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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
ヴェルマー大陸の冒険者ギルド編

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2305/2312

2287.闘技場を前にして

 シチョウと『念話(テレパシー)』を終えたソフィは、ヌーとイツキをトウジン魔国の冒険者ギルドに登録させる為、ブラストを除いた他の面々を引き連れて、アイゲンの待つ『トウジン』魔国の闘技場がある『冒険者ギルド』へと向かうのであった。


 しかしソフィの『高等移動呪文(アポイント)』で辿り着いたトウジン魔国の場所は、レキと戦いを行った場所が近くに見える『闘技場』の施設の前であり、目的地であった『冒険者ギルド』の施設の前ではなかった。


「なぁなぁ、ソフィ? 何で闘技場の前の方に飛んできたんだ?」


 レイズ魔国でイリーガル達を連れてきたエルザは、その用事を終えた後もラルグ魔国へは戻らず、一緒にソフィ達と共について来ていたのだが、てっきりギルドの前に来るのだろうと思っていたが故に、思わず彼女は疑問をそのままソフィに投げかけてしまうのだった。


「む……。いや、ここでとある魔族と戦った事が強く印象に残っておるのでな。トウジン魔国といえば我の中ではここなのだ。お主らもすまぬが、ギルドまでは少し歩く事になるが許してくれ」


「そうなのか。その魔族ってのが誰の事かは知らないけど、ソフィに強く印象を残すくらい強い奴も居たんだなぁ。まぁ、そんなに離れているわけじゃないし、気にしなくてもいいんじゃないのか?」


 エルザはそう言って笑みを浮かべてくれるのだった。どうやら彼女は久しぶりにソフィと長く居られて非常に上機嫌な様子であった。


 他の者達もエルザと同じ気持ちのようで、そこまで気にしている様子もなく、同意するようにエルザの言葉に頷いていた。


 ただ、ディアトロスやヌーだけは、エルザやリーシャ達とは異なり、ソフィがこの場所に強く印象を残したというその戦った魔族の事が気になっているようで、あまり仲が良いとはいえない両者がこの時、互いに顔を見合わせて小さく頷き合うのだった。


 どうやらディアトロスもヌーも、両者互いに考えている事が一致しているのだと気づいたのだろう。


(こやつのこういう昔から変わらぬ点を見るだけなら、ワシも悪い奴だとは思わぬのだがな。厄介なのは何といっても、こやつが真に信用して良いのか分からぬような態度を取り始めた事じゃ。その所為で演技なのか本性なのかの判断が難しく、下手に信頼を持ってしまうと裏切られた後の大打撃が怖い。ブラストの奴や()()()()()のような、元々『悪』だと思われておった奴が、そのまま『悪』のまま性根を変えずにこちら側についたように、こやつ自身も中途半端に印象を変える事もなく、昔のまま『残虐非道』の『大魔王』を地で行きながら、あくまで互いの利害の関係で同盟を組むだけなのであれば、何にも気にすることがなくなるのじゃが……)


 ディアトロスは自分もまた、大魔王ヌーという男が少しずつ変わっていっているという事を理解しながらも、あえて思考を進めずに停滞させる事を良しとしながら、過去の自分のヌーに対する印象と、今のヌー……そして、これから変わっていくのであろう未来のヌーの姿を比較しつつ、自分の『大魔王ヌーに対する』感想を胸中で呟くのであった。


 魔族は簡単には性格は変わらない、いや変えられないといった方が正しいだろう。その事を長く生きてきて嫌という程理解しているディアトロスは、その考え方に相反するような『存在』が出来つつある事を自覚し、今後も関わるつもりであるソフィの事を考えつつ、一種の悩みの種をヌーに見出してしまったようである。


「なぁ、ソフィ殿。ギルドっていうところに登録したらさ、俺達もここで戦えるようになるのか?」


「うむ。この闘技場そのものが『トウジン』の名物になりつつあるが、元々は『冒険者ギルド』に属する者達の力比べなどを行うのを目的とした施設だったからな。当然に今も冒険者ギルドに加入している事が出場の条件となっておる」


 イツキの質問に分かりやすく伝えるソフィであった。


「ほう……。それは参加したての新人同士でも戦えるのか?」


「いや、参加する事は新人でも勲章ランクに拘らず出来るが、戦う相手は予め決められておる。そして勝利を続けていけば、その参加したクラスのボスとなる存在と戦う事になり、そこでも勝利すれば色々と報酬が貰えるといったルールだ」


「なるほどな。別に戦いたい者同士が好きに戦えるってわけじゃないわけか。まぁそれでも面白い催しなのは間違いねぇな。それにあれだよな? 俺とこいつもこの国のギルドって奴に参加した時点である程度上のランク帯まで上げてくれるんだろ?」


「うむ。先程この国の王に尋ねてみたが、お主らも『大陸間ギルド対抗戦』に出られるところまでは上げてくれるようだからな。少し依頼などをこなしていけば、一番下のランクから始める新人たちとは比べ物にならない速度で出場も出来るようになるだろう」


 そう口にするソフィではあったが、胸中ではイツキが参加したところで、このイツキの相手になるような猛者は居ないだろうなと呟くのだった。


「そいつは楽しみが色々増えたな。別にこいつみてぇに戦闘が好きってわけじゃないが、目標に追いつく為には、やっぱ色々と意欲を高めてくれるような、そんな要素がいくつかないと続けられねぇもんな」


「馬鹿が……。たいした努力もしてねぇ癖によ、そんな一丁前な事を言う暇があったら、俺らが納得できるくれぇの研鑽を積みやがれや」


「お前はいちいち横からうるせぇな。何か俺に文句でもあるのかよ? ちょっと面白そうだなって思ったから口にしただけじゃねぇかよ!」


 毎回彼が喋るたびにヌーが横槍を入れるかのように言葉を投げかけられる為、それが気に入らないとばかりに反論するイツキであった。


「クックック、それはこやつなりにお主に発破をかけているつもりなのだろう。お主、相当ヌーに気に入られておるようだぞ?」


「なっ!? てめぇも、ワケわからねぇ事言ってんじゃねぇぞ!」


 ソフィの言葉に直ぐにヌーが分かりやすく反応するのだった。


「……まぁ、どうだっていいけどよ。俺はおれなりに研鑽を続けてるつもりだ。所詮短期間の話だろうとお前ら長寿の生物は思っているのかもしれねぇが、俺は誰よりも強くなる為に真剣なんだよ。俺は俺の手の届く範囲の奴らを守るって決めたからな。だから寿命の短い俺は効率性を誰よりも意識して重視してんだ。まぁ見てろや、近い内にてめぇも度肝を抜かしてやるよ」


「ほう? 言うじゃねぇか。なら口だけじゃなく、せいぜい結果で証明してみせるんだな」


 イツキの言葉にヌーは満足そうな笑みを向けながらそう告げるのであった。


 二人のやり取りを眺めていたディアトロスは、再び観察するような視線をヌーに向けていたのだった。


 ……

 ……

 ……

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