271.最恐の大魔王、ヌー
※加筆修正を行いました。
「むっ!」
レアを見下ろして笑みを浮かべていたソフィは、異様な魔力を察知して空を見上げる。この魔力はどこかその懐かしさをソフィに感じさせていた。
「この魔力は……、まさか?」
……
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その頃『レイズ』魔国の国境付近で勝負に負けたユファは、レインドリヒの話を聞いているところだった。
ユファ達の世界の支配者である大魔王『フルーフ』が、今や組織の実験体に成り下がっている事や、全ての責任をソフィに擦り付けてレアをソフィと争わせようとしていた事、現在ヴァルテンによって『魔法』で杭を打たれてしまい自分で告げられない事など、組織の企みなどレインドリヒの知る情報を全て同じ世界の同胞であるユファに告げたレインドリヒだった。
「何て酷い事を……! じゃあ、あの子は今も真実を知らずにソフィ様と戦っているの?」
「ああ……。それでここからが、俺から君への頼みなんだ」
そういって表情を変えたレインドリヒは、もうすぐここに『最恐』の大魔王『ヌー』が『概念跳躍』を使える存在を全て殺しにリラリオの世界に向かってくる事を話すのだった。
「ま、まさか……!? あ、あいつがここに……?」
過去にアレルバレルの世界で『ヌー』に狙われた事があるユファは、ソフィが居なければ確実に殺されていた。ヌーの恐ろしさや強さの事は、協力者である『組織』の者達よりも彼女の方が詳しいだろう。
「大魔王ソフィの事は俺もこの目で見た事はあるが、レアと戦いながらヌーとも戦うとなると流石に分が悪いだろう。俺も君たちの援護はするから、何とかして君からレア達に事情を説明してくれないか?」
ユファは真意を確かめるようにレインドリヒの目を見る。いくら自分を偽る事が得意な『魔術師』であっても、ユファもまた『大魔王』である。
騙そうというしているかどうかを判断するくらいは、そこらの魔族よりは出来る。
ユファはふっと笑みを浮かべると、口を開いた。
「分かったわよ、約束だしね? それじゃあ、ソフィ様の元へ向かいましょう!」
ユファの決断に感謝しながら、レインドリヒは深く頷きながら口を開く。
「その前に俺の配下達を一度、君の国で預かってもらえないか?」
この場を見守るように手を出さずにレインドリヒの配下達はこちらを窺っていたが、レインドリヒがそう口にすると、聞こえていたのか多くの配下達が集まってくる。
その様子に苦笑いを浮かべながらもユファは、シスに『念話』で連絡をとり始めたのだった。
……
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トウジン魔国周辺に居た『レパート』の魔族の掃討を粗方終えた龍族達は、始祖龍キーリの元に次々と集まってきていた。
「お前達、負傷者の確認と報告を急げ! 手当をすぐに行う準備をしておけ!」
始祖龍キーリの言葉にその場にいた龍族達は頷き、直ぐに確認作業を行い始める。
そして意識を失っているミルフェンをキーリは、自らの膝に乗せて看病を続ける。
「待っていろよ、ミルフェン? 俺がすぐに治してやるからな」
意識を失っているミルフェンの頬を撫でながら、優しい笑みを浮かべるキーリだった。
こうして負傷者は出したものの『トウジン』魔国は、キーリたち龍族の手によって、ひとまずの勝利を収めるのだった。
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『ダール』の世界から『リラリオ』の世界へと転移してきたのは『アレルバレル』出身の大魔王『ヌー』であった。
ヴェルマー大陸の西側、三大魔国でいえばラルグ魔国が一番近い距離だろうか、その大空でヌーは静かに周りを見渡す。
「……ほう? 中々に俺好みの空の色だ」
先程まで戦闘が各所で行われて、天候系の魔法を使われていた為に、空は雨雲で覆われて薄暗く荒れ模様であった。
ヌーはアレルバレルの『魔界』を思い出しているのか、心地良さそうに空を眺めている。
「さて、この鬱陶しい程の魔力の圧は、あの化け物のものだな? 数千年経つというのに、すぐに察知させられるというのは、全く忌々しいものだな……!」
『魔王』レアと戦い強い意欲に囚われているソフィの百億を越える戦力値を感じ取りながらも、余裕の笑みを浮かべながらそう口にする大魔王『ヌー』であった。
……
……
……
「何故、奴がこの世界に?」
そしてソフィもまた直ぐに『大魔王』ヌーの魔力を察知していた。
ソフィの前で尻もちをついているレアは、ヌーの事など気にする余裕がないのか、空を見上げているソフィの方をじっと見ていた。
じっと見つめられていたソフィは視線をレアの方へ移すと、レアはびくんっと身体を震わせる。
「どうやら、お主との戦闘はここまでのようだな」
「え……?」
呆けた表情を浮かべながらソフィの言葉を聞いていたレアだが、そこに大魔王ヌーがソフィ達の前に姿を見せるのだった。
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