2294.トウジン魔国の冒険者ギルドでのクエスト
「あぁ? それを訊いてお前に何か関係あんのかよ?」
「あるに決まっているだろう? お前は俺達魔王軍と長年敵対関係にあった組織の頂点に居た大魔王ヌーだろうが。エヴィを探す為に親分はお前と一時的に手を組む事になったが、すでにエヴィも無事に戻ってきた事でお前の役割はもう済んだはずだ。これ以上お前が親分の元に居る理由もないだろう?」
「そうですよねぇ? まさかとは思うけどぉ、このままソフィ様の恩情に甘えて何事もなかったかのように、振る舞うつもりはないわよねぇ?」
「これまで我々魔王軍に対して行ってきた事の全てを謝罪し、ソフィ様に忠誠を誓うというのであれば、また話は変わってくるけどね?」
イリーガルがいつまでソフィの屋敷に居るつもりだと訊ねた事がキッカケで、次々と『九大魔王』の面々が大魔王ヌーに圧力を掛け始めるのだった。
「これ、お主ら……」
突然のイリーガル達の糾弾に思わずソフィが間に入ろうとしたが……――。
「俺もいつまでも世話になるつもりはねぇよ。ただ、今はフルーフとの一戦が控えている状況にある。そもそもコイツの使役する『魔神』が、フルーフの野郎の使役する『死神皇』に話があるらしくてな。どちらにせよ、奴との一戦が終わるまではコイツの元に居る方が互いに色々と都合が良いんだよ」
「ちっ……!」
フルーフとの一戦の事と『魔神』の件を出されては、何も言えなくなってしまったようで、イリーガルはこれみよがしに舌打ちをするのだった。
「でもそれなら、貴方もソフィ様のお屋敷にお世話になるんだったら、それ相応に何か対価を支払ったりするべきではないかしら? 毎食、食べるものだって用意して頂いているのでしょう?」
そのエイネの言葉に、今度はヌーが小さく舌打ちをするのであった。
「む! それならヌーよ、良い機会ではないか!」
「あ、あぁ……?」
閃いたとばかりに笑みを浮かべて何かを言おうとするソフィに、嫌な予感がするヌーであった。
「折角お主らは今回『冒険者』になったのだ。ただ単に『対抗戦』に参加する為だけではなく、しっかりと冒険者ギルドに属する者達として、このギルドに届いている依頼等を受けて稼げば良いではないか!」
――金がなければ稼げばよい。
至極真っ当な理由でヌー達に『冒険者』としての活動を促すソフィであった。
「依頼を受けろだと……? 一体何をすればいいのか分からんぞ」
「お、親分! 俺達も何をしていいのか全く分かりません。依頼というからには、あらゆる大陸に居る魔王共に襲撃されて困っていたりする、この国の魔族達の救出などを行えば良いのでしょうか?」
「そういう事かよ……! 最近は『魔神』だの『真鵺』とかいう『妖魔』だのにやられて、非情にむしゃくしゃしていたところだ。雑魚共を守って金を稼げるなら丁度いい。襲撃者を根絶やしにして溜まっていたフラストレーションを一気に発散してやるぜ!」
そう言って意欲を高め始める大魔王ヌーであった。
「いや、確かにそういう依頼もあるかもしれぬが、ここはアレルバレルの世界ではないのだぞ? まずはどういう依頼があるのかを壁に張られている依頼などで調べるのだ」
「ちっ、めんどくせぇな……! おいテア、悪いがちょっと取ってきてくれねぇか?」
「――」(はぁ? 面倒なのは私も一緒だっての! お前が受けるんだから、お前が自分で取ってこいよ!)
「……わぁったよ! 全く、気の利かねぇ女だぜ」
「――」(何だと!? お前こそ――)
やいのやいのと騒ぎながら、ヌーとテアは結局言い争いの末に、依頼の張られている掲示板の方へと仲良く一緒に向かうのであった。
「クックック、本当にあやつらはお似合いだな」
そしてそれを見て満足そうにソフィが笑っていると、何やら先に張り紙を一枚取って戻ってきたヒノエが、少し躊躇いがちにソフィの方を見つめていた。
そこに隣に立っていたリーネが、こっそりとヒノエに耳打ちをする。
(ほら、今ならソフィ一人だし、誘ってきなさい!)
