2153.再確認
ヌーからミールガルド大陸であった事情を聞き、夕飯まではまだ時間がある為に今はそっとしておこうという事になり、後の事はテアにヌーを任せる事にしてソフィ達はヌーの部屋を退室したのだった。
ソフィは部屋を出てからもヌーの話が頭から離れず、現在もクッケ近くに居ると思われる『変化の魔神』について考えを巡らせるのだった。
(あの『次元の狭間』の中であやつも言っていたが、どうやら本当に誰であっても、監視対象者の元に近づかせるつもりはないようだな……。しかし我が思っていた以上にあの『魔神』は強さを有しておったようだ。シギン殿や神斗殿があやつを前にして顔を青くさせていた理由がよく分からなかったが、確かに今の強くなったヌーが何も抵抗出来ずに一方的にやられてしまった事を考えると、それなりにやるというのは間違いなさそうだ)
――今の大魔王ヌーは『三色併用』を使用する事を可能とする程の『魔』の概念理解者なのである。
当然にノックスの世界に居るヌーよりも遥か高みに居る『魔』の概念理解者である『シギン』や『神斗』達、そして実戦的な強さの面では『シゲン』や『煌阿』、そして更にその上に立つであろう『王琳』に劣ってしまうヌーが、変化の魔神を前にして手も足も出ないと言われても、まだソフィには明確に変化の魔神の強さを実感する事は出来ないでいるが、それでも代替身体でも相当の強さを誇っていた『レキ』が真っ向からぶつかってやられたというのであれば、変化の魔神が先に挙げた実力者達と同等以上であってもおかしくはないかという結論に至るソフィであった。
(クックック……。まぁ『力の魔神』の奴が、自分よりも殺傷能力の点では遥かに上と口にしておったのだから、それぐらい強くともおかしくはないか)
そしてここに来てソフィは、変化の魔神とも『いずれは一戦交えてみたい』と考えるのだった。
「ソフィ様、本当にあれは大魔王ヌーなのですか?」
「……何? どういう事だ?」
変化の魔神の事について考えていたソフィは、急に予想外の言葉を隣に居るブラストから告げられた事で思考が追いつかず、そのまま深く考えずに訊き返してしまうのだった。
「いえ……。事前にソフィ様から今のアイツは昔とだいぶ違うという話を聞いておりましたが、あのようにソフィ様に対して申し訳なさそうな態度を取り、剰え謝罪を素直に口にするところを見てしまうと、本当にあれは『最恐』と恐れられていた『アレルバレル』のNo.2であった大魔王ヌーなのかと疑問を抱いてしまったんですよ」
すでにここに来るまで他の『九大魔王』達も同じような反応を見せていた事もあり、ソフィは『ああ、またか』という気持ちを抱くに至るのであった。
「だから言ったであろう? 我とて昔のあやつとならば、この屋敷で一緒に酒を呑もうとは思えなかったであろうが、今の変わったあやつであれば、一緒に行動を共にする事や、酒を酌み交わす事に何の抵抗もない。間違いなくあやつは心も成長しておるし、強さの面でも言わずもがなだ」
ソフィ自身、ノックスの世界でヌーが徐々に変わっていく姿を見てきた為、今のブラストに対する自分の言葉にも、何の疑問も違和感も抱く事なくこの場で口にしたのであった。
「どうやらまだ私は色眼鏡でアイツの事を見てしまっていたようです。これでは駄目ですね。奴に置いて行かれるのも無理はありません……」
大魔王ブラストの今の呟いた言葉は、明確に大魔王ヌーが、自分より強さの面でも精神的な面でも『上』だと認める発言であったようにソフィには感じられた。
「他者を素直に認める事が出来るのもまた『強さ』である事に間違いない。安心しろ、お主も我が認めた『九大魔王』だ。これから少しずつ強くなっていけばよい」
「ははっ!」
ソフィの言葉を真摯に受け止めたブラストは、意欲を漲らせながら力有る返事を主にしてみせたのだった。
(やっぱりソフィさんは、我が主に似ておられる。我々眷属も王琳様に質問を投げかけた時、解を示された後にこのように我々の意欲を高めて下さっていた!)
ブラストに対して掛けたソフィの言葉を聞いていた六阿狐は、やはり自分の主である『王琳』と似ていると、ここにきて再確認するのだった。
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