214.新たな開戦
※加筆修正を行いました。
始祖龍キーリ達はとうとう『レイズ』魔国に到着する。流石は空を支配する龍族達だけあって、その速度は他の種族の数倍の速さであった。
「キーリ様。そこそこに大きな戦力値を持つ魔物達が、街を守っていますがどうなさいますか?」
レイズ魔国の東門の拠点付近にソフィの配下達430体と『ロード』のキラーにクラウザー、そして直轄司令であるベアが、ソフィの命令で首都『シティアス』を守る為に駐屯していた。
「そうだな。俺が一気に片を付けてもいいが、レアが言っていた奴が出てきた時が厄介だ。ここはお前たちに任せる」
キーリはディラルク達にそう指示を出すと、空に浮かんだまま腕を組む。その言葉通り件の魔王が出てくるまでの間、彼女は様子を見るようだった。
レキオンはそのキーリの言葉にニヤリと笑みを浮かべる。どうやら満足の行く返答だったのだろう。
「それでは、久しぶりに暴れさせてもらいますよ」
そう言うとレキオンは龍の姿になったかと思うと、レイズ魔国の首都『シティアス』に向けて口から炎を吐いた。
……
……
……
「!」
シティアス全域に張っていた過去の結界、中位魔族までの攻撃無効の結界があっさりと破られるのだった。
一撃で破られた為に、ユファはこの攻撃を放った者が上位魔族以上だと悟り、漏出を放つ。
(強大な戦力を持った者が三体……。これは魔族ではない? 少なくてもラルグ魔国の者達じゃないわね)
ユファは直ぐに『シティアス』の外で守っているベア達に『念話』を送る。
(私の言葉が聞こえるかしら? 今そちらで何者かが攻撃を仕掛けている筈だけど、どういった者達か姿を上手く伝えられたら教えて頂戴)
ユファからの『念話』が届く前にはすでに攻撃準備に入っていたベア達だが、ベアは慌ててユファに『念話』を返す。
(こちらから見えている数は、どうやら三体なのですが、どうやら魔物や魔族といった感じではなく、龍の姿の者が二体と、人間の子供が一体空に浮いています!)
ベアからの『念話』にユファはレアの姿が思い浮かんだが、それならば直ぐに『漏出』で分かるはずだと思い直す。
「一体何がどうなっているの? 龍族なんてこの世界で見た事なんてないわよ?」
ユファは隣にいるシスにこの場を任せる事にして、慌てて『シティアス』へ向かおうとするのだった。
(いいかしら? 私がそっちに向かうまでなんとか街を守って頂戴。空を飛べる者は出来るだけ外へ誘導をお願い!)
(分かりました!)
ベアはユファに『念話』を返した後、直ぐにロードのキラーや配下の者達に、街から離れて攻撃をするように伝える。
その言葉を聞いた配下達は命令通りに動き始めるのだった。
デスバードの群れとキラービーの群れが上空高く飛び上がり、遠距離から攻撃を仕掛けながら、龍たちを街から離れさせようとする。
『ロード』の『キラー』の鋭利な針を中心にキラービー達の攻撃が、先程炎を吐いた『レキオン』に目掛けて放たれる。
数多くの針に加えて『ロード』である『キラー』が持つ針は神経を麻痺させる毒を含む。
それは『最上位魔族』であっても毒針が見事に刺されば数秒に渡り、動きを止められる程に強力なものである。
龍族のレキオンが『ロード』の一体である『キラー』の針を回避しようとしたところに、キーリから声が掛けられた。
「避けるなレキオン!」
「!」
唐突なキーリの言葉だったが、レキオンは素直に従って『キラー』達の毒針攻撃を一身に受ける。
苦しそうに顔を歪ませるレキオンだったが、そこで彼は視線をキーリに向けると彼女の口が新たな指示を伝えた。
「使え」
レキオンは自身の身体が針による毒の作用で痺れているのを感じつつも、キーリの命令の言葉通りに『アレ』を使う。
――『龍呼』。
『レキオン』は三段階目に達している『龍呼』を使うと、次の瞬間『レキオン』に向けて放たれた毒針が何と、そのまま放った『キラー』達に戻るように向かっていくのだった。
