2244.親を想う子の心情
驚いた表情を浮かべていたリディアだが、開口一番にソフィに訊ねたところをみると、この不可解な出来事の全ては、自分も扱う事の出来る『魔瞳』の効力の所為だろうという考えに至っているようであった。
「ふむ……。確かに我はお主の剣技の連携に舌を巻き、高揚感に包まれながら『魔瞳』で打ち消そうと考えて『金色の目』を発動しようとしたのだが、これまでの『金色の目』の魔瞳の力とは異なる効力が生じてな、我も理由が分からずに驚いておったところなのだ。確かにお主の魔瞳で我は動きを止められたように思うが、そうかこれは『支配の目』を無意識に我も扱ったというわけか……」
リディアに新たな『魔瞳』の名を出された事で、ソフィは無意識の内に『金色の目』を使おうとして、リディアの『魔瞳』を見た事が原因で無意識の内に影響されて使ったのかもしれないと告げた。
「お前……。そんな簡単に俺の『魔瞳』を使えるわけが、いやお前ならあり得るか……?」
かつてレキに使い方を教わった時、リディアは膨大な時間が掛かったのを思い出して、こんな直ぐに、それも戦いの中で使えるようになったと口にされた事で、納得出来ずに反論しようとしたが、そこで相手がソフィなのだという事が頭にちらついてしまい、こいつなら有り得るかもという結論に至った様子であった。
(いや、待てよ。俺の先祖の師をしていたというレアの奴は、この魔瞳は『魔人族』しか扱えないものだと言っていた筈だ……。こいつは自分で『魔族』だと口にしていた。種族が違えば使えない『魔』の概念技法が存在するとエルシスの奴も言っていた筈だ。俺が『紅』というオーラを纏えない理由と同じで、こいつも『支配の目』は使えない筈、何故使えやがるんだ……?)
ソフィが実際に自分の『支配の目』と似たような効力を齎した事で、一度は『信用するしかない』という結論に至ったリディアだが、この『魔瞳』は魔人族だけが限定的に扱う事を可能とする『魔瞳』だと教えられていた事を思い出して、種族そのものが異なるソフィが自分と同じ『魔瞳』を扱える筈がないと再び思い直すのだった。
「まぁ、我が使った『魔瞳』がお主のモノと同一なのかどうかは分からぬが、今はそんな事はどうでもよい。もう一度、仕切り直しといこうではないか。先程のお主の連携攻撃は確かに我の元に届いていた。あのようなモノを使ってしまった後で我が言うのもおかしいが、今度は我は魔瞳を使わずにお主の剣技を捌いて見せる。さぁリディアよ、構え直すがよいぞ」
そう言って高揚感に包まれている様子で、今度は『三色併用』を纏い始めるソフィだった。
どうやらリディアが自分の想像以上に、目覚ましい成長を遂げていると判断したようで、相当に嬉しそうな笑みを浮かべながら構えを取るのだった。
「ふんっ、お前はそういう奴だったな。だから俺はお前を認めてやったんだ」
そしてそんなソフィに応えるかのように、リディアも『スクアード』を使い、両手に『二刀の金色』を纏い直すのだった。
「ふふ、我が主にあのように嬉しそうな顔をさせますか。流石はリディアですね。見事と言わざるを得ませんが、それでも私も置いて行かれるわけには参りません。この一戦の後は私もソフィ様に研鑽の末に会得した技の数々を見て頂く事にしましょう」
リディアとソフィの模擬戦を見届けながら、ラルフもまた気後れを一切することなく、それどころか自身の意欲を高め始めるのであった。
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「お、おいおい! 今の見たかよ、朱火!?」
「……ええ。もう疑いようがございません。間違いなく、あのソフィ殿は耶王美が言う通り、お父様と戦って勝利を収められたのでしょうね。今の『魔瞳』一つとっても、認めざるを得ないでしょう」
中庭から少し離れた場所から勝負を見ていた『紅羽』と『朱火』は、どうやらソフィの『魔瞳』の影響外であったらしく、あの中庭の止まった世界の外側から観察を続けた末、自分達ではどう足掻いてもあの『化け物』に勝てる筈がないと判断した様子だった。
「鬼人の私は『魔』の概念に関してお前より理解が及んでいねぇのは間違いねぇが、それでも今のを間近で見て、その脅威を理解出来ない程に戦闘経験は浅くねぇつもりだ。あんなモン……、対峙する戦闘の中で使われて勝ち目があるわけがねぇ。ソフィって奴が一体どれぐらいの戦力値を有しているのかは知らねぇが、今見せた魔瞳一つとっても『化け物』さ加減が知れるってモンだ。今もさっきより戦力値を高める『オーラ』を纏っている様子だが、多分アイツの本気はあんなモンじゃないんだろうな」
『三色併用』を纏っている今のソフィを見て、直ぐにあれはアイツの本気じゃないと、たった一つの『魔』の概念技法を見た事で断言してみせた『紅羽』だった。
「へへ、お前強者が好きなんだろ? ソフィ殿には好意を寄せたりしないのか?」
「ご、ご冗談を。あんな『化け物』の傍に居れる筈がないでしょう? も、もう充分に好意より、恐怖心を抱きましたわよ……」
そう話している今も全身に震えが走っている様子であり、口に出している言葉にも動揺が見て取れた。
しかしそう紅羽に答えている朱火だが、同時に違う事も考えていたのだった。
(本当に耶王美が言っていた通り、長年の願望をアイツに叶えて貰ったらしいな。良かったじゃねぇか、なぁ、親父……?)
ソフィの存在を間近で確認した『妖狐』の『朱火』は、怯えながらも胸中で自分が認めている父親である『王琳』の長年の願望が、その決して叶えられないだろうと親子で考えていた『願望』が、目の前に居るあの『化け物』に叶えられた奇跡を理解して、良かったとばかりに泣き笑いをするような表情を浮かべるのだった。
――どうやら子としての朱火は、何だかんだと表向きは口にしていても、親である王琳の叶えられた願望に対して、素直に喜んでいる様子であった。
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