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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
交差する思惑編

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2253.ディアトロスの提案

 ディアトロスが本題に入った瞬間に、これまで各々が喋っていた『九大魔王』の面々は、その全員の声がピタリと止み、誰もがディアトロスの話す内容に耳にを傾け始める。


 ソフィの魔王軍最古参の『九大魔王』であるディアトロスが醸し出す厳かな雰囲気は、流石と言わざるを得ないものであり、部屋には緊張感が張り詰めていた。


「お主らも知っての通り、ワシはこの世界に来て直ぐにソフィの奴の後を継いで、この国を含めたヴェルマー大陸の相談役に就いておる」


 このヴェルマー大陸の相談役という立場は、かつてソフィがラルグ魔国王の座を退いた後、どうしてもソフィの威光を示し残したいと考えたレルバノンが、ソフィに頼み込む形で提案を持ちかけて創られた役職である。


「そこで最近得た情報なのじゃがな、近々ミールガルド大陸と交流を深めるという意味で一つの催しが開かれる予定となった。その催しが各国の『冒険者ギルド』を通した『()()()()()()()()()』というものじゃ」


 この場に居る者達は、ディアトロスの話す『冒険者ギルド』というものを直ぐに理解出来た者と、全く出来ない者で分かれたが、それでもその後の『対抗戦』という言葉で大体の予想を付けられた様子であった。


「こちらの世界の魔族の大陸と人間達の大陸は、我々アレルバレルの『魔界』と『人間界』と似たようなモノという認識を持っていましたが、そういった種族が違う者同士、更には別々となる大陸間での協議が行われるだけでも随分と異なっているようですね」


 そうディアトロスに向けて話したのは、先程までより随分と顔色が良くなり始めた『エイネ』であった。


「少し前までは戦争を起こしていたようじゃが、我々が来る少し前に諸々の解決をソフィが図ったようじゃ。この国の王を務めておったのも、国交正常化を図る上で必要な事だったと言っておったしな。まぁ、無事にそれも済んだと判断して、直ぐにレルバノン殿に後を託したようじゃ。そもそもあやつは『アレルバレル』の統治が本題であるからな、この決断は当然と言えば当然でもあるが」


「流石は親分だな。しかしディアトロス殿、その『対抗戦』という催しが行われる事は分かりましたが、それをこの国の……というより、この世界とは関係がない俺達に話す理由は何です?」


 あくまでこの場に居る『九大魔王』達はソフィと共に在りたいと考えて、一時的にこの世界に渡った者達である為、大陸の相談役の座に居るディアトロス以外には、冒険者ギルドを含めて全く関係がない為に、大陸における国家間の会議の内容を告げられた理由が分からないとばかりに、イリーガルは疑問を口にするのだった。


「うむ。イリーガルよ、まさにお主の意見は尤もなものじゃ。ワシらはこの世界の住人でもなければ、冒険者でもないのだからな」


「……しかし、ディアトロス殿が俺達に告げるという事は、何か理由があって然りなのは間違いない。そうなのでしょう?」


「もしかしてですけどぉ、あたしらにもその『大陸間ギルド対抗戦』に、冒険者として参加しようって話じゃないですよねぇ?」


 リーシャは自分で言ってて有り得なさ過ぎるとばかりに、笑みを浮かべるのだった。


「そのまさかじゃ。ワシを含めてお主ら全員には、ソフィがフルーフとヌーの戦いを見届ける為に『アレルバレル』に向かう間に、全員がヴェルマーにある冒険者ギルドに所属してもらい、そして対抗戦が始まる期間までに指定のあるランク帯まで勲章ランクを上げてもらう。そうじゃな、ひとまず全員が間違いなく参加を行えるように、少なくとも勲章ランクBぐらいまでは上げてもらいたい」


「「は!?」」


 冗談のつもりで口にしたリーシャだけではなく、エイネやイリーガル、更にはよっぽどのことがない限り、動じる様子がないブラストでさえも驚きの表情を浮かべるのだった。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! あたしらはそもそも冒険者ギルドっていうのが何なのか分かってすらいないんですよ!? そ、それに何であたしらがそんな面倒……、いや、関係のない催しの為に、ワケの分からない組織に入らないといけないんですか!」


