2174.馴染みの朝食
屋敷に戻ってきたソフィは少しの仮眠を取った後、屋敷で定めている皆で摂る朝食時間にリーネに起こされて目を覚ますのだった。
ソフィは普段であれば起こされるまでもなく、余裕を持って起きて居られている時間だったのだが、流石に明朝に戻ってきたという事もあって、起こされるまで目を覚ます事が出来なかったようである。
「時間が経つのは早いものだ……。まだ寝たりぬな」
ソフィは起きあけにそう呟くと、直ぐに隣に居たリーネが笑い声を上げるのだった。
「でもヌーさんの容体が落ち着くまでは、家でゆっくり出来るのでしょう? 朝食を皆で食べた後にもう少しだけ寝直していてもいいわよ?」
「ふむ……。それはとても魅力的な提案だが、予定が少し変わった事をレルバノン達に伝えに行かねばならぬからな」
「ああ、そう言えばそんな事も言っていたわね。ラルフやリディアさん達も今はラルグ魔国に居るんだっけ?」
「うむ。当初の予定ではヌー達をフルーフの元に送り届けた後に直ぐ戻るつもりであったのだがな。流石にここまで予定が変われば、しっかりと伝えにいかねばなるまい。それにヌー達以外の事以外にも色々と予定は詰まっておるしな」
リーネはソフィの話を聞いて、本当にいつも忙しそうねと一言呟くのだった。
「すまぬな。シギン殿達には仲間の件でも世話になったのでな。約束はしっかりと果たしておきたいのだ」
「ええ、分かっているわ。でも無事で帰ってきてね?」
「うむ、分かっておるよ」
そう言ってソフィはリーネに口付けを行うと、二人仲良くリビングへと向かうのであった。
……
……
……
ソフィとリーネがリビングに顔を出すと、すでにこの場には六阿狐やヒノエ達、そしてブラストにヌー達も姿を見せていたのだった。
もしかするとヌーとテアは自室から出てこないかもしれないと考えていたソフィだったが、こうして普通にブラスト達の前に顔を見せているところをみると、やはり昨晩の酒宴はやって正解だったと思えたのであった。
「皆、おはよう」
「おはようございます!」
「おはよう、ソフィ殿」
「おはようございます、ソフィ様!」
「ああ……」
リビングに入り、ソフィが朝の挨拶を行うと、皆一斉に挨拶を返すのだった。
ヌーもソフィの方に視線を送りながら返事をすると、横に居たテアも慌ててソフィに頭を下げた。どうやら言葉は通じぬとも、場の空気で挨拶をしているのだろうと察したようである。
どうやらすでにソフィの分の朝食もテーブルの上に並べられており、後はリーネが起こしに行くだけの様子だったらしい。
そしてソフィが席に着くと直ぐに皆で食事を摂り始めるのだった。
各々が会話を楽しみながら食べ始めた朝食の中でソフィは、昨日までと明らかに空気が違う『ヒノエ』と『六阿狐』の様子に視線を向けたのだった。
何と六阿狐の方からヒノエに笑顔で話し掛けており、ヒノエもそれに大きく頷いて笑みを浮かべて返事をしていた。昨日まではお互いに最低限の会話を行った後は完全にお互いを無視していただけに、明らかに昨晩の内に何かあったのだろうと察しが付くソフィであった。
そしてソフィが二人に向けている視線を見たリーネは、小声でソフィに話しかけてくるのだった。
(ねぇねぇソフィ、あの二人一気に仲良くなったと思わない?)
(うむ。我もそう思っておったところだ。昨日帰ってきてから部屋に戻る時、六阿狐がヒノエ殿を呼び止めておったようだしな。あの後に何か話しでもして打ち解けたのかもしれぬな)
(そうだったんだ。私、全く気付かなかった……。でも良かった。少しあの二人の様子を見て心配していたのよね)
そう言ってリーネもほっとしたような表情を浮かべ始める。
(ヒノエ殿も六阿狐も、相手を慮れる良い心を持った者達だ。これまでは人間達と妖魔達という柵もあったかもしれぬが、ここでは互いに同じ家で過ごす者同士、何かの拍子に仲良くなる事は何も不思議な事ではない。この後も末永く仲良くあって欲しいものだ)
ソフィはリーネとの会話の後にそう胸中で呟くと、この光景が当たり前のように馴染んでいって欲しいと考えるのであった。
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