340.リラリオの理とレパートの理
※加筆修正を行いました。
「行くぞ、ディガンダよ! トネールの魔法が完成するまでこちらに引きつけるんじゃ!」
「分かっておる! わしが援護するからお主の火力で一気に押せぃっ!」
二体の精霊長老がタッグを組みながら、猛スピードでトネールから離れていく。
「ワシら精霊達を甘く見るなよぉっ! 魔族の王!!」
この世界の『理』の最上位に位置する『火』の精霊の『魔力』をふんだんに使った魔法が、魔族の王『レア』に襲いかかる。
――超越魔法、『灼炎の波動』。
そしてその炎を覆い隠すかの如く、ディガンダが重ねるように周囲に魔法を放つ。
――超越魔法、『大地の隔壁』。
精霊長老達は連携をうまく取りながら、的をうまく絞らせないように移動を繰り返す。どうやら攻撃はバーンに任せて、ディガンダが防御に回るようだった。
「さて、それではこの世界の『理』の最上位魔法。見せてもらうわよぉ?」
そう言うとレアはその場で腕を組んで様子を見る。そしてそのレアを炎が波打つように迫り、轟轟と周囲を燃やしながら迫る。
炎の内側で『青』と『紅』の二色が輝かしい光を放つレアは、ゆっくりと右手を前に出す。
――何とレアは精霊の炎を手を突き出しただけで止めるのだった。
炎はレアを飲み込もうと勢いを増していくのだが、そのレアの出した手より前へは全く進まない。
「成程。だいたいこの『理』は理解したわよぉ」
そう言うと左手に魔力を集約し始めたかと思うと、そのまま無詠唱で炎の魔法を土壁で守られているバーンに向けて放つ。
――超越魔法、『灼炎の波動』。
「ま、ま、まさかっ!?」
レアは初めて今見ただけの精霊長老の魔法を詠唱すら介さずに発動させる。
レアの放ったこの世界の最上位魔法『灼炎の波動』は、本家本元である精霊の『灼炎の波動』よりも大きく威力が強い。
更には『ディガンダ』が作り出した防壁の魔法ごとバーンを飲み込むのだった。
「ぐぐぐっ……!!」
なんとかバーンはレアの『灼炎の波動』を制御して相殺することに成功する。
しかし『バーン』は魔法を相殺出来た事よりあっさりと、自分の最高位の魔法を使われた事に驚いていた。
すでにバーンの放った魔法を打ち消していたレアは、苦労してレアの『灼炎の波動』を打ち消していたバーンを見て嘲笑を浮かべていた。
「油断したなぁ! 魔族の王! お前の相手はバーンだけではないぞ!」
そう言うと先程の隔壁で出来た破片の陰から『レア』の背後へと回っていたディガンダが、ほぼ距離のないところから『レア』に向けて魔法を放つのだった。
――超越魔法、『土の爆撃刃』。
レアは無表情のまま背後にいるエリスの肩を掴むと、強引に空へ向けて投げ飛ばす。
「!?」
エリスは凄い勢いで吹き飛ばされて行くが、なんとか青のオーラを纏いながら空で勢いを殺す。
そして飛ばした方向に居るレアを見ると、土の精霊長老の放った魔法の刃がレアの体を貫いている姿が目に映るのだった。
「れ、レア様っ!?」
エリスはレアが自分を庇ったせいで、精霊の攻撃をまともに食らったのだと理解して目に涙を浮かべながら主の名前を叫んだ。
――しかし。
「油断……? 戦場で私が貴方達程度の存在に油断をすると、本気で思っているのかしら?」
そう言うと刃に串刺しにされていたレアの姿が消えた。
そしてディガンダの目前に再び姿を見せたレアは、ディガンダの頭を掴む。
「私を仕留めたいのならば、せめてこれくらいは『魔力』を込めなさい!」
――神域魔法、『凶炎』。
「ぎ、ぎぃあああっっ!!』
周囲に放つだけでも数万体の魔人を燃やし尽くしたレアの神域の魔法をその身に受けて、ディガンダはこの世から消滅する……筈だったが、その瞬間にレアの目が『金色』に輝いたかと思うと、既に準備を行っていた魔法をこの世界に対して放つ。
――神域『時』魔法、『空間除外』。
どす黒い炎にその身を焼かれながら、この世界からディガンダは除外されていった。
「ちっ、全く! 精霊ちゃん達余りに『耐魔』が脆すぎるわよぉ? うーん多分成功していると思うのだけどぉ、他の奴は念のために燃やさずに最初から除外したほうがいいわねぇ」
この世界の『魔』を管理するという名ばかりの精霊の『耐魔力』のなさに、少しばかり計算が狂ったレアは、もしかすると絶命させてしまったかもしれないと今の精霊が用いる『理』の心配をした後に、今後は魔力の調整を気にするのであった。
そしてゆっくりと振り返ると、愕然とした表情を浮かべている『火』の精霊長老に向けてレアは宣告する。
――さぁ、次は貴方よぉ。
……
……
……
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