 危うく本音が出かけたリーシャだったが、何とか言い直しながら思っている事をディアトロスに伝えたのだった。


「ふむ。今すぐに分かりやすく理由を説明するとすれば、お主らが今以上に強くなる為に必要だとワシが判断したからじゃ。先程ワシがエイネにエヴィに『念話(テレパシー)』を送れと口にしたのも理由を分かりやすくする意味の一つだったのじゃが、もうワシらは自分達が『アレルバレル』の世界の強さの上位に居るからといって、それが全世界の強さの上位に位置するとは限らぬという事を知った筈じゃ。そしてソフィの奴もレルバノン殿からすでに、この『対抗戦』の催しの説明受けておる事だろう。あやつの性格上、このような催しと無関係で居る筈はない……。つまりもうワシの言いたい事はお主らにも伝わったじゃろう?」


 彼らを試すような視線を向けながら、ディアトロスはそう告げた。


 ソフィは強者が自分の前に現れる事を何よりも望んでいる。そしてイリーガルやブラスト達も、そんな主であるソフィの願望の事を理解している。それは単に恩義というだけではなく、この魔王軍に属するにあたり、いつか必ず強くなってソフィを倒すと、まさに契約代わりと言えるような約束を行った者も居る。


 そんな彼らであれば、ソフィという自分達の主が何を望んでいるのか。そしてディアトロスが何を言いたいかを直接口にされずとも、理解出来るのは当然と言えるのだった。


(確かに俺達が強さの上位に居たのは、もう過去の事と言えるだろう。ノックスの世界から来たヒノエ殿は、確実に今の俺より強い。そして親分が望めば、ヒノエ殿も対抗戦に出る事になるだろう。まだはっきりと出場すると決まったわけではないが、親分がこの話をレルバノン殿から聞かされた時点で彼女らにも伝わっている筈だ。その時、俺と同じように親分の事を理解しているであろうヒノエ殿もまた、参加を決めるのではないだろうか、いや、そうだと考えて準備を進めておくべきだろう)


 今初めてディアトロスから聞かされた話である以上、まだ何も決まっているというわけではないが、可能性の一つとして捉えて準備を行うのは何も間違ってはいない。


 そして誰よりもディアトロスという『九大魔王』の智謀が、今後自分達の為になると言い切った以上は、信憑性という面でも他の者が口にするのとは比にもならない。


 イリーガルはそう考えて、冒険者ギルドに所属する決意を固めるのだった。


 更にはブラストもまた、この催しの参加に前向きであった。


 彼もまた、ノックスの世界から現れた『シギン』と『神斗』という自分より遥か先に居る『魔』の概念理解者から教えを乞う身である。そんな彼が今後自分の成長を実感するという意味でも『大陸間対抗戦』は渡りに船だと考えたのだ。


 リーシャとエイネは『イリーガル』と『ブラスト』程までに参加に意欲を示しているというわけではないが、それでもエイネは先程の耶王美の視線に思うところがあったのは事実であり、自分は『九大魔王』の一員だという自負もある。そうである以上は参加の意志を見せるのもおかしい事ではなかった。


 そしてリーシャは、そんなエイネよりも更に『大陸間対抗戦』に興味があるわけでもなかったが、主であるソフィが望むのであれば出ても良いかという程度ではあるが、一応はこの時点でも参加する事を考えていた。


(まぁ、イリーガル様もブラスト様もその気みたいだし、エイネさんもあの感じだと出るって言いだしそうだしねぇ? それに、六阿狐ちゃんと戦ってみたいっていう気持ちもあるし、今度六阿狐ちゃんにも詳しく話を聞いてみようっと!)


 最後にはディアトロスの考えていた通りに話は進み、ひとまず『大陸間対抗戦』の話と、参加させる意図を話し終えたディアトロスであった。


 ……

 ……

 ……

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