2154.ブラストが疑問に思う事
ソフィがヌー達の居る部屋からリビングへと戻ってくると、直ぐにリビングに居たリーネやヒノエがこちらに視線を向けるのだった。
「それで、彼の容体はどうだったの?」
「うむ。一応は先に我の魔法で回復はさせておいたからな。もうあのまま一晩程休めば、何も問題は大丈夫だろう」
「そう、良かったわね……。でもいきなりでびっくりしたわよ。ミールガルドの方からお客さんが来るって話だったけど、あの人達がそうだったのよね?」
ヌー達がここに来るという話は事前にソフィから聞かされていたが、まさかあんな状況で来るとは思わなかった為に、リーネも相当に驚いていた。
「その通りだ。どうやら我の忠告を聞かずに無理をしたようでな、その結果が今回の出来事に繋がったようだ」
リーネはソフィに説明されて直ぐに理解を示したが、そこでふとミールガルド大陸にそんな危険な場所があったかしらと別の疑問の壁にぶつかり、首を傾げて悩む素振りを見せるのだった。
「それでリーネよ……。我はあやつが来る前に今晩の食事の準備をしなくとも良いと告げたと思うのだがな、どうやらあやつは襲われた時に持っていた荷物を落としてきてしまったようなのだ。何か今からでも用意出来ぬだろうか?」
ソフィが困った顔を浮かべながらそう告げると、リーネは少しだけ考える素振りを見せた後に直ぐに頷いて見せるのだった。
「えっと……。本当に簡単なものでいいなら、少し前にブラストさんに頼んでおいた食材があるから、それでよければ直ぐに用意出来るわよ?」
もし用意出来なければ、今から何か買いに出かけようと考えていたソフィはほっとした表情を浮かべるのであった。
「おお、そうか……! それは助かるぞ、リーネよ」
「どうせお酒も呑むんでしょ? あ、でも彼には身体に障るかしら……?」
「いや、むしろあやつには酒を呑ませた方が治りが早くなるだろうな」
冗談交じりにソフィがそう言うと、リビングに居る者達は一様に笑い始めるのだった。
「それじゃ、早速料理の支度をしてくるわね」
「あ、私も手伝います!」
「そ、それじゃ、私も手伝う……!」
リーネの料理を手伝おうと六阿狐が手を挙げると、直ぐにそれを見たヒノエも後に続くのだった。
その場に残ったソフィの隣の席にブラストは座ると、彼は真剣な表情を浮かべながら声を掛けてくるのだった。
「ソフィ様……。あのヌーをあのような目に遭わせた者は一体誰なのですか?」
どうやらブラストは自分より強いと認めたヌーが、あんな状態になって運ばれてきた事に、誰がやったのかと納得がいっていない様子であった。
「ああ、そう言えばお主にはまだ伝えていなかったか。まだ決まったわけではないのだがな、それでもある程度の予想は出来る。あやつが『ミールガルド』大陸で関わったのは十中八九『魔神』で間違いないだろう」
「!?」
ソフィの説明で疑問を浮かべていたブラストの表情が、これまでと明確に変わるのだった。
「ま、まさか……! ソフィ様がご契約をされているあの『魔神』ですか!?」
どうやらブラストはソフィの告げた『魔神』を勘違いしている様子であり、彼の中で思い浮かべたのは『変化の魔神』の方ではなく、これまで幾度となくソフィが使役してきた『力の魔神』の方を想像したようであった。
しかし彼が『次元の狭間』での出来事を経験していない以上は、勘違いするのも無理はないと言えるのだった。
「いや、あやつの事ではないのだがな。そうだな、お主にはしっかりと説明をしておいた方が良さそうだな」
これから『九大魔王』を迎えに行くときに『ブラスト』も行動を共にする事を考えたソフィは、再び『次元の狭間』で『変化の魔神』と遭遇する可能性を考えて、これまでにあった事を彼に伝える決心をするソフィであった。
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