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2162.収穫有り

「……ああ、その通りだが、そんな簡単に分かるものなのか?」


 確かに今のヌーとは明らかな差がある事をブラストも理解していたが、それでも強くなる事に重きを置くものが数多くある中で、彼が今一番困っている『オーラ』の事をあっさりと言い当てられた事に脱帽したとばかりに訊ねる。


「最初に言っただろう? お前は『魔』の概念に関しては、かつての俺に並ぶ程にどれも水準が高かったと。つまり当時の俺が悩んでいた事をお前が今悩んでいても何もおかしくはない」


 どうやらヌーの中で大魔王ブラストの事を相当に買っているらしく、他の有象無象の魔族達では届かない領域の悩み事にまで、彼が至っている筈だと確信している様子であった。


「少し前のお前は『()()()()』を身につけては居なかった筈だ。それを何故こんな短期間で覚えられたんだ?」


 レパートの世界からやってきたレア達が襲撃を起こしたあの時、ブラストは直接このヌーと殺し合いを行っていたのだ。それもソフィの契約している『力の魔神』との連戦で手負いではあったが、決死の覚悟の状態であってもヌーは『三色併用』を用いていなかった事を考えると、あの頃はまだ覚えていなかった筈だとブラストはヌーに告げた形である。


「まぁ、今当時の事を振り返ってみてもよ、覚えようと思って覚えられたわけじゃねぇな……。俺が『三色併用』を初めて使った時は、コイツがノックスの世界のハゲ頭野郎に殴られちまってよ、それを見た時に『許せねぇ、ただじゃ済まさねぇ、ぶち殺してやる』ってそれだけが、俺の頭の中を埋め尽くしていたんだ。そしたら普段使っていた『金色』が使おうとしてねぇのに、勝手に俺に纏わりついていた……ように感じられてよ、その時に改めて『二色の併用』を使おうとしたら、()()()『三色併用』になったって感じが一番ちけぇかな……」


「仲間がやられかけた時に無意識に『金色』を使っていた……か。それ以外は他に何かなかったのか?」


「そうだな……。俺自身で感じられたのはそれくらいだったかもしれねぇな。いや、後は客観的な感覚に近いかもしれねぇ事だが『青』や『紅』のオーラも全く違うものに変わっていたな。それも無意識だったという事だけは覚えている」


「何……! 『()』や『()』ってのは、俺達魔族が使うもので間違いないよな?」


「ああ。俺達が最初に覚える『()()()』の事だな」


 魔族が扱う『魔』の技法の一番最初に覚えるものが『紅色のオーラ』であり、苦難を乗り越えた者が扱う事の出来る『魔』の概念技法であり、次に『青』が『魔王』領域として認められる『魔』の概念技法である。


『青』に関しては魔族だけが覚えられるというわけではなく、人間や龍族も扱う事を可能とするものであるが、その一つ前に覚える『紅』に関しては、キーリといった例外を除き、一般的に魔族以外には扱えないものとされているのが実状と言える。


「ヌー殿が感じた『青』の感覚の違いって奴は、多分『浅葱色(あさぎいろ)』から『天色(てんいろ)』へ進化を果たしたのに気づかずに無意識に扱ったからだろうよ」


 そうブラストに説明を行ったのはヌーではなく、トイレから戻ってきたばかりの『ヒノエ』であった。


「ヒノエ殿……!?」


 そして戻ってきたヒノエが改めて徳利(とっくり)の中の酒を呷るように呑んだ後、彼女の周囲に鮮やかな『青』が展開され始めると、ヒノエが『青』を纏えると思っていなかったブラストは再び驚愕の声を上げたのだった。


「そう言えば、てめぇらも『()』を扱えるんだったな?」


 そしてブラストとは違い、ヌーの方はさほど驚いた様子を見せずに淡々とそう口にする。


()()()()。私らの世界では、この『魔』の技法にだけ関して言えば、妖魔召士よりも私ら妖魔退魔師の方が早く扱えて、専売特許(せんばいとっきょ)と言えるものだったんだぜ? まぁ、厳密には妖魔召士の連中は、この『オーラ』の事を下々が扱う程度の低い『魔』の技法とされていたらしかったがな」


 ノックスの世界では『青』といった『オーラ』の技法に関しては、魔力が乏しい妖魔召士のなり損ないが、僅かにでも『魔力値』を上げようと用いるものとされていた為、妖魔召士が『オーラ』を使う事は『魔力値』が少ないと他人に教えるようなモノであり、恥ずかしいものとされていた過去が存在していたのだった。


「そう言えばそんな話をお前らの世界の奴に聞いた覚えがあったな。全くふざけた話だぜ。単純に戦力値と魔力値が数倍跳ね上がるってのによ、刷り込まれた常識のせいで強くなる事を拒否しているんだからな」


「ははっ、違いねぇや。ま、読み書きを覚えるような幼少期に教え込まれる常識だからな。大人にそう教えられた常識は簡単には覆せねぇんだろうよ」


 そう言って再びヒノエは自分の席に着くと、彼女はリラリオの世界の度数の低いエールを口直しに呑み始めるのだった。


「ちょっと待ってくれ、確かに今ヒノエ殿が纏っていた『青』は、俺達が普段使うものとは異なっていたが、それはどうすれば変化を齎せる?」


 そう言って慌てた様子でブラストも『青』を纏わせ始めるのだった。


「そうだなぁ……。何をどうすればって訊かれたら、これは()()()()()()だとしか説明出来ねぇな……。私もある時ふいに使えるようになったから、私には上手く伝えられる自信がねぇな。総長や副総長なら論理的な説明が行えるかもしれねぇけど、ワリィな!」


 ヒノエは申し訳ねぇとばかりにそう告げると、愛想笑いを浮かべるのだった。


「そ、そうか……」


 ブラストは心底残念そうに呟くと、肩を落として溜息を吐くのであった。


 ヌーの方もそれ以上は何も言うつもりはないのか、ようやくさっきの話を行った頃から機嫌が少しずつ良くなり始めたテアと、ようやく楽しそうに談笑を行い始めていた。


 どうやらテアもノックスの世界でヌーが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


(だが、重要な話を得られたのは確かだ。どうやら使おうと思って使うのではなく、無意識の中で勝手に纏わせていたというのが目の前の者達の共通認識のようだ……。つまり、青の練度を高めようと研鑽していた時とは全く違う感覚を覚える必要性があるという事だろうな。そしていきなり『三色併用』を纏わせられるというわけでもなく、まずはこれまで覚えてきた『青』や『紅』も一つ一つ変化させる事も必要だという事だろう。さっきヒノエ殿が纏っていた『青』は、俺が使っている『青』とは色の濃さそのものが違っていた。あんなくっきりとした『青』はアレルバレルの世界では見たことがなかったように思う。どうやらいきなり『三色併用』を扱おうとするのではなく、これまでの基礎から見直した方が良さそうだ)


 大魔王ブラストは、これまで『敵』としか見ていなかった大魔王ヌーと会話を交わした事で、自分に必要なものがまだまだ数多くあるのだと気づきを覚えた。そして存外に実りのある話だったとばかりに、()()()()と意識付ける事にしたのであった。


 ……

 ……

 ……

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