2292.ディアトロスとの会話の中で
「……もうよい。分かったからその威圧を止めよ」
ディアトロスはソフィの威圧に脂汗を浮かべながらも何とか堪えると、静かにそう告げるのだった。そしてソフィも直ぐに解除するつもりだったのだろう。ディアトロスの言葉にあっさりと威圧を止めるのであった。
「ディアトロスよ。勘違いはして欲しくないが、心情的には我もお主と同じものをフルーフに抱いてはおる。だがこの『決闘』を行うと決めたのは他でもないフルーフであり、決意と覚悟を持って口にしたのだと我は理解しているつもりだ。そこに我らが手や口を出すのはまた話が違ってくるだろう? あやつの意地もしっかりと見届けてやる事こそが本当の友だと思うが」
誰よりも『決闘』に対して強い思いを抱いているソフィは、ディアトロスに説くようにそう告げるのだった。
「ワシとてこれが命のやり取りまでに収まる話であれば、お主にも口出しをするつもりもなかったんじゃ。じゃが、お主も理解してはいるだろうが、これは魂すらも懸った『決闘』になるじゃろう。仮にフルーフがあやつにやられてしまえば、もう二度とワシらの前に戻っては来れぬのじゃぞ……?」
「……」
当然にソフィも重々理解をしてはいたが、これまで一番長く自分と共に居た『大魔王』から告げられた事で、ソフィは考えるように押し黙るのだった。
「……まぁ、お主の言いたい事もよく分かってはおる。確かにどういう思いがあったにせよ、決闘を行うと口にしたのはフルーフ自身だ。じゃが、ワシがどういう気持ちでこの話をお主にしたのか、それを頭の片隅にでも留めておいて欲しい」
そう言ってディアトロスは、もう話は終わりだとばかりに立ち上がり始める。しかしこの場を去ろうとする前に、ソフィから声を掛けられるのだった。
「我はそれでもヌーを信じてみようと思う。あやつはノックスの世界で随分と変わった。そして『力』を手にしたからこそ、今回の『決闘』にも良い方向法に活かそうと今も努力を続けておる筈だ……」
ディアトロスは振り返り、ソフィの視線に小さく頷いた後に『結界』を消して、その場から静かに去って行くのだった。
その場に残されたソフィは一人、険しい表情を浮かべて、窓口でテアと楽しげに話をしている様子の大魔王を一瞥するのであった。
「こればっかりは難しい話ですね、ソフィさん……」
「うむ……、ん? 六阿狐か。どうやらお主も聞いておったようだな」
これまでこのギルドの中に居るという意識は持っていたソフィであったが、どうやら六阿狐は話の邪魔にならぬように上手く存在感を消しつつ、ソフィの傍に控えながら話を聞いていたようである。
しかしディアトロスが何も言わなかったところを見るに、ソフィの護衛だと理解した上でこの場で話を聞く事を良しとしたのか、そもそも今のソフィがそうであったように、六阿狐に上手く存在感を消されていた事で意識の外側へと追いやられて、実は気づけなかった可能性も考えられるのだった。
「申し訳ありません。ですが私はソフィさんの護衛ですので、片時も離れるつもりはなく……」
「うむ。お主の気持ちは分かっておるよ。しかしすまぬが、この事は他言無用で頼む」
「勿論です! 誰にも言うつもりはありません!」
ソフィも六阿狐の事を信頼しているようで、口にはしつつもその辺の心配は何一つしておらず、首を縦に振って頷くのであった。
「あやつも我と同じくらいにフルーフとは付き合いが長いのでな……。当然にこれまでも色々と考えておったのだろうな」
「そうなのですね……。フルーフさんという御方はまた『別世界』の方なのですか?」
「『レパート』という世界の支配者だった魔王だ。少し前には娘のレアが魔王軍を引き継いでおるという話も聞いた事があるが、現在はどうなっておるのかは分からぬな。我もノックスの世界へ向かった後の事は向こうの情勢は何一つ分かっておらぬ」
「せ、世界の支配者ですか……。ソフィさんの周りは、本当にとんでもない方々ばかりですね……」
「クックック、お主とてその中の一人ではないか? お主の主はノックスの世界で指折りの『存在』で間違いないであろう?」
何も言わずに小さく頷いた六阿狐を見て、少しだけ先程までよりも気分が晴れやぐソフィであった。
……
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