2204.翼族と鵺族の過去
ソフィと力の魔神が会話を行い始めた頃、シギンと神斗はサイヨウの元に向かっていた。
現在サイヨウの元には、あのノックスの世界で色々と問題を引き起こし、人里と妖魔山双方に問題を残して姿を消すに至った『真鵺』の姿もあった。
あの妖魔団の乱を実際に引き起こしたのは『紅羽』で間違いないが、そもそも発案自体は『朱火』と、その『朱火』を唆した『真鵺』と鬼人族の長老である玉稿はソフィ達に告げていた。
しかし実際に引き起こされた妖魔団の乱では、妖魔召士サイヨウが陰ながら動き、首謀者全員を相手にたった一人で勝利を収めて見せて、その後全員を『式』にした後にノックスの世界から姿を消してしまった。
本来はこの事変の解決に動かなくてはならなかったのは、弟子のサイヨウではなく、彼の師にして妖魔召士組織の長を務めていた『シギン』が行わなければならなかった。
だが、彼はその『妖魔団の乱』より更に危険な存在が『妖魔山』に封印されている事を知り、そちらをサイヨウ達に任せて『煌阿』の監視を優先した。
そして結論から言えば『妖魔団の乱』は、シギンの思惑通りに動いて、無事にサイヨウ達の手によって収束を果たした。
そこまではシギンの思惑通りであり、事は上手く成し遂げられて満足して終わるところだったのだが、この話には続きがあり、何とサイヨウは『紅羽』や『朱火』、そして『真鵺』達を倒すだけではなく、自らの『式』に加えて最後にはこの世界へ去ってしまった。
この世界を去る直前に、互いに顔を合わせる機会はあったが、結局は互いにやらなければいけない出来事があったが故に、結局は詳しい話が出来ぬまま二人は別れる事となった。
ようやくこの『リラリオ』の世界で再会を果たして、色々と話し合う機会を設ける事は出来たのだが、行われた話は『妖魔召士』の長だけが管理する事を許された『転置宝玉』を用いて、サイヨウがこの世界へやってきた事や、妖魔召士としての本来の職務を果たそうと動いているという事しか、まだ話し合えていなかったのであった。
そのサイヨウが口にした妖魔召士の職務というのが、紅羽たちを『邪』の道から解放し、次の世に向けた更生を果たさせようとする事なのだろうが、頑なにその内容についてを語ろうとしないサイヨウに、シギンは仕方なく問い質す事を一旦保留にし、代わりに多分に自分の方の都合ではあるのだが、ヌーの研鑽の下地の幅を広げさせる手伝いを今回、サイヨウに頼んでいたというわけである。
だが、実際に行われた出来事は、シギンが想定していたものとは大きくかけ離れていた。
どうやらサイヨウはヌーに対しての私情があったようであり、まずはシギンは何よりもその事から言及しようと考えているのであった。
そしてそんなシギンの隣を共に歩き、サイヨウ達の元に向かう神斗だが、当然に彼はサイヨウに用があるわけではなかった。
彼自身、仕方なくという思いもあるのだが、目的はそのサイヨウが『式』にしている『真鵺』にあった――。
神斗はノックスの世界では『妖魔神』として、頂点に君臨する立場に居たわけだが、鵺族の始祖である『真鵺』を完全に従えていたというわけではない。
同じような立場にあった『妖狐族』の『王琳』はまだ、神斗の持つ『魔』の概念技法の知識を得ようと寄り添う形を取ってはいたが、この『真鵺』の方は全く『神斗』と会う事すらもせず、互いに進んで関与を行うような真似はしなかった。
そもそもがどちらも数えて居られぬ程の長い年月を生きてきた妖魔達であり、すでに邂逅を果たしてから数千年も経っていて、お互いに相容れぬ立場を続けていたのだから、今更ながらに腹を割って話すという事など、現実的に考えて有り得ないと言えた。
かつて煌阿達の話の中にも出てきたが、神斗の元々の種族である『竜翼族』と煌阿達『鵺族』は、互いに敵対を行ってきた種族同士であった。
当然に鵺族の始祖である『真鵺』は、敵対していたこの『竜翼族』の多くを滅ぼしており、神斗すらも一度は手に掛けようと動いた事もあるが、実際にはそれが叶わなかった。
何故なら、竜翼族の『神斗』は『金色の体現者』としての『力』が備わっており、他の『竜翼族』のように容易に始末できる『存在』ではなかったからである。
結局は鵺族の『呪い』を以てして、神斗の始末が出来ないと判断した真鵺は、完全に『神斗』から距離を置く事となったわけだが、何の因果か彼と同じ鵺族の『煌阿』は、ある時を境にこの神斗と種族間の柵を無視するように仲良くなり始めてしまったのだ。
すでに大半の『竜翼族』は真鵺達の手によって絶滅させられており、もう神斗以外にあの山には『竜翼族』も残っては居ないが故に、これまでは神斗達の勝手を許すかの如く、無視を決め込んでいたが、卜部官兵衛の出現によって大きくその運命が変わる事となったのである――。
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