2275.シチョウ魔国王との念話
次の日の朝になり、早速ソフィは『シチョウ』に『念話』を試みる。
前回、レルバノンの元に集まった時にもシチョウや、レイズ魔国の女王シスも多忙の身である為に、その姿を見せる事はなかった。
当然にラルグ魔国王のレルバノンから、ソフィが戻ってきているという事は伝えられてはいるだろうが、こうして直接会話を行うのは久しぶりの事であった。
(ん? ソフィか……!)
上手く波長が合うだろうかと考えたソフィだが、その懸念は杞憂であったようで直ぐに『シチョウ』から反応が返ってくるのだった。
(うむ。忙しい時に済まぬな。少し時間は取れるだろうか?)
(ああ、この後にルードリヒ王家の貴族連中と話す予定はあるが、まだ大丈夫だぞ。というより、悪いな。お前が戻ってきているという事はレルバノンの奴から聞いていたんだが、今こっちも色々立て込んでいてな、じっくり話す時間が取れた時に改めて連絡しようと考えていたんだ)
(構わぬ。お主が今抱えている事の内容は、すでにレルバノンから聞いている。さっき言っていたルードリヒの貴族とやらも、お主の国の『冒険者ギルド』絡みでエイルから遣わされた者達といったところなのだろう?)
先程のシチョウの『ルードリヒの貴族と会う予定』があるという言葉に、直ぐにピンときていたソフィであった。
(その通りだ。どうやら元々はラルグ魔国とケビン王国の両大陸の交流の話が発端であったらしくてな。それに乗っかる形で、エイル王はうちに今回の話を持ってきたみたいなんだよ)
(そうらしいな。レルバノンも言っていたが、元々交流の糸口として『冒険者ギルド』を使う話はケビン王国との間で出ていたらしいが、それに先んじてエイルが一石投じてきたといったところであろう)
(難儀な話だよ。どんな思惑があっての事かまでは知らねぇけどよ、レイズ魔国の『冒険者ギルド』がこちらの大陸では中心なんだから、わざわざうちじゃなくてそっちに持って行ってくれたら助かったのによ)
どうやらレルバノンの話にあった通り、シチョウも寝耳に水だった様子で不満な様子でソフィにそう告げるのだった。
(ふむ。お主もすでにレルバノンから聞いておるだろうが、改めてその件に関しては直接我がエイルと話を行おうと思っておる。悪いがそれまでは決断を下さずに、可能な限り話を引き延ばしておいてくれ)
(ああ、全てお前に任せるよ。安心しろ、この後に会う予定のルードリヒの連中との対談も上手く誤魔化して話を進めないようにしておく。ところでよ、話はこれだけじゃないんだろ。まだ他にも本題が残ってるんじゃないのか?)
流石に付き合いが長いだけはあり、ソフィの事をよく理解しているシチョウであった。
(クックック、流石だな。実は我の知り合いを一人、お主の国の『冒険者ギルド』で登録させてやりたくてな)
(? それはうちとしても助かる話だが、別にわざわざ俺に許可を取らなくても、ギルドに登録は簡単に出来るぞ?)
(うむ……。だが、その知り合いというのが『ヌー』という大魔王なのだ。お主もレアとの戦争の一件の時に名前くらいは聞いておるだろう?)
(ちょ、ちょっと待て! そいつはお前と戦った後、牢に幽閉されていた大魔王の名じゃなかったか!?)
ソフィが大魔王ヌーの名前を出した瞬間、明らかにこれまでとは異なる反応を『念話』で見せるシチョウだった。
(安心するが良い。我と共に別世界へ渡った後は、あやつも心身共に成長を遂げていってな。まぁ、相変わらず口は悪いが、これまでのようにむやみやたらには、他者を殺しまわるような真似を心配せずとも良くなったのだ)
ソフィの顔は見えないが、その言葉からにこりと笑いながら告げているのだと感じたシチョウであった。
(いやいや、ソフィ……。これ以上、問題事をうちに持ってくるのは勘弁してくれよ。ただでさえ、ルードリヒ王家の問題で頭を悩ませているっていうのによ)
ソフィの口振りでは、その大魔王ヌーは当時よりは大人しくなったようだが、それでも何か心変わりがあった時に下手に暴れられでもしたら手に負えないだろうと、下手をすれば国が滅びてしまうとばかりに彼は懸念を抱いた様子であった。
(まぁ、何かあれば我が対処にあたると約束する。それにあやつにも良い所は沢山あるのだぞ? 敵には容赦はせぬが、一度仲間だと判断すれば、色々と世話を焼くような大魔王なのだ。少しこれまでの生活環境が悪かったせいで色々と不器用な面が目立つが、腹を割って話せば我の言いたい事はお主にも伝わる筈だ)
(まぁ……、お前がそこまで言うなら、別にいいけどよ? だからといってランクを上げるのに優遇しろとか、そういう事ならお断りだぞ? 他の冒険者達や、闘技場のボスを務めてくれているキーリ殿達にも申し訳が立たねぇからな)
(ああ、それは勿論だ。あくまでお主のギルドにあやつを連れて行って、ギルド登録をさせたいという旨をお主に伝えておきたかっただけだ)
(……だったら別に、いいけどよ)
どうやら待遇や便宜を図ってくれという意味の話ではないと理解したシチョウは、それならば何も問題はないとばかりに頷くのであった。
(それでお前達は、今日にでもトウジンに来るのか?)
(うむ。午前中に他の者達を『レイズ』の冒険者ギルドに連れていった後、昼頃になったらそちらへ向かうつもりだ)
ソフィが予定を伝えると、シチョウは何かを考えている様子で少しだけ間を置いた後に『分かった』とソフィに返事をするのであった。
(では、忙しい時に悪かったな。そういう事であるから、またよろしく頼む)
(ああ。また今度一緒に酒でも呑もうぜ? お前とは色々と話もしたいしな。それにノックスって世界で新しい嫁さんを連れて帰ってきたんだろう? 是非その話をじっくりと聞きたいところだ)
シチョウの顔は見えないが、その顔はにやにやと笑っているのだろうなと理解するソフィであった。
(クックック、お主の方こそ早く妃を見つけるのだな)
(ははっ、言い返されちまったか。それじゃあ、またな)
(うむ、それではな)
そう言ってシチョウとの『念話』を切り上げるソフィであった。
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