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25.力を持つ者たちの思惑

※加筆修正を行いました。

「……」


 勝負がついたというのに歓声などは一切聞こえてこなかった。


 だが、観客席や観戦室ギルド長や貴族達は、皆一様に信じられない『魔法』を繰り出して見せたソフィからその目が離せない。


 そしてソフィが居合を見て『リディア』に興味を持ったように、リディアもまたソフィに信じられない程の興味を示しているのであった。


「は、はははは!! おいおいおい、こいつは最高じゃないか……!!」


 誰もが無言でソフィを見ている中でリディアだけが、本当に嬉しそうにソフィが映るモニターの映像を眺めて笑い声をあげている。


 そしてリディアと同じく勲章ランクAの冒険者の『スイレン』は表面上は微動だにせず、ソフィを見ているだけだったが、その内心では非常に苛立ちを募らせていた。


(ふ、ふざけるなよ! 何だあの禍々しい程の『魔力』の高まりは!! あれのどこが勲章ランクEだ!? ば、馬鹿な事を抜かすなよ! クソッ、何で最後の輝かしい引退試合であんな野郎を相手にせねばならぬのだ!)


 冒険者として最高ランクに位置しているスイレンもまた、ソフィの異常性に気づかずにはいられなかった。


 どうみても見た目が十歳程の少年の上、冒険者の勲章ランクが下から数えたほうが早いEランクだとされていても、上位ランカーには隠し通す事のできない、ある種の感覚で分かるのである。


 それも今の炎を出したあの子供は、()()()()()()()()()()


 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()


 強者たちだけがソフィの見た目に騙されることなく、その異常性に気づけるのだった。


「勝者! ソフィ」


 審判が救護班の回復を見届けた後、担架に乗せられて運ばれて行ってから、ゆっくりと勝利を告げるコールを行うのであった。


 ……

 ……

 ……


「あの少年は何者なんだ……?」



 ヘルサスはシャルに問いかけるが、当然シャルにも分からずに黙り込む。


 仕方なくヘルサスは、出場選手の一覧表を見て確認する。


「『ケビン王国』の『グラン』の町のギルド所属の選手なのか、名前は、魔法使いソフィ。ギルド勲章……は? ら、()()()()!?」


 ヘルサスが驚愕の声をあげるのと同時に、その場にいるディラック以外の全員が、一斉に一覧表に視線を向けて目を丸くするのだった。


「グランの町のギルド長は貴方ですね。ディラック殿、あの少年は本当にEランクなのですか?」


 シャルがディラックに問いかけると、ディラックは笑顔で頷く。


「あ、ああ……。彼は最近我がギルドに所属した期待の新人(ルーキー)でしてな。Gランクの時点でギルド指定C級の『災害級』のモンスターを倒して見せたので、私が特別にEランクに押し上げた少年です」


 その言葉に呆然と一覧表を眺めていた者達は、一斉に顔をあげて驚愕の声をあげた。


「さ、ささ『災害級』とされる魔物(モンスター)をGランクで討伐したというのか!?」


「馬鹿な! そ、そんな事があり得るのか……!?」


 どこの地域のギルドでも『災害級』はC以上の認定の魔物(モンスター)であり、上級冒険者とされる勲章ランクB以上の者でしか、討伐は不可能と言われている。


 そんな『災害級』の魔物(モンスター)を冒険者の登録をしたばかりとされる、勲章ランクGで討伐したというのだから、信じられないのも当然の事であった。


「し、しかし……! そ、それが本当だとしても次は冒険者ギルドで、最高のランクを持つスイレンだ……。負ける事はあり得ない!!」


 シャルはまるで自分に言い聞かせるようにそう言うと、スイレンを上に押し上げようとする。


 その自分を納得させるようなシャルの言葉に、ヘルサス伯爵もまた大きく頷いたのだった。


(しかし、ディラック殿もとんだ食わせ者であったな、まさかこんな隠し玉を持っていたとは……)


『ローランド』の町の冒険者ギルド長であるホーキンスは、横目でチラリとディラックを見ながら胸中でそう呟くのであった。


 ……

 ……

 ……


「あははっ! やっぱり僕が思った通りだったねぇ? 彼は格別に強いと思ってたんだよっ!」


 観戦室で試合を見ていた『ウィラルド』の代表選手の『レン』は、一目でソフィが実力者だと分かり、決勝トーナメントまでは来るだろうと既に予測を立てていたのだった。

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