2151.ヌーと再会を果たすソフィ
それからしばらくの時間が経ち、ミールガルド大陸に向かっていたヌー達がいつ屋敷に訪れてもおかしくない時間帯となった頃、ヴェルマー大陸の上空に大きな『魔力』を持った者達が近づいてきているのをソフィは感知するのだった。
「むっ、どうやらこちらに向かってきているようだが……」
屋敷の庭でベア達と戯れていたソフィは、空を見上げながらそう呟く。
ヌー達がこの屋敷に来るという話を聞いた後、ソフィは自分達の居場所を知らせる意味を込めて、結界などで自分達の魔力を隠蔽する事をせずに居たが、それでも直接ここに来る前に『念話』での連絡が来ると思っていたが故に、少しばかり疑問を抱きながらこちらに向かってくる方角の空を見上げているのだった。
「妙ですね、ソフィさん。確かにヌー殿とテア殿が近づいてくる気配は感じ取れてはいますが、いつものヌー殿の『魔力』が感じられません……」
ヒノエとリーネの一件が済んだ後に再びソフィの傍に戻ってきた六阿狐は、ソフィと同様に空を見上げながらそう声を掛けてくるのだった。
「うむ。魔力を抑えているにしても『隠幕』であれば、このように微弱な魔力すらも感じられる事はないであろうし、傍に居るであろうテアの『魔力』がそのまま感知出来るというのも不自然だ。何より何の連絡もないというのが気に掛かる。最初はミールガルド大陸で物珍しいものを見つけたが故に、色々と見てまわっていて連絡をするのを忘れておるのかとも思っていたが、ここまで近くに近づいていながら何の連絡も寄こさぬというのは流石におかしい……」
まだ目視出来る距離ではないが、すでにヴェルマー大陸の空の上を飛んでいるというところまで来ているのを感じ取れているソフィ達は、訝しむように空の上を見続けていた。
やがてソフィの『魔力』を頼りにここに向かってきていたであろうヌー達が、遂にセグンス上空まで姿を現すと、ようやくベアやロードの配下達も彼らの姿をその視界に捉える事が出来るようになり立ち上がるのだった。
「あれは……!」
そして当然にソフィの目にも、テアに抱き抱えられているヌーの姿が目に入るのだった。
直ぐにソフィは屋敷の庭から飛び上がり、遥か空の上に居るテア達の元に一瞬の内に辿り着くのだった。
「――」(わぁっ!? あ、危ない……!)
ソフィの『魔力』を頼りにここまで来ていたテアは、ようやく近くまで辿り着いたと思っていた矢先に、そのソフィの『魔力』が自分の傍の空の上にまで移動してきた事によって、目で見るより先にソフィの気配に驚いてしまい、腕の中のヌーを空から落としそうになって、慌てて胸元に引き寄せながら抱え直すのだった。
「ん、ここは……?」
そして意識を失っていたヌーは、急に柔らかいものが顔に当たった事で目を覚ますのだった。
「――」(良かった……、目を覚ましたか!)
ミールガルド大陸のコーダの港町に着く頃には、ヌーは眠るように意識を失ってしまっていた為、ようやく目を覚ました事でほっと胸を撫で下ろして安堵するテアであった。
「どうやらお主、魔力が完全に失われているようだが、身体の方は動けるのか……?」
ヌーは目を覚ました直後、何とか自分で空を飛ぼうとテアの腕から離れようとしていたが、自分の力で空に浮き始めた瞬間に、フラフラと身体を揺らしながら落ちそうになってしまい、再び慌てたテアに支えられるのだった。
「駄目なようだな……。ふむ、ひとまず我の屋敷に移動するとしようか」
そう言ってソフィは『高等移動呪文』を用いて、ヌー達を屋敷の庭へと移動させるのだった。
唐突に遥か上空へと飛翔していったソフィが一瞬の内に魔法で戻ってきた為、屋敷の庭でぼんやり見上げていたベアやハウンド達は、驚きながらも慌ててソフィの元へと駆け寄ってくるのだった。
「おかえりなさい! やっぱり、ヌーさん達だったのですね」
「うむ。すまぬが我はこやつの容体を見る必要がある。六阿狐よ、お主はリーネ達に事情を説明しに行ってくれぬか?」
「わ、分かりました!」
ソフィの言葉を聞いた六阿狐は、直ぐに屋敷の中へと駆けていった。
(ふーむ……。戦闘があったようには思えぬし、特に外傷があるわけでもない……か。これでは『救済』を用いてもあまり意味を為さぬだろうが、体力ぐらいは戻しておくとしようか)
そう考えたソフィは、テアに支えられて何とか立っている状態のヌーに『救済』の魔法を発動させるのであった。
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