2248.意を決してソフィと会話をする妖魔達
「それでお前達、いつまで陰でこそこそと眺めているつもりだ?」
ソフィに決意を口にしていたリディアは、ソフィとの会話に一段落したと判断すると同時、中庭の奥の方からこちらに視線を送っている『紅羽』と『朱火』に向けてそう言葉を投げるのだった。
当然にソフィも彼女達がここに居るという事には気づいていたが、どうやらリディアも存じていたようである。
リディアに視線と言葉を投げかけられた紅羽達は、おずおずといった様子でソフィ達の前に姿を見せ始めるのであった。
二人が姿を見せると、リディアは溜息を吐いた後に口を開いた。
「急に姿を晦ましたかと思えば、物陰からこっそり眺めやがって。戻ってきたなら、何故直ぐに声を掛けなかった?」
「ちっ、うるせぇな……。こいつがちょっと情緒不安定だったから、様子を見に行ってやってたんだよ。ここに戻ってきたらお前らが戦っていたからよ、邪魔しちゃ悪いだろうと思って気を遣って遠くから眺めてやってたんだ」
リディアは『紅羽』が自分の目を背けながら喋っているところを見て、直ぐにこいつは本音で喋っていないと気づいたが、別にその事に関して追求する真似はしなかった。
代わりに言い訳を口にした紅羽ではなく、心配そうにラルフを見ている朱火の方に彼は視線を向けるのだった。
「コイツの事が心配か?」
そうリディアが朱火に声を掛けると、じっとラルフを見ていた彼女もリディアの方に視線を向けて頷いた。
「安心しろ。魔力枯渇を起こして一時的に意識を失っているだけだ。それにソフィがさっき『魔法』で回復もさせたようだしな。万が一にも命に別状はないだろう」
リディアがラルフを心配そうに見ていた朱火を安心させるようにそう告げると、リディアに返事をする様子もないままに、朱火は今度はソフィの方に視線を送り、そこでソフィと目が合った瞬間に全身を震わせながら、慌ててその視線を逸らすのだった。
流石に自分を見て怯えるように視線を逸らす朱火に対して、ソフィも気になった様子で眉を寄せ始めた。
「む? お主にそのような態度を取られるような事を我はしたであろうか……?」
このままそっとこの場を去るまで気配を押し殺そうと考えていた朱火は、流石にソフィに声を掛けられて無視するわけにもいかず、顔を青くしながら再びソフィの方を向くのだった。
「あ、い、いえ、そのような事は決して……――」
「こいつはな、リディアやラルフと戦っている時のアンタを直に見ちまったからさ、アンタに怯えちまってんだよ」
可哀想になるくらいにしおらしくなった朱火が、何とか口を開きかけたのだが、言葉を言い終える前に隣に立っていた紅羽にいつものような軽口を吐かれてしまい、内心では直ぐに紅羽に言い返したいと考えた朱火であったが、今も尚自分達に視線を向けているソフィが居る手前、どうする事も出来ずにその場で紅羽を睨みつけるに留めるのであった。
「ふむ、そういう事であったか。実は我もリディアやラルフに対してもう少し異なる模擬戦を行うつもりだったのだが、二人とも我の想像を遥かに越えて強くなっていたのでな、少々やり過ぎてしまった。特にラルフに関しては、完全に力加減を誤ってしまった。こやつにも申し訳ない事をしてしまったな」
そう言ってソフィは、安静にする為に地面に寝かせているラルフを見ながらそう告げるのだった。
「さっきよ、アンタが二人に対して使った『魔瞳』は、確かにすげぇモンだったな……。ラルフの奴が使った魔瞳は私らも過去に妖魔召士の連中が使っている奴だったと記憶しちゃあいるが、アンタの使った魔瞳は見た事も聞いた事もなかった。そんで見て直ぐにやべぇって思ったよ。こいつじゃねぇけど、確かにビビって全身震えちまうのも理解が出来るってモンだ」
ソフィが先程放ってみせた魔瞳について、興味深そうに訊ねた紅羽は、隣に居る朱火を例に挙げながらそう口にするのだった。
彼女が少しも笑っていないところを見ると、紅羽もいつものように朱火を揶揄うつもりで例にしたわけではなく、あくまでソフィから魔瞳について詳しく話してもらおうと考えて、続きの話を引き出すために朱火を利用した様子であった。
その事を理解している朱火は少しだけムっとした表情を紅羽に向けたが、結局は何も言わずに彼女もソフィの方に視線を戻し始めるのであった。
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