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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
交差する思惑編

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2251.それぞれの思惑

 ソフィ達が立ち去った後、朱火(あけび)は意識を失って倒れているラルフをさも当然のように抱き抱え始める。


 どうやらソフィが立ち去る瞬間にラルフを一瞥した後に朱火の方に視線を向けた事で、どうやら『お主に後の事を任せる』という言葉無きソフィの思いを受け取ったからだろう。


 何も説明せずともソフィがここに来た時から、彼はラルフの元に常に傍に居る朱火の様子から、色々と感じ取っていたようである。


「では、私も失礼しますわね」


 そう言って朱火はラルフを抱えたままでこの場所を去ろうとしたが、その朱火の肩を紅羽(くれは)が背後から掴んで止める。


「おい、てめぇだけ自由にはさせねぇよ。お前はそいつを連れて俺と一緒に憎僧(サイヨウ)の元へ向かうんだよ」


「……サイヨウ殿は今回指示に従えば、好きに散歩をさせてくれるとのお話でしたわよ?」


「ああ、言っていたな。だが、誰もそいつを連れて行って良いとまでは言っていないだろう? これ以上勝手な真似はするな。今の憎僧の精神を考えて面倒な事をこれ以上起こせば、また昔みたいな待遇に戻されるかもしれねぇ。私もお前の勝手で巻き込まれたくねぇからな。それによ、そいつはあのソフィ殿の大事な配下だ。何かあったらそっちの方が色々と厄介な事になりそうだからな、ここは是が非でも止めさせてもらう。お前も勝手な事をして、()()()殿()()()()()()()()()()()()()?」


「!」


 サイヨウの方の話は朱火も不満そうに聞き流していただけだったが、効果がないと判断した様子の紅羽が最後にソフィの話題を出したところ、直ぐに朱火は()()()()となって諦め顔を浮かべ始めるのだった。


 どうやらいつも強気でどんな相手であっても、恐れを知らぬように飄々としている妖狐『朱火』であっても、ソフィだけは例外のようで効果覿面(こうかてきめん)の様子だった。


「ま、まぁ私も意識を失っているラルフ様の容態を診ようとしていただけですからね、安静にさせるという意味ではこの城の部屋の方が良いかもしれませんね」


 ラルフを連れ去ろうとしていた『朱火』の意味がよく分からない、まるで取ってつけたようなそんな言い訳に、紅羽も『相当にこれはこいつも狼狽しているな』とほくそ笑む様子を見せるのだった。


「……どうやら話は纏まったようだな。俺としては直ぐにでも研鑽を再開したいところだが、まずはサイヨウに事情を説明しに向かった方が良いだろうな」


 朱火と紅羽のやり取りを横で聞いていたラルフは、少し研鑽が続けられない事に残念そうな表情を浮かべた後にそう告げるのだった。


「おい、お前もそんな顔してんじゃねぇよ。憎僧にラルフを預けた後は私がまた相手してやるからよ」


 どうやらリディアの不貞腐れたような顔を見て、まだ物足りないのだろうと察した紅羽は、リディアにそう口にするのだった。


「……お前がそう言うなら、遠慮なく協力してもらうとするか」


「おう」


 どうやらこの二人もラルフと朱火達のように、それなりに親しい関係を築けて絆を深めている様子であった。


 ……

 ……

 ……


 中庭でリディア達がそんな会話を繰り広げていた頃、ディアトロスは同じ『九大魔王』の面々を部屋に集めていた。


 その面子の詳細は、イリーガル、エイネ、リーシャ、ブラスト、そしてディアトロスの五体だった。


 どうやら顔を見せに来ただけであったユファは、すでにラルグ魔国を後にしている為、声を掛ける事をしなかったようである。


「ディアトロス様、我々を一挙にこの場に集めようとされるくらいですから、相当に重要なお話があるのでしょうけど、ユファさんは仕方がないにしても、何故同じ場所に居る筈のエヴィには声を掛けなかったのですか?」


 そうディアトロスに問いかけたのは、リーシャと共にこの部屋に招かれた『エイネ』であった。


 どうやら各々が色々と用事を抱えているところに、ディアトロスが強引に召集を掛けた為、僅かでも不満を抱く者達の事を考えたエイネが、先に自分が訊ねる事で少しでも彼らの不満を減らそうと考えて矢面に立ったのだろう。


「ああ、うむ……。別にエヴィだけ呼ばなかったわけではないのじゃがな? あやつに『念話』で呼び寄せようとした瞬間に、あやつとの波長が合う前に『念話』を強引に切られたのじゃ……。その後にあの部屋に居る耶王美殿から恐ろしい形相で睨まれてしまってな。どうやらあの部屋にエヴィも一緒に居るようじゃが、共に居る時間の邪魔をするなと警告されてしまったようじゃ」


「……そうですか。しかし我々を全員集める程の重要なお話なのでしたら、ここは無理にでも誘うべきなのではないでしょうか?」


 簡単に引き下がらない様子を見せるエイネに、ディアトロスは渋々と口を開いた。


「ではエイネよ、お主が代わりに今すぐエヴィの奴を呼び寄せてみるか? その瞬間にお主もワシの気持ちを理解するじゃろうよ」


「はい……? 仰られる意味がよく分かりませんが……」


「試しにエヴィに『念話(テレパシー)』を送ってみるが良い。ワシが呼んでおるからと伝えて構わぬぞ」


「どういう意図があっての事かは分かりませんが、そう仰られるのでしたら……」


 何故そんな事をさせるのか本当に彼女は分からなかったが、言われるがままにエヴィに『念話(テレパシー)』を送り始める。


 ――しかし、直ぐにエイネはディアトロスが伝えたかった思惑を知る事となるのであった。


「! ()――っ、()()()()!?」


 次の瞬間、突然にエイネは両手で胸を押さえながら、苦しそうにその場に蹲り始める。


「「エイネ!」」


「エイネさん!?」


「……」


 ディアトロス以外の部屋に居る全員が、慌ててエイネに声を掛けたが、当の本人はそれどころではないとばかりに、脂汗を額に浮かべながら荒い息を吐き続けるのだった。

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