2285.今後起こりうる事の想定
レイズ魔国の首都『シティアス』の冒険者ギルドの建物を出たソフィ達は、直ぐにヌー達とディアトロス達の間に流れる空気が変わった事を察知するのだった。
どうやらイリーガルやリーシャ達は、単純にここで登録を行わずに余計な事を彼が口にした事に対して苛立ちを募らせているようだが、ディアトロスだけはイリーガル達とは異なる思惑のある視線をヌーに向けているようにソフィには感じるのであった。
しかしどちらにせよ、九大魔王の面々が元々ヌーに対して、良い印象を持ってはいない様子なのは疑いようのない事実であり、ノックスの世界から戻ってきた直後からこれまでは色々とヌーの見方が変わりかけていたところではあったが、結局はソフィといった一部の者達を除き、元の木阿弥と成ったわけである。
「ではこれから当初の予定通り、トウジン魔国の冒険者ギルドへ向かおうと思う。すでにシチョウからギルドの方へ連絡もいってあるだろうから、着けば直ぐにあちらでも試験が行われるであろうが、お主達はどうする? このまま我らと共にトウジンへ行くか? それともラルグに戻るのか?」
「もちろん俺は親分達と一緒に行きますよ。こいつらの試験内容を見届けておきたいところですし」
「すみません、俺はこの後シギン殿達を待たせているので、失礼させて頂きます」
「おい、ブラスト……。お前はこいつの試合が気にならねぇのか? 今後に予定されている催し上でもやり合う可能性があるんだぞ?」
「ふんっ、どうせ相手は格下の魔族なんだろ? それなら結果の分かりきっている試合だ。やり合うにしても何の参考にもならねぇだろ。そんな試合を見るより俺にはやるべき事があるんだよ」
ソフィ達と共にトウジン魔国までついて行こうとするイリーガルとは異なり、この後シギン達との約束があるといってラルグ魔国へ戻ろうとするブラストだった。
「ちっ! てめぇも相変わらず張り合いのねぇ野郎だな。まぁシギン殿との約束があるんだったら仕方ねぇか。ディアトロス殿にお前達はどうするんだ?」
イリーガルは最後に鼻を鳴らすと、その後はブラストを無視するように、ディアトロスやリーシャにエイネ達に行くのかどうかを訊ねるのだった。
「ワシは共に行くぞ。この後ソフィにも個人的な用があるしな」
「あたしはそうだなぁ、別に試験の内容に興味はないけど、六阿狐ちゃんがソフィ様と一緒に行くのは間違いないだろうし、あたしはついて行こうかな!」
「では私もついて行きましょう」
どうやらブラスト以外の者達は、全員ソフィと共にトウジン魔国の冒険者ギルドへ向かう様子であった。
「……それでは、ソフィ様。俺はこれで失礼します」
「うむ。我もお主の成長を期待しておる」
「あ、ありがとうございます!」
ソフィに挨拶を告げたブラストだったが、返ってきた言葉が彼にとって相当に嬉しかったらしく、全身を震わせながら喜びを露わにするのだった。
「まぁ、結果だけはまた伝えに行ってやる。せいぜい研鑽に励むんだな」
「ああ……頼む」
ぶっきらぼうにイリーガルがブラストにそう告げると、イリーガルの方も素直に言葉を返した後に、去り際にちらりとヌーの方を一瞥するのだった。
「ふっ、てめぇなら『三色併用』も直ぐに覚えられるだろう。次に会う時までにもう少しマシになっておけよ」
「当然だ。お前もソフィ様に迷惑を掛けるんじゃねぇぞ?」
「ちっ、うるせぇよ」
ヌーとのやり取りに満足したのか、ブラストは最後には笑みすら浮かべて『高等移動呪文』でこの場から去って行くのであった。
「アイツ、いつの間にこいつに笑みを向けるぐらい親しくなっていやがったんだ……?」
「……ですよね? 実はあたしもそれが気になっていたところです」
去り際のブラストとヌーのやり取りに、リーシャとイリーガルが顔を見合わせてそう告げるのであった。
そして再びディアトロスは『魔法』でこの場から遠ざかっていくブラストを見て、訝しむように眉を寄せていた。
(ブラストの奴もヌーに対する考え方が、これまでとはまるっきり変わっておるようじゃ。少し前までソフィの屋敷にヌーと共に居たのじゃからある程度は仕方がない事ではあるが、どうもあやつらの間には仕方なく関わっているだけの間柄ではなく、あくまで少しだけじゃが、信頼感のようなものも生まれておるように感じられた。ソフィにしてもそうだが、これは魔法などで一時的に洗脳されるよりも、よっぽど危ない状態じゃな……)
ディアトロスは今後考え得る最悪のケースを頭に過らせながら、その対策を今から少しずつ考える必要性があると判断するのだった。
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