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2140.テアのトラウマ

「まぁ研鑽の仕方はそれぞれだがよ、てめぇら人間共は俺ら魔族達に比べて寿命が短いんだ。せっかく精霊共の『(ことわり)』がある世界なんだからよ、恵まれている事に感謝して研鑽方法を考えるんだな」


 もうこれ以上言い争っていても時間の無駄だと感じたのだろう。ヌーは吐き捨てるようにニーアにそう告げると、そのままこの場から去ろうとし始めるのだった。


「ま、待ってくれ! さっきは僕も悪かった……。一人で居ると色々と考えてしまって、余計な事まで口にしてしまったと今は後悔してるよ……。色々と便宜を図ってくれて感謝する。ソフィ君に会ったら、僕はもう大丈夫だからと伝えてくれると嬉しい」


 憑き物が落ちたかのような表情を浮かべたニーアは、ヌーの行った事に感謝しつつ、ソフィによろしく伝えてくれと告げるのだった。


「ふんっ、まぁ近日中に会う予定があるからな。覚えていたら伝えておいてやる」


 そう言ってヌーはニーアに背を向けると、そのまま去ろうとした足を再び止めるのだった。


「?」


 倒れている仲間達を道の端へと移動させようと担ぎ始めていたニーアは、再び立ち止まってこちらを振り返ったヌーを見てこちらも仲間達を一端降ろして立ち上がるのだった。


「そういえばまだ聞きたい事があったんだがよ、てめぇは『クッケ』とかいう町が何処にあるのか分かるか?」


「クッケ? ああ、それなら……」


 …………


 ニーアからクッケの町がある場所の方角を教わった後、彼の厚意で大量の魚と冒険者達にかけた『金色の目(ゴールド・アイ)』の礼代わりにと、この世界の通貨を数枚程貰ったヌー達であった。


「――」(本当に今の人間はいい奴だったなぁ。これで美味しい食べ物いっぱい食べられるぞ!)


「ククッ! ここは港町だからな。先にこの町で腹ごしらえを行う事にするか。それにしても、こんだけデケェ魚だからなぁ、刺身も食べ放題だぜ。最初はどうなるかと思ったが、この町に来て正解だったな」


 ヌーとテアは上機嫌になり、手元の大量の魚が入った籠を見ながら、大変嬉しそうに会話を行うのだった。


「――」(私たち二人だとこんなに沢山食べられないだろうし、この町の食堂で私達の分を捌いてもらって、後はソフィさん達の元に届ける事にしようよ)


「まぁ……、別にそれでも構わねぇがな。あの野郎にも今回は世話になっちまったし、少しくらいは恩を返してやってもいいかも……、しれねぇな」


 テアの言葉に複雑そうな表情を浮かべたヌーだが、最後にはそう口にして大きく溜息を吐くのだった。


「――」(それがいいよ、私は呑まないけどお前もソフィさんもお酒大好きだし、この前も一緒に呑もうって誘われたんだろ? いい機会じゃないか。お酒はソフィさん達に用意してもらって、お前はこの大量の魚を渡せば、お互い大助かりだろ?)


「うるせぇな……、まだ一緒に呑むと決まったわけじゃねぇよ。まぁ別に奴がどうしても俺と飲みたいって言いやがるなら、少しくれぇは考えてやってもいいかもしれねぇがな」


(こいつ、本当に素直じゃないよなぁ。ノックスの世界に居た時、私が隣の部屋で『力の魔神』様と朝まで喋っている時、こいつはソフィさんととっても楽しそうにお酒を呑んでいた癖にさ! はっ! ま、待てよ……!? も、もしかしてソフィさんとこいつが呑む時、またもしかしたら『力の魔神』様が顕現(けんげん)なされるんじゃないか!?)


 かつて『力の魔神』にテアは、ソフィが如何に素晴らしい存在なのかという話を一晩中聞かされて、非常に眠たい気持ちを抱えながら、いつまでもいつまでも放してもらえなかった時の事を思い出し、わなわなと身体を震わせながら、最後には頭を抱え始めるテアであった。


「お前はまたさっきまで機嫌良かった癖によ、いきなり何をそんなに怯えてやがる? まぁ別に奴と呑むとかの話は置いといてよ、まずはさっきも言ったが、この町で腹ごしらえを済ませた後、一度だけソフィが言っていやがった『クッケ』の町近くにある山脈とやらを拝みに行くのが先だ。そんでその後に奴らと呑み交わして英気を養った後、フルーフの奴と死神皇の野郎と決戦だ」


「――」(ああ、そうだな……)


 テアも『死神皇』と戦うという言葉を聞いて、気持ちを新たにした様子で真剣な表情を浮かべ始めるのだった。

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