2134.コーダの町での大魔王ヌーの行動
ソフィが自分の屋敷の庭でハウンドたちを可愛がっている頃、ミールガルド大陸のニビシアの町を出たヌー達は、そのまま空を飛んで移動を行い、何とグランの隣町である『コーダ』に辿り着くのだった。
どうやら美味しい食べ物を探すというテアとの話から、魚が一番美味しく食べられそうな町を探すという事になって、海が近い辺境と呼べるコーダの町に辿り着いたようである。
もう目と鼻の先に『グラン』の町がある為、昨日もしこの町にヌー達が辿り着いていれば、もしかするとソフィ達の『魔力』も感知出来ていたかもしれなかった。
「クククッ! テア、この町なら間違いなく美味い魚料理が食べられるだろうぜ?」
「――」(ああ、すげぇ潮の香りだしな。それに見てみろよ! あっちにもこっちにも大きな魚が並べられてるようだぞ!)
「ちっ! 最初から海沿いの空の上を飛んでいりゃ良かったな。そしたら昨日の内にあんなクソみてぇな町じゃなくて、この町に辿り着けていたのによっ!」
「――」(ま、まぁまぁ、落ち着けって! それより私はもうお腹空いて倒れそうだ。移動中も何度かお前が渡してくれた干し肉食べたけど、あんなのだけじゃ物足りないよ!)
「うるせぇな! 干し肉を食べてるときは幸せそうな顔してたじゃねぇかよ。それにあんなモンでも『魔界』じゃ贅沢品の一部だ。魔族のガキ共ならあんな干し肉一つでも奪い合いから果てには殺し合ってもおかしくねぇぐれぇなんだぞ?」
「――」(そ、そんなに怖い顔して怒らなくてもいいじゃないかよ! 悪かったよ、もう……)
食べ物の事になるとヌーの凄みのある恐い顔が、更に恐ろしいモノに変わる為、テアは口を尖らせながらも素直に謝罪するのだった。
そんな話を二人でしていると、彼らの前から一組の冒険者が歩いてくるのが目に入るのだった。
「ちっ! 要らないって言っているのに、こんなに大量の魚を渡してきやがって! 依頼達成の礼をするつもりなら、依頼の報酬をもっと高くしろよっ!」
目の前を歩いてくる冒険者パーティの中で一番背が高く、前を歩くヌーと同じくらいの背丈の筋肉隆々の大男が、魚がいっぱい入っている籠を抱えながら文句を言うのだった。
「そ、そんな事言っちゃ駄目だよ! それに今回も連続してのギルド討伐指定依頼だったんだから、グランに戻れば相当大きな報奨金が待っているだろうし……ね?」
「それでも俺達『紅蓮の魔導』を朝早くから呼び出す程の『指定魔物』じゃなかったのは確かな事だと思うよ? まぁディラックさんも遠征から戻ってきたばかりで町に居るから丁度いいと思って僕達を指名したんだろうけど、本当にいい迷惑だったよ。朝帰りで疲れてたんだから勘弁して欲しいもんだ」
「本当そうよね。ニーアが依頼を安請け合いするからよ! ほんっとに迷惑! パーティメンバーの事を考えるのもリーダーの仕事の一つでしょう!?」
「ご、ごめん……! で、でもディラックさんが、緊急の依頼だって言うからさ……。それに確かに『スネークサーペント』はギルド指定Bランクの魔物だし、こんな近くに現れる事なんて珍しいし、僕達に依頼するのも当然と言えば当――」
「ああ、もう分かったって! 面倒事を全部引き受けてくれるからリーダーになってもらったけど、やっぱりニーアにはリーダーの座を降りてもらう方がいいわね! リルド、アンタリーダーやってよ!」
「それはご勘弁。金と名声は欲しいが面倒事はお断りだ。それに例の噂もあるし、今の時期にリーダーをやる何て面倒なのは御免だね」
ヌー達の前を歩く冒険者パーティだが、ニーアと呼ばれていた男以外の他の者達は、道の真ん中を横一列に並んで雑談をしており、先程から道を歩いている人々は、彼らを迷惑そうに思いながらも道を譲って歩いて行くのだった。
そしてその冒険者一行がヌー達の前まで歩いてくるが、これまでの人々とは異なり、ヌーは全く彼らに道を譲るつもりはないらしく、そのままじっとそこに立っていると、遂にパーティ内で揉めていた冒険者達も会話を止めて、ヌー達の方に視線を向け始めるのであった。
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