2279.レイズ魔国のギルド試験担当官
ディネガーは自分の執務室でソフィ達との話を終えた後、そのまま彼らを連れ立って実技試験会場に併設されている『試験担当官』の部屋へと向かうのだった。
どうやらディネガーが選ぶ試験官をソフィ達にも会わせてくれるようであった。
別に試験を行う前に担当官にあったからといって合否が変わるわけでもないが、本来は試験官を選ぶところを受験者達に見せる事はないはずであり、どうやら便宜を図るつもりはないと告げていたが、それでもやはりこの国の魔国王であったソフィに対してディネガーは、一定の忖度をしたようであった。
「ギルド長のディネガーだ。今部屋に入っても大丈夫か?」
「……え? あ、はい、大丈夫ですよ」
「どうぞどうぞ。それにしても、ギルド長が我々の待機所に来るのは珍しいっすね。何かあったんですか?」
中に居る担当官達の許可を取ったディネガーは、徐に部屋の扉を開けるのだった。
「え? そ、ソフィ様!?」
「ええ!? わ、わたし、生で初めて見た!」
部屋に居たどうやら試験官らしき女性達は、何の用だとばかりにディネガーの方を見ていたのだが、その後直ぐに後ろに居るソフィに気づき、思わずといった様子で驚きの声を上げ始めるのだった。
(ふむ……。ただ単にギルドに所属させる為だけの試験官なのであれば、同じ時間に複数人も集めずとも良いと思うのだが、それだけこの大陸にもギルド所属希望者が増えておるという事だろうか?)
ソフィはグランの町でも実技試験を受けずにギルド登録を果たした為、このようにギルドに所属させる実技試験を行う試験官が複数居る事に疑問を抱くのだった。
「出勤してもらって直ぐで悪いが『ネミア』、ソフィ様がお連れになられた方々のギルド登録の試験を担当してもらえるか?」
「え、はい、それはもちろん構いませんけど、私で良いんですか?」
「ああ。お連れの方々は相当の実力者であるらしくてな。今は『シュガー』も居らぬし、今このギルドに所属している担当官の中ではお前が一番勲章ランクも高い。是非相手をしてやって欲しい」
どうやらヒノエ達の登録試験の担当をしてくれるのは、小柄な女性の『魔族』で名前は『ネミア』というらしい。
他にもまだこの場に居ない試験官が居るようではあるが、この時間帯に勤務している職員としては、この『ネミア』が一番ランクが高い様子であった。
「分かりました、よろしくお願いします」
そう言ってネミアはソフィ達に頭を下げるのだった。
「ソフィ様、彼女は当ギルドでは相当に強い実力者で間違いありません。勲章ランクもこのヴェルマー大陸でBランクの冒険者証を持っておりますので、ギルド所属の為の試験担当者として問題はないかと存じます」
「そうか、急に無理を言ってすまぬな。ではお主、ネミア殿と言ったか? 悪いが、こやつらの試験の担当をよろしく頼む」
そう言ってソフィが頭を下げると、ネミアと呼ばれていた魔族は慌てて了承をした後に、必死にソフィの頭を上げさせようとするのであった。
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まだラルグ魔国に居る『九大魔王』の面々は姿を見せていない為、今回はこの場に居る『ヒノエ』と『六阿狐』の両名が、ギルドの加入試験を行う事となった。
相手となる担当官は、勲章ランクBの冒険者証を持っていた冒険者であり、現在はこのレイズ魔国のギルド職員を務めているようである。
ミールガルド大陸の冒険者達とは異なり、同じ勲章ランクBであっても実力は魔族である『ネミア』の方が上であろう。
ディネガーはヒノエ達の実力に半信半疑の様子であり、あくまでソフィの頼みだから担当試験官をネミアにしたようだが、実際単なる人間がこのギルドに加入しようとすれば、もう一体の方の試験担当官(元勲章ランクC)を指名していただろう。
つまりはソフィが先程抱いていた疑問でもあるが、複数の試験担当官をギルドに所属させているのには、単にレイズ魔国のギルド登録希望者が多いというわけではなく、一定以上の強さを有する者達の相手をさせる為に、ギルドが予てより特別に用意していた『存在』というわけなのであった。
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