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2161.大魔王ヌーと大魔王ブラストの会話

 ソフィと六阿狐(むあこ)がリーネを寝室に運ぶためにリビングを出ていった後、まだ残された者達による酒宴は続いていた。


 ソフィ達が居なくなった最初の方は、ヌーもブラストもお互いに視線すら向けずに淡々と酒を呑んでいたが、そこにヒノエが二人の仲を取り持つかの如く、緩衝材の役割を担いながら会話を続けた事で、今ではヌーとヒノエが会話の主導権を握り合いながら、たまにブラストがその会話の間に入り、相槌を打つという構図が出来上がっていたのだった。


 どうやらソフィに任されたヒノエは、充分にその役割を担えたようである。


「ちょいとすまねぇ、厠へ行ってくる」


「ん、ああ……」


「場所はもう分かるだろう?」


 気分良く酒を呑みながら喋っていたヌーは、会話の主な相手であるヒノエが立ち上がると、眉を寄せながら返事をし、ブラストは屋敷のトイレの場所が分かるかと訊ねるのだった。


「へへ。大丈夫だ、ありがとよ。そんじゃ、ちょっと行ってくる」


 そうしてヒノエがリビングを出ていくと、これまでの賑やかさは何処へやら、リビングはしんと静まり返るのであった。


 それもその筈、ヌーもブラストもヒノエが居たからこそ渋々とではあったが、それなりに会話を行えていた。しかしこの敵対していた大魔王両者だけでは、このように会話が成り立たないのも仕方のない事ではあった。


 残されたこの場の救いである筈のテアもまた大嫌いな酒を前にして、更には自分の周り全員が、たらふく酒を呑んでバカ騒ぎをしている渦中に嫌々居続けた為に、ヌーにさえ話し掛ける真似をせず、椅子の上で足をぶらぶらさせながら『()()()()()()()()()()()()』とばかりに、ヌーに向けてアピールをしている程だった。


 ハッキリと言って数分でこのリビングの空気は重くなり、まるで『地獄』のような場所へと変貌を遂げてしまうのであった。


 これがまだ『ノックス』の世界にいた頃の『ヌー』と『エヴィ』であれば、相手を煽りながらも何とか話のキッカケを作れたりもしたであろうが、それすらもこの『ヌー』と『ブラスト』の関係では有り得なかった。


 それ程までにこの両者はこれまで憎み合い、あくまで大魔王ソフィの『九大魔王』と、アレルバレルの支配者を淡々と狙う『敵対する大魔王』という構図を地で貫く関係性だったのである。


 つまりはヌーにしてみれば『九大魔王』の中で、この『ブラスト』が一番相性が悪い相手と考える程だった。


 地獄の沈黙はまだまだ続き、流石にこのままではふとした拍子に、勢いで手を出してしまうかもしれないとまで両者は考え始めた頃、仕方なくブラストの方から口火を切るのだった。


「しかし、何だな……。お前もほんの少し見ない内に、想像出来ないくらいに強くなりやがったもんだな……?」


「あ? ああ、まぁな……。てめぇの方は、前にこの世界で会った時とあんまり変わっていなさそうだが、()()()()()()()()?」


 あっさりと見抜かれてしまったブラストは、忌々しそうにヌーの顔を睨みつけたが、図星であった為に何も言えずに黙り込んでしまうのだった。


「まぁ、そう睨むなよ。てめぇら『九大魔王』の面子(めんつ)には、俺もそれなりに認めてやってんだよ。誰一人として研鑽や努力を放棄しやがらず、馬鹿正直に強くなろうとしていやがるのが分かっているからな」


 そのヌーの言葉にブラストは、少しばかり意外だったとばかりに向ける視線の意味を少しだけ変えた。


「特にてめぇは『魔』に関しては、かつての俺と並べる程の『魔法』の水準の高さを保っていやがった。精霊女王の『(ことわり)』を含めて、エルシスの『(ことわり)』もしっかりと身につけていやがったしな。そんなお前があの頃から全く成長ぶりが少しも見られねぇって事は、お前の今の独自の研鑽ではすでに、限界付近に至っちまってるってところだろうな」


 ヌーの言葉を認めたくないブラストだが、自分でも何度もその考えに行き着いており、このままでは時間をいくら使おうとも無駄なのではないかとさえ感じていた為、悔しそうな表情を隠そうともせずに、彼はヌーの前で素直に出すのだった。


「悩んでいやがるのは『()()()』の事だろ?」


「!?」


 研鑽内容に関してはまだ一言もヌーに告げていないというのに、あっさりと一番の悩みを言い当てられて思考を強制的に停止させられてしまい、驚愕の表情を浮かべるブラストだった。

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