2273.過去の因縁
「特に持ち物等で必要なものはないが、ギルドに所属するには実技試験を受けねばならぬらしい」
「らしい……? お前もすでにその試験は受けたんだろう?」
冒険者であった筈だというのに、まるで他人事のように話すソフィに違和感を覚えたヌーは疑問を解消するべくそう問いかけるのだった。
「いや、実は我は試験を受けてはおらぬのだ。受けようとしたタイミングで『グラン』の町の冒険者ギルドに所属する冒険者に喧嘩を売られてしまってな、そいつらの相手をした時に職員が騒ぎを聞きつけて現れたのだが、色々あって指定討伐依頼の対象を連れて来る事で試験を免除するとギルド長に告げられたのだ。それで結局は指定対象であった『ベア』と直接会わせたところ、我を通して意思の疎通が図れた事で討伐をせずとも良いという事になり、依頼の取り下げが行われたと同時に、我は試験の免除と共に冒険者として認められたというわけだ」
そこまで昔というわけではないが、久しぶりに冒険者となった時の事を思い出し、ソフィは感慨を覚えるのであった。
「……そういう事かよ。まぁ俺もミールガルド大陸ですでに勲章ランクAとやらの冒険者や、ギルド長共とやり合ったからな。冒険者共の力量はだいたいは理解出来る。あんな雑魚共でも冒険者になれるなら、俺も試験は問題なく通りそうだな」
「冒険者ギルドに向かったという話は聞いていたが、お主勲章ランクAの冒険者とやり合ったのか。というか、ギルド長ともやり合ったというのはどういう意味なのだ……? まさかディラックに手を出したのではあるまいな?」
「ディラック……? 誰だよそりゃ。俺に喧嘩を売ってきやがったギルド長って奴は、確かニビシアとかいう町の冒険者ギルド長だった。今思い出しても気に入らねぇ野郎だった。やっぱ、あん時にぶち殺しておけば良かったな……!」
鋭利な牙を見せながら、忌々しそうにそう告げるヌーであった。
「ニビシア? 確かそれはあやつが……いや、それは今は良いか。その町は魔法使いの町とか言われているところだったな。それにしてもお主そんなところにまで向かっておったのか。港町で魚料理を食べてきたと言っておったからてっきり『グラン』の方に寄っていたものだとばかり思っておったぞ」
「ミールガルド大陸に渡った当初に寄った町が『ニビシア』だっただけの話だ。あの大陸で唯一遠くからでも『魔力』を感じ取れたのが『ニビシア』だったからな……。つか、てめぇの所為でとばっちりを受けたんだよ、その『ニビシア』のギルド長がルビアとか言う冒険者の兄貴とか抜かしやがってよ、俺がてめぇと知り合いだと分かった瞬間に手下共を俺に仕向けてきやがったんだ。殺されたくなかったらテメェの居場所を言えとかいいやがってよ。クソ雑魚のせいでイキりやがって……! 今思い返しても腕の一本くれぇは取っとくべきだったぜ」
「何と、あやつの兄がニビシアの冒険者ギルド長だったというのか。なるほど、確かにそれならば我を恨んでいてもおかしくはないか。しかしそれ程までに恨んでおるのであれば、正面切って我に文句を言ってくればよいものを何故わざわざお主を狙おうとしたのか……」
「それはてめぇがラルグ魔国の王だったからだろ。流石にあの程度のゴミ屑共なら、一国の王を相手に表立って手出しは出来ねぇだろうよ。まぁ実力もねぇ癖に、口だけは一丁前に報復だの何だのと偉そうに宣っていやがったがな」
どういう経緯でヌーがニビシアのギルド長と面識を持ち、そこまで深い話を行うに至ったのかが気に掛かるソフィだったが、それよりもルビアに兄がおり、まさかその兄がニビシアのギルド長を務めているという事に驚いたソフィであった。
(ニビシアはケビン王国領の町のギルドだったな……。つまりは今後両大陸での交流を図る以上、避けては通れぬだろうな……)
思いもよらない話が飛び出した事でソフィは、色々と今後について再び、レルバノンとも話をしなくてはならないだろうなと考えたのであった。
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