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2137.互いにソフィを知る者

 勲章ランクAの冒険者を三人も擁する『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』は、パーティリーダーのニーアを残して、その全員がヌー一体にやられるのだった。


 それも圧倒的という言葉が相応しい程であり、見ている者達にとっては倒れている『リルド』や『エレナ』は本当に意識を失っているのかと疑問を抱く程であった。


 それもその筈、見ている一般人からすればヌーは、直接手を合わせたレオル以外の者達に対しては、単に視線を向けただけにしか見えず、そこから勝手にリルド達が意識を失って倒れていったのだから、信じられないのも無理はないと言えよう。


 やがてヌーは首を鳴らしながら倒れている者達を一瞥すると、最後に残った『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』のリーダーである者の姿をその両目で捉えるのだった。


「先程まではこいつらと違って争いを止めようとしていたようだが、どうやら『魔力』を杖に込め始めている姿を見るに、お前もヤル気のようだな?」


 恐ろしい形相で告げてくるヌーに、ニーアは何とか震えている身体を表に出さぬように誤魔化す事が出来ていたが、それでもあっさりと『リルド』や『エレナ』に『レオル』を倒したヌーに勝ち目はないと意識付けられていた。


「そうだね……。流石にここまで仲間達をやられたら、ソフィ君の背中を見てきた身として、黙って見ているわけにはいかないかな。せめて敵わないまでも……『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』のリーダーとしての意地は、張らせてもらうつもりさ!」


 そう言ってニーアは、かつてソフィに教えられた()()()()()()の『(ことわり)』を用いた『魔力コントロール』を行い始めていき、高まりつつあった『魔力』が一気に彼の持つ『最大値』にまで達するのだった。


 それを見ていたヌーは、一つの確信を抱き始める。


(こいつの『魔力』の高め方は、他でもない俺達の世界である『()()()()()()』の世界の『(ことわり)』を用いていやがった……。それにこいつはさっきソフィの名を呼びやがった。ちっ! どうやらこいつはソフィの知り合いで間違いないらしいな。それもあの野郎の背中を見てきた身とか言い出しやがった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!)


 ヌーは最初から『紅蓮(ぐれん)魔導(まどう)』を誰一人殺すつもりまではなかったが、目の前の男が()()()()()()()()と認識した事で、単に傷つけるだけでもまずいかもしれないと考え始めるのだった。


 流石に()()()()()()()()()()()()()であれば、多少はイザコザがあったとしても殺されるまでは行かないだろうと判断は付くのだが、それでも目の前の男がどれだけソフィと親しいかによっては、それも()()()とは言えない。


 もし万が一、目の前の男がヌーの想像以上のソフィと親しき者であった場合、この後にソフィと再び共に行動する予定がある以上は、余計な事は少しであってもしておきたくないという考えが彼の頭を過ったのであった。


「おいてめぇ、その『魔力コントロール』のやり方を見る限り、間違いなくこの世界の『(ことわり)』を使ってねぇな? それにさっきソフィの名を出しやがったが、てめぇはソフィの事を何処まで知っていやがる? 奴はこの大陸とは異なる遠く離れた場所の国の王だった筈だ」


「え……?」


 やられる覚悟を持ちながらも戦いを決意していたニーアは、いきなり目の前の背の高い男からソフィの名前が出た事に驚き、咄嗟に疑問の声を上げてしまうのだった。


「俺もソフィとは()()()()()……()()()()()。てめぇがソフィと知り合いなら、ここで止めてやってもいいかと思ったんだ。まぁお前がこのまま続けたいって言いやがるならそれでも構わねぇがよ、このまま続けたところでお前に微塵も勝ち目はねぇぞ?」


 このまま続けると言うのなら仕方ないと思いながらも、ヌーはこのまま奴が杖を降ろせば丸く収まると考えて、ニーアにこの先を決断させようとボールを投げたのだった。


「……僕に勝ち目がないのは分かっているよ。それにソフィ君と君が知り合いだったのだとしても、ここまでやられて僕だけが引き下がってしまったら、この後に目を覚ました彼らに何と言っていいか分からなくなる。だ、だから……!」


「なら、そいつらからここであった出来事を記憶から消してやろうか?」


「えっ!?」


「てめぇが続けようとする理由がそれだけなら、俺にはそれを解決させられる手立てがある。お前もソフィを知っているなら、俺の言っている意味をある程度は理解が出来るだろう? 俺とどうしても戦いを続けたいという気なら構わねぇが、どうするよ?」


 ニーアはソフィの事を知っているなら理解が出来る筈だとヌー告げられたが、その手立てというものにはピンと来なかった。


 しかし目の前の大男が嘘を言っているようには感じられず、この一連のやり取りをリルド達の記憶から失わせられるのであれば、このまま何事もなく矛を収められるかもしれないと意志が揺れ動くのだった。


 悩んでいる様子のニーアを眺めているヌーに、テアが小声で話し掛けてくる。


「――」(あいつの言っている言葉は分からなかったけど、お前の口からソフィさんの名前が出てきたのはしっかりと聞こえてた。どうやらお前もソフィさんの知り合いを傷つけたらまずいと思ったんだろ? ()()()()()()()()()()されるも――……アイタッ!?)


 半ばヌーを揶揄うように声を掛けてきたテアだったが、最後まで言葉を言い切る前にヌーに前を向いたまま額にデコピンされてしまい、仰け反りながら涙目でヌーを睨むのだった。


「てめぇは黙ってろ。別にそんな心配しているわけじゃねぇよ」


「――」(悪かったよ! でもいきなりデコピンは止めろよ! びっくりしたし、めっちゃ痛いんだよ! お前のデコピン!)


 テアは額を擦りながらそう口にして、再び後ろへ下がるのだった。


「ぷっ――」


 そしてどうしようかと考えていたニーアは、そのヌーとテアのやり取りを見て思わず吹き出してしまうのだった。


 ……

 ……

 ……

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