「!?」
『ロード』の『キラー』を含めたキラービー達は、自身の放った毒針の神経毒により身体が動けなくなり、その場に縫い付けられたかの如く動きを止められるのだった。
そして動けなくなった者達に向けて、再度レキオンは炎を吐いた。轟轟と燃える炎が『キラー』達の身体を焼く。
そしてそれを見てすかさず追い打ちをかけるかの如く、もう一体の龍族『ディラルク』が同じく迸る炎を吐いた。
「ちぃっ!」
高速で空へと舞い上がり『キラービー』達を守るように前に立ったユファは、無詠唱で魔法を放った。
――呪文『絶対防御』。
ディラルクの炎を一身に受けて尚、ユファは無傷でソフィの配下を守るように立つのだった。
「何とか……、間に合ったようね」
キラーやキラービーたちは傷を負ってはいるが、ここまで誰もまだ死んではいない。
ユファは視線を龍たちに向けつつも、後ろ手に治癒魔法を全体にかける。
『ロード』のキラーや、キラービーたちはみるみると火傷が治っていくのだった。
「ほう? こいつがレアの言っていた『魔王』か?」
ふんぞり返って様子を見ていた始祖龍のキーリが、ユファを見て笑みを浮かべる。
「貴方達は一度退きなさい!」
ユファの言葉にキラー達は素直に従い『シティアス』に戻っていく。
「試してやるか。おいディラルク……! やれ」
キーリがそう言うと古参の側近の龍が頷き力を増幅し始めた。
【種族:龍族 名前:ディラルク(龍形態)戦力値:2億1440万】。
「ギャオオオッ!」
キーリに命令されたその龍は、先程よりも激しく炎を周囲にまき散らす。
――呪文『絶対防御』。
「あまり舐めないでよね『火蜥蜴』!」
「あっはっはっは! 俺達龍族を火蜥蜴呼ばわりか? 面白い女だな」
始祖龍キーリは笑っていたが、レキオンもディラルクも不機嫌そうにユファを睨む。
最強の種族と呼ばれてきた神々に近い龍族は、敬われる事はあっても蔑まれる経験はないに等しい。
そのために煽り耐性のないレキオンとディラルクは、ユファを睨みながらイキリ立っていた。
――そしてレキオンもまた力を増幅させる。
【種族:龍族 名前:レキオン(龍形態)戦力値:2億9500万】。
(『漏出』を使うまでもなく、ヒシヒシとヤバさが伝わってくる。何なのよコイツら!)
大魔王である『ユファ』でさえ、この龍二体を同時に相手にするのは困難だと自身の感覚が告げていた。
「さて、力を試させてもらおうか……。お前らやれ!」
レキオンとディラルクはそのキーリの言葉で、同時にユファに向けて炎を吐くのだった。
「!」
ユファは高速で空を移動しながら龍達の炎を上手く躱していく。
そんなユファを追って二体の龍は炎を吐きつつ、徐々に逃げる道を塞いでいく。彼ら龍族の連携は中々に大したものだった。
「あんまり……、調子に乗るなよぉ!」
――超越魔法『終焉の雷』。
ディラルク目掛けて『ユファ』は炎を躱しながら『魔法』を放った。
その魔法の影響によって轟音が鳴り響いたかと思うと、次の瞬間『ディラルク』に空からの唐突な雷光が降り注いだ。
「うぐっ……! かっ、はっ……!」
流石の龍族であっても『災厄の大魔法使い』の魔法の一撃には、あっさりと動きを止められてしまうのだった。
「追撃のタイミングはここね……!」
――神域魔法『天空の雷』。
『終焉の雷』よりも遥かに殲滅度の高い『神域魔法』がディラルクを狙う。
だがユファの魔法が当たる直前に、横からオーラの渦が壁となりユファの魔法を相殺するのだった。
「何?」
ユファは驚愕に目を丸くして『ディラルク』を『天空の雷』から守ったキーリを見る。
「ふふふ。やはりてめぇで間違いなさそうだな? 後は俺がやる」
――そして遂に、始祖龍キーリが動き始めるのだった。
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