(り、リーネ殿! で、でもよ……、いきなり誘っちまって迷惑じゃねぇかな?)
(大丈夫よ! ソフィは優しいから、貴方が誘えば絶対に断ったりしないわよ)
(そ、そっかな……? よ、よし!)
意を決してヒノエは持っていた紙を握りしめると、ソフィの元へと向かっていくのだった。
「そ、ソフィ殿! わ、私と一緒に『くえすと』って奴を受けてくれないかっ!?」
「む……? うむ、そうだな。我も久々に受けてみようかと考えていたところだった。我で良ければよろしく頼む」
(やった……!)
ソフィが快く受けてくれた事で、勢いよくリーネの方を振り返りながらガッツポーズを取るヒノエであった。
「お、親分! 俺も一緒に……」
「はいはぁい! イリーガル様はあたし達と一緒に受けましょうねぇ」
「全くもう、イリーガル様も本当に空気が読めませんね……」
ソフィとヒノエが一緒に依頼を受けようとしたところ、それを聞きつけたイリーガルが自分もとばかりに声を掛けようとしたが、その瞬間にリーシャとエイネの両者に引きずられていくのだった。
イリーガル達の様子を見ていたソフィは、そこでふと別のギルドに所属する者でも依頼を受けられたのだろうかと考え始めるのだった。
「リーネよ、少し良いか?」
「ん、どうかした? あ、分かった! さてはパーティの作り方が分からないんでしょう? 私に任せなさ……――」
「いや、そうではなくてだな。我達は別のギルドに所属しているが、このギルドに寄せられた依頼は受ける事が出来るのだろうか?」
「はい? 勿論大丈夫だけど……。というか、どうして駄目だと思ったの?」
何故そんな事を思ったのか疑問に思ったリーネは、逆にソフィに尋ねるのだった。
「いや、昔お主がグランの町で『対抗戦』に出る為には、その町のギルドに所属しておかなくては駄目だとディラックの奴が言っていた気がしてな。登録を果たしたギルド以外では依頼を受けられぬのかと考えたのだ」
ソフィの言葉にリーネは苦笑いを浮かべるのだった。
「ああ……。ギルドに所属して日が浅い内にいきなり『ディラック』ギルド長から『指名依頼』を受けたせいで、色々とギルド依頼の内容が混同しちゃったのね」
あっさりと勲章ランクが上がったソフィではあるが、実際に今のランクになるのに必要な程の依頼を受けてきたわけではなく、はっきりと言ってしまえばまだ、全然冒険者に所属する『冒険者』としては新人もいいところだと思い出したリーネは、勘違いしても仕方ないかと一人で納得するのだった。
「何も心配しなくてもこのギルドでソフィもヒノエさんも依頼は受けられるし、依頼の達成報告も出来るわよ? 多分ソフィの言っている事っていうのは、私が『グラン』の町から、あの時の『対抗戦』のメンバーとして選ばれなかった理由が、別の町のギルドに所属していたからだったから、それで別の町のギルドの依頼はその町に所属していないと受けられないと考えたんでしょう?」
「ああ……。そう言う事か。あれはディラックの『指名依頼』を別の町のギルドに所属しているから受けられないというわけではなく、グランの冒険者として『対抗戦』には出られないという意味であったか……?」
そう言えば確かにディラックにそう説明された覚えもあるなと、リーネに伝えられた事で正確に思い出したソフィであった。
「そういう事よ。だから貴方はヒノエさんと直ぐにパーティを組んでクエストを受けてきなさい?」
「そうだな……。ではヒノエ殿もそれでよいか?」
「あ、ああ! え、えっと……、よ、よろしくお願いします!」
「六阿狐ちゃんはその間、私と一緒にデートしましょうね?」
「ふぇっ!? い、いえ……。わ、私はソフィさんの護衛……を……」
「ね?」
「は、はい……、リーネ様と『でぇと』します!」
リーネの恐ろしい笑顔を見て『有無を言わさぬ』とはこの事かと、諦めてしまう六阿狐であった。
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