2278.ギルド長ディネガーの色眼鏡
「いやはや、お待たせしてしまって本当に申し訳ありません」
ディネガーはようやく落ち着きを取り戻したようで、目の前に居るソフィ達の顔を見ながら改めて謝罪を行うのだった。
「こちらこそ、多忙なお主に気を遣わせてしまってすまぬな」
「いえいえ、それで今回はどういったご用件だったのでしょうか?」
前任であったレルバノンが『ギルド長』の座を退いて魔国王となった頃からは、この冒険者ギルドにもあまり姿を見せなくなっていたソフィが、このように大勢の者達を連れてギルドに現れた事である程度事情を察し始めたディネガーだったが、直接ソフィの口から事情を説明してもらおうと、背筋を伸ばしながら訊ねるのだった。
「うむ。実はこの者達をギルドに登録させたいと思ってきたのだ」
ソフィの言葉を聞いたディネガーは、そこでようやく視線をソフィから外してヒノエ達に向けるのだった。
「……こちらの方々は『魔族』ではないようですが」
ディネガーはまずヒノエを見て直ぐに人間だと判断が付いたようだが、その隣に居る六阿狐を見た時、一瞬魔物が人型を取っているのかと考えたようで、何と発言すべきかと悩んだ末に『魔族』ではない者達という表現を選んで口にしたのであった。
「実はこの者達は我の故郷の者達でな。久方ぶりに遠くの大陸から我に会いに来てくれた者達なのだ」
ディネガーには自分達が『アレルバレル』という世界から来たという事をこれまで伏せていた為、あくまで遠くの大陸にある自分の故郷という風に説明を行うのだった。
ソフィが別世界から来たという事情を知っている者は、ミールガルド大陸出身の中では『リディア』や『ラルフ』達を除けば、グランの冒険者ギルド長である『ディラック』と『おやじ』ぐらいのものであり、ルードリヒ国王である『エイル』やケビン国王すらも知らない情報であった。
「なるほど、道理で……。しかし宜しいのですかな? こちらの大陸の冒険者ギルドはソフィ様もよくご存じかと思われますが、ミールガルド大陸の冒険者ギルドと比べて少しばかり勝手が異なります。一番下のランク帯から登録が行われるとしても、討伐クエスト等々も相当に選ばなくてはならなくなるかと思われますが……」
失礼にあたらない程度にディネガーは、ヒノエや六阿狐達に視線を送ってそう口にするのだった。
どうやら彼は人間であるヒノエを見て、無意識に偏見を持ってしまったのだろう。
彼も元々はミールガルド大陸出身のギルド職員であったが、現在はこのヴェルマー大陸の多くの魔族達を毎日のように見ている『冒険者ギルド長』である。
役職が人を変えるというのはよくある事ではあるが、どうやらディネガーも多分に漏れず、意味合いが異なるが最初にソフィが告げたように、良くも悪くもこの大陸の空気に染まってしまい、色々と変わってしまったという事だろう。
「クックック、もちろんその点を理解した上で連れてきたのだ。まぁ、我が言葉で説明するよりは、実際に試験を通して確認してもらった方が良いだろう」
自信満々な様子でそう告げるソフィに、人間の実力に対して懐疑的な部分が捨てきれない様子のディネガーは渋々ながらも頷くのだった。
「まぁ、そうですな……。他でもないソフィ様がお連れになられた方々ですし、何よりギルドに登録して頂く上で実技試験をこの大陸でも当然に設けております。よろしければこちらで実技試験の担当官を決めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「うむ。我が確認して欲しいと告げた手前、あまり口出しをしたくはないところではあるが、少なくとも近々行われるであろう『大陸間対抗戦』とやらに出場が行える程度までランクを上げさせてやりたいと考えている。それを考慮して、試験を担当する者を選んでもらえると助かるところだ」
「! わ、分かりました、直ぐに選ばせて頂きます」
(さ、流石はソフィ様だ。まだ交渉の最中にある『大陸間ギルド対抗戦』の事までご存じとは……。いや、当然といえば当然か。ソフィ様は大英雄にしてこの国だけではなく、ヴェルマー大陸全土を一度は掌握したとんでもない御方なのだからな……)
ディネガーは先程ヒノエ達に抱いた考えを振り払い、改めてソフィが連れてきた大物新人という新たな意識を芽生えさせながら、ギルド登録の為の担当官を選び始めるのだった。
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