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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
第二の故郷の世界編

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2167.次元の狭間内で感じる事

 ソフィ達は人型の影のシルエットをしている『魔神』の背後を歩きながらついて行く。やがて先程まで居た細い山道ではなく、山の景色を一望出来る程の開けた場所に辿り着くのだった。


「――」(ここからは『()』を通って行くが構わぬな?)


 変化の魔神は振り返りながらソフィ達の方を向いてそう告げる。当然に神格を持たないソフィ達に言葉は通じず、ソフィはちらりと『力の魔神』の方に視線を送るのであった。


「――」(どうやらここからは『道』……『次元の狭間』を通って彼が監視している者の場所に向かうみたいね。分かっていると思うけど、ソフィはまだしもそこの人間は『次元の狭間』の内側では意識を保つ事は出来ない。一応は貴方にその事を伝えておくわね?)


「うむ、構わぬ」


「――」(ソフィは承諾したわ)


「――」(そうか。では、開くとしよう)


 同意をして見せたソフィに『力の魔神』は頷くと、そのまま『変化の魔神』に『次元の狭間』を用いる事をソフィが認めた旨を伝えるのだった。


 次の瞬間、何もない空間に亀裂が入ったかと思えば、黒く大きな孔が出現するのだった。


 最初は小さかったその黒い孔だが、影が右手に『魔力』を集約させると同時、その孔が徐々に大きく広がり始めていき、やがては人が入れる程となった。


 今度はソフィや力の魔神達に確認をせず、変化の魔神はその黒い(あな)へと入っていくのだった。


 変化の魔神の姿が表から完全に見えなくなると、その黒い孔が徐々に小さくなっていくが、今度はその孔に向けて『力の魔神』が魔力を伴いながら右手を翳し始めた。


「――」(ここで私が『道』の維持を努めるから、先に入って頂戴) 


「うむ、分かった。ヒノエ殿、この黒い孔を通って行く必要があるみたいなのだが、ここを通る間はお主は意識を保つ事は出来ぬのだ。我を信頼してくれるか?」


 ぽかんと黒い孔を眺めていたヒノエだが、ソフィにそう告げられて直ぐに首を縦に振るのだった。


「もちろんだ。ソフィ殿になら安心して命を預けられる!」


「クックック、そうか。では少し失礼するぞ」


「え……? わわっ!?」


 ヒノエはよく分かっておらず、自分で孔に入ればいいのだろうと考えていた為、いきなりソフィにお姫様だっこで抱き抱えられて驚きの声を上げるのだった。


「何があるか分からぬからな。孔に入る前からこうしておいた方が安全だろうと思ってな」


「そ、そうか……! あ、ありがと」


 抱き抱えられたヒノエは、ソフィの近くなった顔を見ながら照れた様子で礼を告げるのだった。


「――」(ソフィ、準備が出来たなら早く入ってちょうだい!)


 そんな二人のやり取りを後ろで見ていた力の魔神は、見ていて面白くなかったのだろう。普段とは違い、少しだけ険のあるような言い方で孔に入るのを促すのだった。


「すまぬ。では、入るとしよう」


 そしてソフィは一歩前に踏み出して、魔神によって維持されていた黒い孔の中へと入るのだった。


 ……

 ……

 ……


 黒い孔に入り込んだソフィは、これまで幾度となく感じてきた『次元の狭間』の感覚に包まれる。


(ふむ……。フルーフやヌーが『概念跳躍(アルム・ノーティア)』を用いてくれた時に通ってきた場所と全く変わらぬようだな。しかし『魔法』を用いずに何もない空間から、しっかりと意識を保ったまま自分の足で入ったのは今回が初であったかもしれぬな。今も自分の足でしっかりと歩いているという感覚はあるが、周りの景色が一定で何も変わっておらぬが故に、少しばかり違和感が残るものだな)


 ふと、そこでソフィは自分の腕の中に居るヒノエの顔を眺める。


 先程まではソフィに抱えられて照れた様子でこちらを見ていた彼女だが、今は目を見開いたまま、何もない空間をぼんやりと眺めているようだった。


(成程な。僅か数秒前までしっかりと意識を保っていたというのに、一歩この中に入り込めばこうなるか。そう言えばノックスの世界に渡る時も『フルーフ』や『ヌー』の奴は、一方向をじっと見つめて意識を失っていたように思うが、あやつら程の『魔』の概念理解度であっても、今のヒノエ殿と変わらぬという事か……。基準となるラインは分からぬが、これではディアトロスやブラスト達であっても、意識を保つのは難しいかもしれぬな)


 ソフィはそんな事を考えながら『次元の中』を移動していく。


 しかし足を動かしているという感覚はもちろんソフィにはあるのだが、周りの景色が全く変わらない為に、いつまでも同じ場所で足踏みしているような感覚を覚え始める。


 一度そういう風に考えが過ると、本当に足踏みをしているだけのような気がしてくるソフィであった。


(我はしっかりと移動を行えているのだろうか……?)


 ソフィは徐々にこの空間内での自分の感覚が信用出来なくなり始めてしまい、ちらりと背後を振り返って見るのだった。


 だが、すでに振り返ってみても『力の魔神』の姿や、山の景色などは見えてはおらず、前を向いている時と同様に薄暗い無機質な空間が続いているだけであった。


(我は今自分の歩く音すらも全く聞こえぬ無音の中で、ただずっと同じ場所を歩かされているような錯覚すら覚えている。クックック、未知なる体験を行えるというのはとても貴重な事だ。この感覚を同じ場所に居る筈のヒノエ殿と共有出来ぬというのは残念だな。今度シギン殿にこの空間内での違和感についてや、疑問に思った事を訊いてみるとしようか……!)


 普通であれば、無音で前も後ろも同じ景色が延々と続く『次元の狭間』の中で、音もなく自分一人だけが取り残されているという感覚に吐き気を催したり、大声を出してしまいたくなる衝動に駆られるところだが、ソフィはこの空間内に居る感想として、気分そのものは良いとはいえないと感じながらも、何処かわくわくしている自分が居る事に気づき始めるのだった。


 やがて、そんな事を考えながらも『()』の中を歩き続けていたソフィの前に、遂に出口となる場所が見え始めてくるのであった――。


 ……

 ……

 ……

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