2264.カーネリー商会の護衛を担う者達
「おかえりなさい、ソフィ様。そして皆様も」
他の魔物達を代表してベアが、真剣な表情を浮かべているソフィ達を出迎える言葉を告げる。
「ああ、留守中何もなかったか?」
「ええ、普段通りに何もなく、静かなモノでした。ミールガルド大陸に行かれていたのですよね? 何か変わった事はありませんでしたか」
にこやかに会話を続けながらも、ベアは先程のソフィの顔を見た事で何やら自分達に話があるのではないかと察して、話しやすい空気を作るのだった。
「うむ。ヌーに港町のコーダにある食事処を紹介してもらったのだがな、そこで食べた魚料理が格別だった。特に『ショーユ』という見た事がない調味料を掛ける事でさらに美味しさが増してだな――」
嬉しそうな表情に変わったソフィの言葉に、満足そうに相槌を打ちながらベア達はじっくりと話を聞き始める。
『ショーユ』の話から『カーネリー商会』の話になり、その商会の主がグランに居た露店の『おやじ』だったのだとソフィは説明を行い進めていく。
やがてヌーも交えながらの会話も一区切りし、一呼吸置いた後にソフィは意を決したかのように本題を口にし始めるのだった。
ソフィの口から切り出された本題の内容は、当然に『カーネリー商会』の護衛の件であり、その為に必要な『階級進化』の話もベア達に行われていく。
ソフィが全てを話し終える頃には、庭に居る配下達は、皆一様に驚きと興奮が入り混じったような表情を浮かべていた。
「わ、我々の種としての『クラス』を押し上げる……。そ、そのような事が出来るのですか!?」
「本来ならばお主らを生み出した魔王のみが可能なこの『魔』の技法だが、我の『名付け』をお主らが受け入れた事でこの『魔』の技法の主導権が我に移ったのでな。お主らに関してだけは『進化』が可能となったのだ」
「おお……!」
そのソフィの言葉に驚きの声を上げる配下達だったが、ベアだけは少し他の配下達とは異なる表情を浮かべていた。
「そ、その『階級進化』の恩恵は私も受けられるのでしょうか……?」
「む? どういう事だ?」
『階級進化』がどういったものかの説明はすでに行っているソフィは、何故ベアからそんな疑問をぶつけられたのかが分からずに訊き返すのだった。
「いえ、ハウンドやキラー達は、前回ソフィ様から『名付け』を行って頂き、魔物の種としてのクラスアップを果たしておりましたが、この私がソフィ様から名を与えてくださった時、確かに力などは大幅に上昇を行って頂きましたが、私のクラス自体が変わらなかったもので、もう私ども『アウルベア』はこれ以上の進化は不可能なのではないかと思いまして……」
「ああ、そういう事か。心配せずとも『階級進化』を行えば、お主も今の形態から進化をするのは間違いない。前回の『名付け』で『ロード』となった者達は大幅な戦力値上昇により、その形態のクラスで収まらなかった事によって、結果として進化に至っただけに過ぎぬのだ。今回お主に我が『階級進化』を齎せば、まず間違いなく『名付け』の時よりも遥かに強さは増す。つまり今回はお主も確実に進化が起きる。そして強さの限界上限値もこれまでとは比べモノにならぬ程に高くなる筈だ。そこからはお主の研鑽次第だが、まず間違いなく最終進化形態の上限に至る事が出来れば、お主も充分に『大魔王』と名乗る事が出来る程になるだろうな」
大魔王ソフィから直々に『名付け』が施されて、更に『階級進化』によって種としての最終形態に至れば、そこに待つのは新たな『大魔王』の誕生と言えるだろう。
魔族でない為に『大魔王』と呼ばれる立場になったとしても、新たに魔物を生み出す事などは不可能だが、それでも使役される側であった魔物の立場からの脱却を意味するといっても過言ではないだろう。
――戦闘に於ける『戦力値』という意味では間違いなく、多くの魔族達の至る『魔王』の強さを上回る事になるのだから。
「最初に言っておかなければならぬ事だが、今回お主らに『階級進化』を施せば、まず間違いなくこれまでとは大きく異なる強さを手にする事になる。あくまでお主らを強くするのは『おやじ』達の護衛の為だ。それを忘れてはならぬぞ」
ソフィの言葉に魔物達は、当然だとばかりに大きく頷くのだった。
「……まぁ、お主らであれば何も問題もないであろうが、一応は伝えておかねばな。それと、階級進化が行われたからといって、直ぐに成長限界となる上限値まで高められるわけではない。せっかく強さの上限の幅が広がるのだ。幾許かは戦力値も増すであろうが、それはあくまでオマケだと思う事だな」
「分かりました!」
「「ワオーン!」」
「「――」」
ソフィは庭に居る配下の魔物達の返事に頷くと、この後の『階級進化』の為に『魔力』を高め始めるのだった。
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