2289.尋常ではないヒノエの腕力
ヌーとイツキがアイゲンに連れられて窓口でギルド登録を行っている頃、ヒノエはイリーガルと共にギルド内の至る所に飾られている武器や防具について雑談を行っていた。
「ヒノエ殿、これを見てくれ」
「んー……?」
ヒノエが持ちやすそうな一本の小刀を手に取って見ていると、イリーガルが自分の得物である『大刀』と同じくらい大きな斧を持って声を掛けてきたのだった。
「うぉっ! それ、凄くでけぇな……!」
「そうだろう? 俺が普段使っているこの背中の『大刀』より重いぐらいだ。こんな物を得物として戦闘で使うなら、最低でも常に『オーラ』を纏っていなければ扱うのは難しいだろうな。まぁ、流石にこれは展示用だからだろうが……」
イリーガルがそう告げるように、その持っている大きな斧の柄の部分に『展示用』と書かれた札が付けられていた。
「しっかし、見た目の威圧感が半端ねぇな。私らの世界じゃ、そんな形状の武器は見たことがなかったぜ」
そう言ってヒノエが物珍しそうにイリーガルの持っている斧を見つめていると、イリーガルはその大斧をヒノエに差し出し始める。
「ヒノエ殿も持ってみるか?」
「お、いいのかい? 私もこの展示用の小太刀を手に取ってみてたんだが、軽すぎて持ってるのかどうかすら分からなくてよ、ははっ、戦闘じゃ使いモンにならねぇなって感想を抱いていたところだったんだ」
そう言ってヒノエは、その武器なら持っている実感も抱くだろうとばかりに、イリーガルが重たそうに両手で持っている大斧を手渡してもらうのだった。
「お、おお……! ははっ、重さだけ考えれば私にぴったしだ! まぁ、戦闘用って考えたら間合いの取り方が難しいだろうけど、遠くから威圧目的で一発撃ち込むなら丁度いいかもな!」
そう言ってヒノエは『オーラ』すら纏わずに、生身の状態でイリーガルでさえ重たいと口にしていた大斧を片手で軽々と振り回し始めるのだった。
「あ、ああ……。そ、そうだろう? 斧は重厚な戦士が破壊力を重視して選ぶ事が多いとされているからな。ひ、ヒノエ殿のような華奢な身体をしている剣客には、あ、合わないかもしれないな……!」
ヒノエが大斧を軽々と振り回しているのを見たイリーガルは、頬を引くつかせながらも何とかそれだけを口にする事が出来たのだった。
(あ、あの細い身体の何処にあんな奇想天外な『力』が隠されているんだ!? どう考えてもおかしいだろう!?)
表面上は気にしていない素振りで話を合わせているイリーガルだったが、その胸中では信じられない程の狼狽振りであった。
「す、すみませんっ! お、お話し中に失礼します。あ、あの! そ、その斧はあくまで展示用でして、他の冒険者の方々の迷惑にもなりますので、出来れば、そのように、ふ、振り回さないで頂けると助かります……」
「あ……っと、申し訳ねぇ! つい手頃な重さで気に入っちまってさ、直ぐに戻すから許してくれっ!」
「は、はい! で、では、お願いしますね……!」
そう言ってギルドの職員らしき魔族の女性は、最後にヒノエ達に一礼を行った後に戻って行った。
(あ、あの展示用の大斧は、上位魔族の方々が数人掛かりで運んでようやく飾り立てられたというのに、あの大男も人間にしか見えない女性も、ど、どうしてあんなに軽そうに持てているのかしら……!?)
特に人間にしか見えない女性の方は、片手で軽々と振り回しているところをみて、この職員だけではなく、中に居た職員の大半が驚き戸惑っていたのだった。
「ねぇ、やっぱりあのお姉さんの腕力、おかしいよね……?」
「そ、そうね。耶王美さんも注意しないといけないけど、真に警戒すべきはヒノエさんなのかもしれないわね」
「僕は、怖くてあの人の傍には行けませんよ……」
ギルド職員に注意されていたイリーガルやヒノエを見て、リーシャとエイネも驚いていたが、特に『魔王』ですらない魔族のミデェールは、身体を震わせながら、決してヒノエには近づけないと感想を漏らすのだった。
※ミデェールはエイネの婚約者の魔族で、現在は『最上位魔族・最上位』ですが、金色の体現者としての力を解放すれば、同じ『最上位魔族』である『レルバノン』や『アイゲン』にレイズの冒険者ギルドに属する『ネミア』を圧倒出来る強さを保有しています。
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