285.蘇生の出来ない体
※加筆修正を行いました。
「む? 我は何故ここに……?」
ヌーの神域魔法によって意識を消失させられていたソフィは、ようやくその意識が戻り目が覚める。
ソフィが視線を前に向けるとそこには『力の魔神』がソフィを守り立っていた。
どうやらヌーが別世界へ転移していった後に魔神はソフィの元に戻り、そこからはずっとひと時も離れずにソフィの元に居たようである。
「――」(起きたのね。ソフィ)
魔神は意識が戻ったソフィに喜ぶのだった。
「――」(貴方を傷つけようとしていた者は、もう別世界へ向かったようね)
「そうか……、ご苦労だった。ではひとまず『ラルグ』魔国へ戻るとしよう」
魔神はソフィの言葉に頷くと笑みを浮かべた後に、素直にソフィについていくのだった。
……
……
……
ソフィがラルグに戻ると配下達が嬉しそうな表情を浮かべて駆け寄ってきた。
どうやら完全に戦争は終わったようだった。そしてその配下達の中に懐かしい顔を見つけるソフィだった。
「ああ、我が主! ご無事でしたか、ソフィ様!」
アレルバレルの世界に居た頃とは姿形が変わっていたが、ブラストは『魔力の質』で直ぐにソフィと気づくと、神を崇めるかの如く、祈りを捧げるかのように手を組みながら歓喜の声をあげた。
「これは驚いたな……。ユファに続いてお主もこの世界に来ていたか」
すでにユファという前例を見ている以上、ユファの時ほどには驚かなかったソフィだが、それでも嬉しそうな表情をブラストに向けた。
「ええ、実は『アレルバレル』で不測の事態がありまして」
そこまで口を開いたブラストだが、チラリと横目でユファに視線を送る。
「む……?」
つられてソフィも悲しそうな表情を浮かべているユファを見つける。
余りに多くの者達に囲まれていた為に直ぐには気づかなかったが、ユファとラルフが立っているところから近い場所に、二体の魔族が横たわっているのが目に入った。
「こやつらは……」
横たわっている魔族とは『レア』と『レインドリヒ』だった。
「おかえりなさい。ソフィ様」
そしてソフィと視線が合ったユファがそう声に出す。
「これはヌーがやったのか……?」
ソフィの言葉にユファは、静かに頷く。
「レインドリヒはヌーからレアを庇い殺されました。そしてレアは……、レアはそのヌーに操られたレアの配下達に……っ!」
そこまで喋ると、ユファは堪えきれず涙を流す。
「少し下がっておれ」
ソフィは静かにそう言うと、横たわるレア達の前に立つ。
「ソフィ……様?」
「『数多の神々を従える魔神よ、汝の全てを今ここに欲す。復元の力を我は望む、契約者たる大魔王の言葉に応じよ。我が名はソフィ』」。
ソフィの横に守り立つ魔神はその詠唱に応える為に、ソフィの魔力を媒体に『神域魔法』である復元の力を使う。
――神域魔法『救済』。
レアとレインドリヒを眩い光が包み込み始める。
ソフィの持つ膨大な魔力。現在の総魔力の三分の一にあたる程の膨大な魔力を用いて、使用された魔法だが、その効力が発揮されずに光だけがそのまま消え去るのだった。
「これはどういう事だ……?」
ソフィが魔神に尋ねると魔神は慌ててソフィに弁明する。
「――」(ソフィ。この子達の魂は既にこの場にないから目を覚ませることは出来ないわ)
確かに魔法を使う事には成功したとソフィに伝える魔神だが、すでにこの身体から魂は離れており、蘇生をするには間に合わなかったらしい。
だが、魂はそう簡単に肉体から離れる事はない筈であり、二日から三日の間は留まり続けるのが常である筈だった。
つまりこの場合に考えられる理由は二つ。
一、呪縛の血の契約により、即座に死神によって魂を抜かれた。
一、代替身体を用意しており死神によって、魂を奪われる前にそちらに移動した。
――まさにその考え通りであった。
ヌーに魔力を吸われて殺される寸前に、レインドリヒはヴァルテンによって強引に結ばされた『呪縛の血』が発動した為に『代替身体』に魂を乗り移す前に死神によって魂を奪われて絶命してしまっていた。
死神は魔神に次ぐ存在の神々であり『大魔王』と言えども太刀打ち出来る物ではない為『呪縛の血』に対しては『代替身体』の魔法の影響下であっても死神に魂を優先される。
(※但し力の魔神程の神格を有する存在を従える『大魔王』ソフィに対してはこの限りではない)
例の一つにソフィの放った『救済』の魔法により、既に先に契約を済ませていた死神に対して、後からその契約を破棄させてラルフの身体を蘇生。そして復元させた過去を持つ。
(※当然納得のいかなかった死神に対してソフィが生命力を譲り渡す事で交渉に出たが、それでも納得をせずに悩んだ末に断ろうとする死神だったが、しかしそれを見た力の魔神は死神に対して『ソフィの交渉を断れば死神の世界へ赴き、全ての死神を消滅させてやる』と告げた事で、慌てて死神は自分より神格の高い存在の魔神に従った)
つまりレインドリヒが生き残る為には『呪縛の血』を発動させられる前に詠唱者である『ヴァルテン』を殺すか若しくはその場にソフィが居れば、レインドリヒの魂は助かっていたかもしれない。
そして魔王レアの場合だが、レアの身体が死滅した瞬間に自動的に『代替身体』に魂が移った為に、既にこの身体を復元させたところで魂がなく、魔法は発動しなかったという訳であった。
「どうやらその魔族達は『呪縛の血』の効力か『代替身体』に魂を移したというわけだろうな」
ブラストがそう口にすると、ユファはレインドリヒと話をした時の約束を思い出す。
「つまりアンタは最初から、レアに計画を伝える為に自分は死ぬつもりだったのね……」
ユファの目からまた涙が零れ落ち頬を伝っていく。
「ユファさん……」
横に立つラルフが師であるユファを気遣う。
そして少しの間、場に静寂が訪れるのだった。
……
……
……
部下である筈のジーヌに心臓を貫かれて絶命したレアは、キーリを嗾けた時に使っていたリラリオの世界の人間達の大陸。ミールガルド大陸の山頂に残していた『代替身体』で目を覚ますのだった。
「ん……っ、ここは……?」
『代替身体』を残す魔法は会得していたが、初めて殺される経験であったレアはこの身体に移った実感がまだ湧かなかった。
まるで転生を果たしかのように、自分ではない自分に記憶だけ持って生まれ変わったようなそんな感覚であった。
山に立てたログハウスのベッドの上で『魔王』レアとは違う身体を部屋の姿見で確認する。顔も体も本体の幼女の姿と似せてはいるが、よく見ると細部は違っていた。
「分かっていた事だけど、別人ねぇ……? もう……ねぇっ、どうでも、いいけどねぇ……」
そう言うとベッドの上に再度倒れ込んで涙を流すレアであった。
フルーフの件で長い長い年月を配下にした『ヴァルテン』に騙されていた挙句、操られていたとはいっても目をかけて自分の後継者のつもりで頑張って育て上げた『ジーヌ』の手によって命を奪われた『魔王』レアは、生まれ変わった今でもどうしようもない虚無感と脱力感に襲われるのだった。
……
……
……
※この時のレアは生涯で一番と呼べる程、精神にダメージを負う事になりました。
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