2183.ラルグの塔から一望出来る景色
ソフィがレルバノンに直接案内されて辿り着いた部屋は、ブラストやディアトロス達が通された単なる部屋の一室とは異なり、ラルグの塔にある歴代の魔国王が使っている執務室であった。
ラルグの魔国王であるレルバノンが重要な話をする以上は、この部屋を使う事に何ら問題はないのだが、かつてソフィもこの部屋を長らく使っていた過去があり、見慣れた部屋の様子に懐かしさを感じていた。
「前にもこの部屋には来たが、ほんとにすげぇ景色だよな……!」
ヒノエがこの部屋に来るのは二度目であるが、塔の窓から一望する事が出来る景色を眺めて、再び感嘆の声を上げるのだった。
「このラルグの塔の事は前回にもお話させて頂いたかとは思いますが、歴代のラルグ魔国の王となるものが管理する部屋となっていましてね。今の形となったのは先代ラルグ魔国王であるソフィ様の代となったのですよ」
「ああ……。確か、国に襲撃してきた魔王との戦闘で、前まで立っていた塔は全焼しちまったんだっけ?」
前回聞いた話を思い出しながらヒノエがそう言うと、その戦闘を行った張本人であるソフィが口を開くのだった。
「うむ。その魔王はレアという魔族だったのだがな、実は少し前まで屋敷で我やリーネ達と生活を共にしておったのだぞ」
ソフィの言葉を聞いたヒノエと六阿狐は、同時に驚きに目を丸くするのだった。
「えっ!? この国を襲いに来た相手と一緒に暮らしていたのか!?」
「ど、どういう経緯でそうなるのでしょう……?」
何故そうなるのか分からないといった様子で二人がそう告げると、レルバノンがソフィの代わりに笑いながら答え始める。
「簡単な話ですよ。ソフィ様がこの国を攻めて来た『魔王』レアを屈服させてしまい、そのまま自らの配下にしてしまったからです」
「「!?」」
「まぁ、これには色々と事情があるのだがな。そもそもレアの奴がこの国……というか、我を狙ってやってきたのも、あやつが『煌聖の教団』という組織の者達に騙されておったからなのだ。もちろんその事に関してはもう解決となって今ではもう過ぎた話なのだが、この国を襲ったのは事実だ。だからその行った事への罪滅ぼしを行う間を我の目の届く範囲で見届けてようと配下にしたというわけだ」
「襲ってきた相手を返り討ちにし、更には罪を償わせるために、その命を狙ってきた者を懐に入れたという事ですか……! さ、流石はソフィさんですね! いくら和解に繋がったのだとしても、一度命を狙ってきた者を身近に、というか自分の住む屋敷にそのまま住まわせるなんて、普通は考えられませんよ!」
「いやまぁ……、なんつか、懐が大きいとかそういう話より、またいつ狙われるかと考えたらさ、普通はそんな魔王を手元に置きたくはないよな」
ソフィを尊敬の一心で見つめる六阿狐と、ソフィの事を凄いと思いながらも、客観的に物事を捉えて顔を引くつかせるヒノエであった。
「それだけソフィ様は『魔王』レアの事を信頼していたとは思いますが、きっとそれ以上にいつ襲われても何も問題はないというお考えが前提にあられたのでしょうね」
レルバノンの説明に、六阿狐もヒノエも理由がしっくりきた様子で感心するように頷きを見せた。
「もちろんそうでしょうけど、あの子はそんな事も考えられないくらい、最初の方はソフィに怯えていたわね」
ぽつりとリーネが最後にそう呟くと、詳しく話を聞きたいとばかりに六阿狐達はリーネの方を向くのだった。
「まぁ、その話はまた今度にしようではないか。本題は別にあるようなのだからな」
そう告げてソフィがレルバノンの方に視線を向けると、レルバノンも大きく頷いた。
「ええ、実は……」
真剣な表情に戻したレルバノンは、この場にソフィ達を呼んだ本題を口にし始めるのだった。
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