2262.ソフィは決心を固める
「しかしこれだけの商才が有るのならば『おやじ』が勲章ランクAとなって、ヴェルマー大陸に来る事になるのも存外に直ぐかもしれぬな」
ヌーに過多と呼べる程に『ショーユ』をかけられた刺身を口に含みながら、ソフィは感慨深そうに告げるのだった。
しかしそんな独り言に近いようなソフィの呟きに反応したのはヌー達ではなく、他の客がいなくなった事でソフィ達の話に熱心に耳を傾けていたこの店の店主だった。
「確かに『カーネリー商会』は出来たばかりとは思えない程に優秀な商会であるが、そのあまりの躍進ぶりに他の商会や、割を食った一部の商人たちから目の敵にされ始めている。そんな連中の妨害もこれからは盛んになる事が俺達のような一般的な商人でも十分に予測が出来る。そもそも勲章ランクAになる事自体がとても難しい事なんだ。そんな直ぐに上手く行くと安易には、考えない方がいいかもしれないよ」
ソフィに現実を伝えるかのように、優しい言葉で諭してくるこの店の店主だった。
「ふむ、確かに妬みや嫉みというのは非常に厄介なものだ。おやじ自身は昔からのベテラン商人なのかもしれぬが、商会自体は最近出来た一商会に過ぎぬ。他の商会の人間たちからすれば、突然に出来た商会の目覚ましい躍進を面白くないと考えて行動を起こす者が居ても何らおかしくはないな……」
そこでソフィは『おやじ』を守る為の『護衛』の話を思い出すのだった。
「どうしたの、ソフィ?」
ソフィが呟きの最後の方に何かを思い出すような表情を浮かべた事で、目聡くそれに気づいたリーネが尋ねてくるのだった。
「いや、そう言えば『おやじ』に『護衛』を付けようと考えていたのだが、レルバノン達との一件ですっかり忘れていたのを思い出したのだ。しかし今の話を聞いて『おやじ』個人に対して『護衛』をつけるのではなく、商会そのものを守れるような『護衛』たちが必要かもしれぬな」
他の商会からの妨害行為から守る為にも『護衛』は必要かもしれないが、それ以上に今回の事を抜きにしても、今後に上手く勲章ランクAとなった暁にソフィ達の大陸に来るという事であれば、ヴェルマー大陸の魔物達から襲われても平気なような強い『護衛』を商会そのものにつける必要があるだろう。
そう考えたソフィは、屋敷の配下の魔物達の事を考え始めるのであった。
(かつてのシーマ達の襲撃に始まり、キーリたち龍族の襲撃にレア達『レパート』の世界の魔族達の襲撃に至るまで、配下の魔物達には非常に救われてきた。あやつらはすでに強い魔物達と呼べるが、それでもヌーを襲撃したような魔族達と同様の強さを持つ者が、万が一に『おやじ』を襲おうと画策すれば、とてもではないが守り切れぬだろう。すでにベアは『魔王領域』ではあるが『ロード』の者達はまだ『最上位魔族』程度に過ぎぬ。今後の事を考えて、ここらで屋敷に居る配下の魔物たち全員を『大魔王』領域にまで引き上げておくべきかもしれぬな)
これまでソフィは、この世界出身の魔物達には、あまり干渉を行わないように気を付けていた。何故なら、この世界の魔物達を生み出した『魔王』の存在が分からなかった為である。
――しかし、今はもうこの『リラリオ』の世界の原初の魔族の存在をソフィは知っている。
ベア達を生み出したのは十中八九、大魔王『レキ』で間違いないだろう――。
もちろん今もソフィは、レキの生み出した魔物達に進んで干渉を行おうとは考えてはいないが、それでもベアや『ロード』といった屋敷の配下の魔物達は、すでにレキではなく『ソフィ』に忠誠を誓って共に付いて来てくれたのだ。
そんな配下達に報いる意味も兼ねて、今回のカーネリー商会の護衛を行う為にソフィは、とある決心をするのだった。
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