガンダ』を取り戻させてもらうぞ」
そう告げながら精霊王ヴィヌは、魔力を開放し戦闘態勢を取り始めるのだった。
「ふーむ、流石に精霊王というだけあって、そこそこの魔力はあるようだけど、それでも私達の世界じゃあ威張れるほどでもないわねぇ?」
この世界では圧倒的な程の魔力を誇っており『魔』だけであれば『龍族』にさえ一目置かれる『精霊族』だが、その精霊王ヴィヌの魔力を感じながらもレアは大した事は無いと言い張るのであった。
「では、ワシにも見せてもらおうかの? 魔族の王よ!」
そう言うとヴィヌは無詠唱でレアに向けて魔法を放つ。
――超越魔法、『万物の爆発』。
キィイインという音と共に、レアの周囲一帯に魔法陣が浮かび上がった。
「我らの『理』から生み出されし『魔』を侮るではないぞ!」
魔法陣が明滅した後に、恐ろしい爆音とともに大爆発を起こす。
レアはその爆発から逃れる為、空高く浮かび上がって脱出する。
「逃げ場はないわぁ!」
――超越魔法、『凜潔暴風雨』。
すでに予測済みであった『ヴィヌ』は『レア』の逃げた場所を目掛けて魔法を発動させていた。流石に避けた先を狙われると思っていなかったレアは、防御を取る事を余儀なくされる。
「へぇ? 流石にそれは予想外だったわよぉ?」
魔力障壁を瞬時に展開させて、ダメージは極少にすることには成功しだが、攻撃に転じようとしていた手を止められたことで素直に感心をするレアであった。
「……これでもまだ落ちぬか」
しかし『ヴィヌ』にとってはこれである程度のダメージを負わせられると踏んでいた為に、予想以上に『耐魔』を持つ魔族の王に、内心では焦りを覚えさせられていた。
そこに背後にいた『火』の精霊長老『バーン』が、意識の外にいるレアに向けて魔法を放った。
――最上位魔法、『迸る炎渦爆』。
轟轟と燃える炎がレアの背後から襲い掛かる。
そしてレアが魔力を感知して振り返ると同時に遠く離れた場所からさらに大きな魔力を感知する。
「待たせたな……。これ我ら精霊達の魔法だ!!」
――超越魔法、『大津波』。
水の精霊長老と風の精霊長老の魔法が合わさり、恐ろしい速度を持った津波がレアに向かって襲い掛かってくる。
レアは『バーン』の魔法などもう無視をして、より大きな魔法である『トネール』達の方に意識を向ける。
「先程のお爺ちゃんの魔力より上ねぇ? でもそんな魔法は飛べる私には通用しないわよぉ?」
そう言って大空へ向けて飛び上がるレアだが、そこに待ってましたと言わんばかりの雷雲が立ちこめていた。
――超越魔法、『雷光殲撃』。
「ちぃっ! そう言う事か、確かに面倒ねぇっ!」
光速の閃光がレアに襲い掛かり直撃して、そのまま押し戻されるように空から落とされてしまう。そこに『トネール』達の合わせ魔法の『大津波』がレアを飲み込んでいく。
この世界の『魔』を管理する精霊達の結集した全力の魔法で、ついに魔族の王レアに攻撃が入った。
三億を超える戦力値を持つヴィヌと、長時間魔力を溜めた精霊長老同士の合体魔法は、精霊達に確実にレアを仕留めたと思わせるには十分過ぎた。
――しかしそれでも……。
「ば、馬鹿な……!」
トネールが、バーンが、リューカが、そして精霊王ヴィヌでさえ、唖然とする光景が眼に映し出される。
大地を飲み込んだ津波の真ん中で二色の輝きのオーラが空まで伸びたかと思うと、海が二つに割れるように水が左右に押し返されていく。
――そして大地を揺るがす程の地震が起きたかと思うと、ゆっくりと空へと浮上する存在があった。
「こ、こやつは神の使いなのか?」
そして何事もなかったのように、小さな子供の姿をした『魔王』が再び姿を見せる。
更にその『魔王』は、見る者をぞくりとさせるような笑みを浮かべて、恐ろしい威圧を放ちながら共に口を開いた。
「神? 違うわねぇ、私は『大魔王』の使いよ」
……
……
……
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