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2164.ソフィの人間に対する感情

 魔瞳である『金色の目(ゴールド・アイ)』で強引に六阿狐の意識を遮断させたソフィは、そのままリビングの椅子を並べてソファー代わりにして彼女を寝かせた後、リビングの部屋を出ていく。


 しかしそこでソフィはリビングを出て直ぐに、廊下に誰かが立っている事に気づく。


()()()()()殿()


 薄暗い廊下の中、壁にもたれ掛かりながらヒノエはソフィにそう声を掛けてきたのだった。


()()()殿()()。もう部屋に戻ったと思っていたが、何か忘れ物でもあったのだろうか?」


「そうだな。ソフィ殿に寝る前に挨拶するのを忘れていたから、ここで出て来るのを待っていたんだよ」


「クックック、そういう事だったか」


 そしてソフィがヒノエに挨拶をしようと口を開きかけたところ、先にヒノエが言葉を掛けてくるのだった。


「それで? 護衛を行おうとしていた六阿狐の意識を失わせてまで、いったいこんな夜更けに何処へ行こうとしていたんだい?」


 どうやらヒノエは全て分かっているようで、このまま誤魔化す事は出来ないと判断するのだった。


「ヌーに攻撃を行った者の確認を行っておきたいのでな、あやつが向かっていた大陸に確認に行こうとしていたところだ」


「それは先日ソフィ殿が言っていた、私らが世界を行き来する時に出会った『魔神』って奴と関係があるのかい?」


 ソフィはヒノエがそこまで理解している事に驚いた表情を浮かべたが、直ぐに首を縦に振る。


「今のヌーを相手にして、一切の抵抗を許さずに無力化を行える者などは、この『リラリオ』の世界に居るとは想像し難いところだな。ここがお主らの生きてきたノックスの世界であれば、まだ見ぬ猛者の可能性も充分に考えられたであろうがな」


 妖魔山の中にあった『王琳』の管理していた『結界』の内側に集まった妖魔達の中には、今のヌーと同等近い力量を有していた者達が居た事は確かであった。しかしこの『リラリオ』の世界で彼が相対して来た者達の中に『三色併用』に目覚めたヌーを相手に出来る者など、考えられないとソフィは思考するのだった。


「成程な。ソフィ殿はヌー殿を襲った者がこの世界の住民ではなく、介入してきた別次元の『存在』とすでに確信を抱いているというわけか」


「そういう事だ。まぁ、()()()()()()()()()()()()()は残されておるだろうがな。それを確かめる意味でも我はこれから向かおうとしているというわけだ」


「……なぁ、私もソフィ殿に付いて行っちゃ駄目かな?」


「何?」


「ソフィ殿が六阿狐を付いて来させないように意識を失わせた事を考えて、その『魔神』って奴はとんでもなく強いんだろう。正直言って私もソフィ()()にとっちゃ、足手まといにしかならねぇ存在かもしんねぇ。でもよ、私もリーネ殿と約束したんだよ。戦場でリーネ殿の代わりに私は()()の傍で貴方を守るって。その為にリーネ殿は、自分の気持ちを押し殺してまで私を認めてくれて、()()の隣に居てもいいって……許してくれたんだ。だから、私は認めてくれたリーネ殿に約束した事を証明しなきゃなんねぇ! ソフィさんが私を足手まといと判断した時は、そのまま捨て置いてくれて構わねぇ。戦って死ぬ覚悟なら十に満たねぇ時に出来てんだ! だから、頼むから、()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


「!」


 彼女はそう言って、廊下の床に頭を付けてソフィに自分を連れていってくれと懇願するのだった。


 最初にソフィに声を掛けた時と呼び方を変えた上で、()()()()()()()()()()()()()()()と彼女は言った――。


 ソフィはヒノエが妖魔退魔師の組長だった事を改めて思い出し、そして自分の為に何もかもを捨ててこの世界にやってきたヒノエの心情を本当の意味で理解するのだった。


 ここで彼女の命の為にと考えて断る事は優しさではない。むしろ彼女の武士としての心を貶める行為と成り果てるだろう。そしてリーネがどういう気持ちでヒノエを認めたのか、それすらも無碍にするような行為へと繋がってしまうとソフィは理解するのだった。


 リーネもヒノエも強い覚悟を持ってソフィの隣に立つ事を選んだのである。


 それは決して『死』を恐れて立ち止まる程度の覚悟ではないのだろう。


 ――ソフィは、先日の夜にベッドの上でリーネと話をした時の事を思い出す。


(ああ……、リーネが我に伝えたい事はこういう事だったのだな。我はどうやら思い違いをしておったようだ。ここで我が()()()を慮って置いて行けば、それは()()()を助けるのではなく、ヒノエの心を殺してしまう行為となるのだろう)


 ――二人の心情を理解したソフィは、改めてリーネとヒノエという人間の強さを知り、再び『人間』をこよなく愛する気持ちが芽生えるのであった。

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