242.動く九大魔王達
※加筆修正を行いました。
イリーガルにダイス王国の様子を見てくるように頼まれていた使い魔『ヴァージア』は、まず王国内にいるイリーガル様の旧知の間柄である『ディアトロス』様に会いに行く事にした。
ヴァージアは『夢魔』という魔物で本来の彼女の役割は、狙った男の夢に自身を登場させて、満足させてから生気を吸い取り殺して『魔力』を奪うという恐ろしい魔物であった。
だがヴァージアは本来の力とは別に戦闘面においても秀でており、元々は単なる魔物だというのに『最上位魔族』であっても、ヴァージアには勝てぬ程の戦力値を持っている。
【種族:夢魔 名前:ヴァージア(イリーガルの名付け)
年齢:??? 魔力値:50万 戦力値:3100万
所属:大魔王ソフィの配下・九大魔王イリーガルの使い魔】。
ヴァージアは闇夜の空を高速で飛んでいき、ひとまずダイス王国へ到着した。ダイス王国へ正面から行けば攻撃をされる恐れがあるため、空から城の中へ侵入する事にしたようであった。
ダイス城の裏門がある上空。その最上階の窓から入ろうとするが、ヴァージアが城に入ろうと窓に手をかけた時、電流が走ったような衝撃と共に激しい痛みがヴァージアの身体を駆け巡った。
「!!」
慌てて窓から手を離して距離を取る。どうやら前まで張られていなかった『結界』が、ダイス王国城に施されているようだ。
ヴァージアはこの結界を何とか強引に破壊しようと『淡く紅い』オーラを纏い始める。
(※『紅いオーラ』とは最上位の魔族や、才ある上位魔族程の存在がようやく纏う事の出来る自身の力の上昇が可能な技法である)。
自らの戦力値を上昇させて再度窓に手をかけるが、先程と同じく結界に阻まれてヴァージアは、気絶しそうな程の痛みを負いながら、ふらふらと羽を羽搏かせながら城から距離をとった。
流石にどうしようもないので、ヴァージアは窓から城の中をのぞいて周る。すると普段であれば人間しかいない筈のダイス城に、全身に目がある魔物が、歩いているのをヴァージアは発見する。
――何故場内に魔物が居るの? とばかりに、同じ魔物である夢魔のヴァージアは思ったが――。
次の瞬間、外から中の様子を窺っていたヴァージアはその全身目の魔物に見つかってしまう。
「!!」
慌ててヴァージアはその場から離れようとするが、上空で動けなくなってしまった。そしてそのまま意識が混濁していき、地へ落とされたのだった。
……
……
……
ヴァージアがダイス王国へ向かってから早二日。
まだ戻ってはこない使い魔にイリーガルは、既に何者かに『ヴァージア』がやられたのだと判断するのだった。
ここからダイス王国へはヴァージアの速度を考えると、往復で七時間もあれば十分に戻ってこられる筈である。
そして何かあったとしても『念話』で情報を送るように伝えてあるにも拘らず、全く音信がないとなれば何者かに命を奪われたか、もしくは捕まって意識を失わされたとみて間違いないだろう。
現在イリーガルは『魔界』でも中立の者達が集まる大陸の端に拠点を構えている。
「お前達、準備をしろ。これよりソフィの親分の元へ、魔王城へ向かうぞ」
ダイス王国の事も気がかりではあるが、流石に勇者の噂を耳にしてから二日も経っている。実際に何かあったと判断したイリーガルは、主であるソフィの城へ向かう事にするのであった。
「他の魔王達への牽制の意味も込めて今から俺の場所を全魔族に伝える。お前達も気を失わぬよう気をつけろ。間違っても今から俺には『漏出』を使うなよ? そのまま死ぬぞ」
イリーガルの言葉にバルクは恭しく頭を垂れた。
『念話』が通じないというのであれば、九大魔王はその存在を示して今から向かう場所を強引に、同胞である九大魔王達に伝える事にしたのだった。
イリーガルが空に向かって飛び上がるとバルクは中立を守るこの大陸の者達に、被害を及ばぬように大規模な『結界』を張る。
そして『九大魔王』イリーガルは遥か上空で力を示した。
大魔王であるイリーガルが『魔力』を一気に開放すると、空に浮かぶ雲は全て吹き飛んだ。
そしてバチバチと音を立てながら『淡く青い』オーラを最高練度まで高める。
『漏出』や『魔力感知』の出来る猛者達は、如何なる場所に居ても『イリーガル』の力を感じ取れる程にその存在感を示したのである。
【種族:魔族 名前:イリーガル(真なる大魔王化) 年齢:9330歳
状態:青のオーラ 魔力値:1190万 戦力値:34億2800万】
「青程度でも十分に俺だと気づけるだろう。さて行くか」
眩く光る目をしたイリーガルは、アレルバレルの『魔界』中に自らの力を示した後に、ソフィの城へ向かうのだった。
……
……
……
「イリーガルが動いたか……! 配下達をダイス王国へ向かわせろ。今の内にディアトロス殿を回収してくるのだ。邪魔をする者達は皆殺しにして構わん!」
ソフィの魔王城がある大陸の遥か北『破壊』の異名を持つ『九大魔王』の一体『ブラスト』は配下にそう命じた。
ブラストの側近である『ルード』は『念話』で主であるブラストの言葉に頷いた。
(御意!)
九大魔王の中で最も危険な思想を持っているといわれる『破壊』の大魔王は、主であるソフィとその配下達以外は皆殺しにしたいという衝動に常に襲われている。
この世界は大魔王ソフィ様の物であると考えるブラストは、優しいソフィ様の温情に甘えているにも拘らず、あろうことかそんなソフィ様に対して勇者とかいうフザケタ存在を作り出して、あまつさえそのソフィ様を討伐させようとしていたダイス王国の人間達に対して、ブラストは我慢ならなかった。
今まではソフィ様の命令があった為に手を出さなかったが、現在その主がこの世界に居ないという事に気づいた『ブラスト』は、今の内に邪魔な塵芥達を消し去ろうと考えるのであった。
後でソフィ様が戻ってきた時にお叱りがあるかもしれないと考えた『ブラスト』だが、全てを更地に変えてしまえば誰にもどうにもならない。
多少のお叱りよりも得られる高揚感を想像して忘我の念を抱いた彼は、ゾクゾクと身体を震わせるのだった。
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