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2184.ルードリヒ王国から出された提案

「実は今回の話というのは、前々から何度かソフィ様にお伝えしていた事と関係がある話なのですがね……」


 レルバノンが話し始めると、景色を見ていた窓際からヒノエ達も用意されている椅子に腰を下ろして話に耳を傾け始める。


 ヒノエと六阿狐が椅子に座るのを確認してから、再びレルバノンは口を開き始める。どうやら二人が近づいてくるのを見て、彼は二人が座るまで話すのを待とうと気を利かせてくれたようである。


「お主と最後に話をした時の事と言えば、ミールガルド大陸の冒険者ギルドと交流を行うという話だったか?」


「ええ、その通りです。冒険者ギルドを通じて我々ヴェルマー大陸と、ミールガルド大陸の交流を更に深めたいという思いで始めましたが、あの頃はまだ我々ヴェルマー大陸の冒険者ギルドも『トウジン』での『闘技場』等、独自の催しを行い始めたところでしたし、主体となる『レイズ』の冒険者ギルドもミールガルド大陸の『ケビン王国』側の冒険者ギルドの派遣的な扱いの延長線上と呼べるものでしたから、具体的な事はまだ何一つ考えられていないに等しかったのですがね。最近は少し大きな動きがあったもので……」


 ソフィ達の代になってから、ヴェルマー大陸とミールガルド大陸間での同盟関係が結ばれる事となり、ミールガルド大陸独自の文化であった冒険者ギルドや、商人ギルドもこちらのヴェルマー大陸に徐々に浸透し始めてきている。


 少しずつヴェルマー大陸の冒険者ギルドにも冒険者が所属し始めていて、中にはトウジンの『闘技場』に参加する為にランクを上げたいと強く思い始めている者も出てきている程であった。


 そんな中でレルバノンが、ソフィに相談したい事があると口にしてきている以上は間違いなく、本題の内容は『ミールガルド』大陸との交流に関して、あちら側の大陸から話が発展したと見ていいだろう。


「つまりお主が想定していたモノとは少し異なる事で、交流に関しての発展が有ったという事なのだな?」


「はい、仰る通りです。これまでは私のツテで『ケビン』王国と『レイズ』魔国の両国間を主体に交流を進めていたのですが、今回新たに『ルードリヒ』の方から我々ではなく『トウジン』魔国を通して、我々ヴェルマー大陸との交流を図りたいという話が出たのですよ」


「ほう……。ルードリヒ王国からか。具体的にはどういう趣旨なのだ?」


「ルードリヒ王国側に属する町の冒険者ギルドから、勲章ランクAの冒険者をトウジン魔国の冒険者ギルドに一定期間在籍させて欲しいとの事でしてね。そして行く行くはトウジン魔国の『闘技場』に参加させて欲しいという話らしいのです」


「まぁそれ自体は良い事だとは思うが、トウジンもレイズもラルグも現在は同盟国の証明として『冒険者ギルド』も設立と運営も共同として一本化されておった筈だ。その事はミールガルド大陸も存じておる筈であるし、そういった話を出すにしても、まずは同盟の主要国である『ラルグ』魔国に話を通すのが筋だとは思うのだが、どういう見解でお主らを無視してトウジン魔国に打診してきたのだろうか?」


「それが我々もこれまではあまりルードリヒ王国側とは接してはこなかったものですから……。どういう意図があって『ヴェルマー』大陸と交流を図りたいとルードリヒ王家が考えておられるのか、何を思ってトウジン魔国の冒険者ギルドに自国の冒険者の在籍を認めて欲しいと言っているのか、分かりかねているところなのです」


 ヴェルマー大陸の三大魔国と、ミールガルド大陸の『ルードリヒ』王国の間には、決して覆せぬ程の国力差があるが、それでもこのミールガルド大陸の『ルードリヒ』王国もソフィを通して友好国として扱われている。


 ここでルードリヒ王国の打診を無視する形で突っぱねると、ミールガルド大陸と親和的な交流を目指しているヴェルマー大陸としては、(いささ)か良くない結果を生む事になるのは間違いないと言える。


 しかし今回の打診は、ルードリヒ王国から直接トウジン魔国に寄せられた話であり、冒険者ギルドに関してはまだ共同運営である為に、レルバノンが『ラルグ』の魔国王として口を出してもおかしくはないが、一国内での出来事として捉えて考えれば、レルバノンがここで口を挟むのは内政干渉となってしまう為、やや問題が生じる事となる。


 それもあくまで大陸間の友好国に関してや、ヴェルマー三大国家の同盟に関しても、すでに先代となったラルグ魔国王である『ソフィ』の行いによるものである為、現在の各国の関係性に関してもただ受け継いでいるという意味合いがとても強く、現在の各国の国家元首の決めた事に関しては、前時代までとは異なる物事の考え方をする必要性が求められてしまうのだった。


「これは一度ルードリヒ王国としっかりと話し合う機会を設けねばならぬだろう。シチョウの奴は何と言っておるのだ?」


「はい。シチョウ魔国王としても今回の件は寝耳に水であった様子でして、ルードリヒの冒険者をトウジンの冒険者ギルドで預かるという一件も表向きには保留として扱い、裏ではこうして私やシス女王と連携を取りつつ結論を引き延ばしているところです」


「成程。確かに今回の件に関しては慎重にならざるを得ないだろうな。簡単に交流を深めると捉えるだけであれば、今回の件はお主らも願ってもない事だが、色々とルードリヒ王国が話を出すべき場所を間違っておるが故に、下手にラルグとレイズを無視する形でトウジン魔国が勝手に決断をしてしまっては、ヴェルマー大陸側の考えている交流の着地点や、今後の双方間の国としての結びつきの在り方も方向性を変えてしまい兼ねぬ」


「そうなのです……。今はもうかつてのヴェルマー大陸とミールガルド大陸の関係性ではありませんからね。()()()が魔国王を行っていた時代であれば、納得の行かない事が有れば、直ぐに『戦争』といった暴力的な思考で進めて強引に従わせようとしていたでしょうが、現在はミールガルド大陸の両国家は曲がりなりにも同盟を軸と考えた友好国ですから」


 今までとは異なり、これからはヴェルマー大陸とミールガルド大陸は、より良い親交を考えての交流が必要となっていく為、今回の事に関してどう決断をするかで色々な場所と人物に、しこりや問題を残してしまうと考えてレルバノンは、ラルグ魔国の王として、先代ラルグ魔国王であるソフィに相談を持ち掛けたようであった。


(成程な……。しかし国家間の問題に関して『()()()()()()』に白羽の矢が立つとは思わなかったな。あやつも色々と国の有益性を考えて策を講じておると見える。前回、我がルードリヒ国王と対談した事も色々と関係があるのかもしれぬ。これは一度我があやつと直接話をした方が良いのだろうな……)


 ヴェルマー大陸とミールガルド大陸が今の関係性となったのも、かつてソフィが残した数多の功績の一つである為、たとえラルグ魔国王を引退した身であっても、今回の一件に対して無関係と捉えながら、レルバノンの相談を無視するわけにはいかないとソフィは考えるのであった。

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