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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
交差する思惑編

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2223/2251

2205.かつて妖魔山で頂点に居た者同士の再会

「やれやれ、とんでもない事態を引き起こしたものだな?」


「し、シギン様……。いやはや、これは申し開きも出来ませぬ……」


 現れたシギン達を見たサイヨウは、直ぐに頭を下げて謝罪をするのだった。


「謝罪を私にしても仕方なかろう……。しかしまぁ、お前にヌー殿を任せた私にも責任はある。それにひとまずはその件は置いておくとして、この騒ぎを収める事を優先せねばならないだろう。有難い事にすでにソフィ殿も動いてくれて、ヌー殿やテア殿達の方を納めてくれているようだ。後はお前達さえ矛を収めてくれれば助かるのだがな……?」


「分かっております。元はと言えば小生がやられそうになった事で、こやつを使役せざるを得なくなっただけでして、戦う必要性がなくなるのであれば、今直ぐにでも……」


「ふふふふっ、此度はまことに残念だった。お主らが余計な真似をせず、もう少し後から出てきてくれていれば、私も本来通りの『力』を取り戻せたものをな」


 あまり残念そうに思っていないように感じられる声色で、現れたシギンと神斗を視線に捉えながら、真鵺はそう話し出すのだった。


「君が妖魔召士の『式』になって別世界に居た事には驚きだけど、力を制限させられると分かっていて、何故『妖魔山』から離れたのかな?」


「神斗、その話は事を収めて落ち着いてから、改めてゆっくりと話そうではないか。私も今はソフィ殿の顔を潰すわけにはいかぬのでな」


「……それもそうだね」


 どうやら神斗も真鵺に対して色々と思うところはあるようだが、シギンの話す内容が正論だと認めた為か、直ぐに引き始めるように納得した様子を見せるのだった。


 だが、シギンの言葉に大人しく引き下がろうとした神斗を見て、サイヨウの背後で『真鵺』が、嬉しそうに笑みを浮かべて口を開くのだった。


「おやおや、えらく従順になったものだ。たかが人間相手に、牙でも抜かれたか。滑稽なものだな、竜翼族の神童殿?」


「……」


 シギンに後で話すようにと告げられた事で、この場を先に後にしようと背を向けて歩き出していた神斗は、真鵺に煽られてその場で足を止めるのだった。


「そっくりそのままお返しするよ、真鵺。姿が見えないと思ったら、こんなところにまで逃げ込んでいたなんて、とても驚きだったよ。卜部官兵衛に恐れをなして逃げ出した挙句に、そこに居る人間の妖魔召士に、頭を下げて『式』にしてもらって連れ出してもらったのかな。僕が()()だと言うのなら、君はとっても()()だね」


「ははははっ!!」


 神斗に滑稽だと言い放った真鵺は、その神斗に逆に惨めだと言い返された事で大笑いを始める。


 確かに『神斗』と『真鵺』の傍には、互いにこれまで見下していた人間達の存在があり、そのどちらも現在はその人間達が『必要不可欠』な状態となっている。


 かつては両者共に『妖魔山』で一目置かれていた彼らではあるが、確かに今の何も知らない妖魔山に居る妖魔達から見れば、今の彼らを滑稽で惨めだと思う者も居るかもしれない。


 ――だが。


「覚えておけよ、神斗。私には私の計画があって、自分の意志でここに来たのだ。そして必ずお前を呪い殺してやると、ここで改めて約束しよう」


「真鵺、残念な事だけど、時代は常に進んでいるんだ。いつまでも君程度の『呪い』で何でも思い通りになるとは思わない事だね」


 互いにそう言い切った後、神斗も真鵺も『二色の併用』を纏いながら、互いに強い殺意を以て睨み合うのだった。


 今の彼らを滑稽で惨めだと思えたとしても、それでも彼らは今でも妖魔ランク『10』である事には変わりがない。


 片や、妖魔神であった竜翼族の神斗――。


 片や、あの『煌阿』を上回る程の『魔』の概念理解者にして、その『鵺族』の始祖である真鵺――。


 たとえ妖魔山の猛者たちが、この両者を陰で揶揄出来たとしても、現在の妖魔神にして『妖狐族』の王を除けば、誰も表立って口出し出来る相手ではないという事は、間違いないだろう――。


 ――そして気が付けば、この場に居る者達の大半が『()()』と『()()』の動向を窺っているのだった。

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