2283.血気盛んな者達
ソフィが試験官を務めれば、自分達も主と戦う事が出来るかもしれないと期待を寄せた『九大魔王』の面々だったが、結局はギルド職員としての資格がないソフィでは、他の冒険者の登録をさせられないと告げられた事で、ガッカリと項垂れるのだった。
「……残念だな。結果が合格だと分かっているのであれば、やらせてくれてもいいのにな」
「そうですよねー! あたしも成長した腕前をソフィ様に見せたかったんですけどね」
イリーガルとリーシャは不満そうにぼやきながら、やり場のなくなった意欲をどうしようかとばかりに悩み始めるのだった。
(やらせられるわけがないでしょうに! ソフィ様に試験官などやらせたら、この建物がどうなるかは自明の理。ましてや、その相手となる者達がソフィ様の配下にして『魔王』だというではないですか! ギルド制度がどうとか、そんな事は度外視しても絶対に反対ですよっ!)
イリーガルとリーシャという二体の魔族のボヤきを聞きながら、ディネガーは胸中で本音を呟くのであった。
当然に本当ならば口に出して伝えたいところではあるが、そんな事を彼に言える筈もない為に表面上は苦笑いを浮かべていた。
「……素人意見で申し訳ないんだけどよ、ここに居る俺達全員がこのギルドに所属しちまったら『ギルド対抗戦』って催しは戦力がここに偏ってしまって、結局は詰まらねぇ催しに成り下がっちまうんじゃないか? まぁ、この催しに参加する相手側の大陸の事を俺はよく知らねぇから、実際には向こうさんにも大勢強い奴らは居るのかもしれないけどよ」
無言でこれまで話を横で聞いていたイツキは、今のやり取りと少し前にラルグ魔国で話されていた内容を合わせながら、レルバノン達も悩んでいる問題の核心を突くのだった。
「そう思うならよ、お前も俺と一緒にトウジン魔国の方に来るか?」
イツキと同様にこれまでの事の成り行きを見届けていたヌーは、イツキを自分と同じギルドで登録しないかと話を持ちかけるのだった。
「あ? そう言えば姿があるのにずっと大人しいと思って見ていたが、お前はここのギルドで登録しないのか?」
「ああ。今更、俺がこいつらと仲良しこよしで居るわけにも行かねぇしよ……。そもそもこいつらも俺と一緒じゃ気を遣って嫌だろうと思ってな。あえてここでは登録しないでおこうと決めていたんだよ」
「成程、お前も自分の事をよく分かっていやがるんだな?」
「……うるせぇなっ! それより、どうすんだよ」
レイズ魔国でギルド登録を控えた理由を告げたヌーに対して、喧嘩を売るようにそう告げたイツキにツッコミを入れつつも、彼は突き放す真似をせずに尚も同じギルドに誘おうとするのであった。
「んー……そうだなぁ、同じギルド同士になっても戦えるのか?」
悩む素振りを見せたイツキだが、どうやらヌーとは個人的に戦いたいと思っていたようで、大陸間ギルド対抗戦では同じギルド同士でも戦えるのかとディネガーに尋ねるのだった。
「い、いや……。ど、どうでしょうか? 私が見てきた過去のミールガルド大陸の対抗戦を例に挙げさせて頂くとすれば、チーム戦という事になりますので、同じギルドでは無理だと思われます。ですが、今回の『対抗戦』はまだルール等も決めている最中のようですし、個人戦という事になるならば、同じギルドでも可能……の確率も0ではないかもしれません」
あくまでディネガーは一都市のギルド長であり、両大陸の国家が開催しようとしている今回の催しに関しては、ソフィと同じ程度の情報しか入ってきていないというのが本音なところであった。
「まぁ、チーム戦なら俺と戦うのは諦めるしかねぇな。だがよ、俺と組んでこいつらとやり合うってのも面白いとは思わねぇか? こいつらは古くから、それこそ何百年、何千年とソフィの配下として世界を相手に幅を利かせてきた連中だ。それをたかだか三十年足らずしか生きて来てねぇてめぇが勝利でもしようモンなら、こいつらはみっともなくてお前に頭が上がらなくなると思うぜ? それに相当の拍が付くのも間違いねぇ」
「「なっ!?」」
「……さっきお前の言葉を聞いて、気が利くようになったと感心していたんだが、本質はやっぱり全く変わってはいないんだな。やっぱりお前とは合わないみたいだ」
ヌーの言葉に驚く者達ばかりだったが、その中でもイリーガルは殊更ヌーの発言が気にくわなかったようで、一歩前に出ながらそう告げるのだった。
「何を勘違いしていやがったのかは知らねぇが、俺は元々変わっちゃいねぇよ。それで? 気にくわねぇなら今この場で手を出してみるか?」
更にヌーはイリーガルに対して、煽るように言い放つのだった。
「……」
イリーガルは無言のまま威圧するようにヌーを睨みつけると、その右手を背に差している大刀に伸ばし始めていく。
「まぁ落ち着けよ。いいじゃねぇか、今は言わせておけばよ。ヌー殿は同じギルドじゃないんだろ? だったら、チーム戦や個人戦にしろ、やり合える機会は増えるわけだ。こんなところで相手の言い分に合わせて手を出す必要はねぇさ。だからアンタも、そんな簡単に男を下げる真似はやめときな」
「ひ、ヒノエ殿……!」
イリーガルがヌーの挑発に大刀を抜こうとしたが、ヒノエがそのイリーガルの腕を掴んで抜かせなかった。そして驚くイリーガルに『安い挑発に乗って男を下げるな』と真剣な表情で諭すヒノエであった。
「へへっ、なるほどな。こいつぁ面白れぇ事になってきたな。分かった、俺もアンタと同じギルドの方に行くぜ。やっぱり俺達はお前の言うように、何でもかんでも仲良しこよしだけじゃ駄目だよなぁ。やっぱり人生、こういうやり取りがあってこそだぜ」
そして今度はイツキが、ヌーの言葉に同意してトウジン魔国の冒険者ギルドで登録し直すとの発言を行うのであった。
「ククッ! てめぇにしては上出来だ……オイ、ソフィ! お前も聞いたな? 俺だけじゃなくて、こいつもトウジンとかいう国の冒険者ギルドに連れて行けや!」
「はぁ……。お主らは何処に行っても変わらぬのだな。分かった、我の方から『シチョウ』に連絡をしておく」
そう言って渋々とではあるが、改めてシチョウに『念話』で事情を説明する事に決めたソフィだった。
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