2133.思いもよらぬ言葉と、ブラストの自己研鑽
※加筆修正を行いました。
ソフィ達が出ていった後、リビングではリーネ達も後片付けを終えて椅子に座るのだった。
「さて、それじゃ昨日言っていた通り、結論を言うわね?」
「あ、ああ……! どんな結果であっても私は受け入れるつもりだ! だ、だから遠慮せずに早く言ってくれっ!」
そう告げるヒノエだが、相当に緊張している様子で言葉遣いも彼女らしいものであった。
「それじゃ、言うわね。昨日ソフィと夜に話し合った結果だけど、ソフィは貴方を受け入れると約束してくれたわ」
「!?」
断られるだろうと覚悟をしていたヒノエは、リーネに告げられた言葉に動揺を隠せずに目を丸くするのだった。
「ただ、ようやくソフィも貴方の事を一人の女性として気に入っていると自覚したみたいで、今すぐに結婚というわけにはいかなそうなの。ひとまずは婚約という形で貴方も納得してくれないかしら?」
ソフィと結婚している妻のリーネからそう告げられたヒノエは、何ともおかしな気分に陥りながらも半分は、喜びで感情が埋め尽くされるのだった。
――そしてもう半分は、本当に良いのだろうかというモヤモヤした感情であった。
「ヒノエさん、まだ昨日私と話した事を悩んでいるようだけど、本当に私の事は気にしなくてもいいからね。それよりも貴方には私には出来ない事で、ソフィの力になってあげて欲しい……。他でもない私と同じソフィを愛する気持ちを持っている貴方に……ね?」
再びリーネは自分に出来ない分野で、ソフィを頼むとヒノエに告げるのだった。
「それはもちろん言われなくてもそうするつもりだが、本当にソフィ殿は私を……?」
どうやら本当に無理だと考えていたようで、今でもまだ彼女は夢心地で信じていいのかと不安が過って居る様子であった。
「ふふっ、こうして何度も言っているのに。まぁ、ソフィが戻ってきたら二人にしてあげるから、直接貴方が訊いてみたら?」
そう言ってにこりと微笑むリーネの表情を見て、ヒノエはようやく実感が湧き始めて来たのか、ぎゅっと手を握りながら大きく深呼吸を行うのだった。
……
……
……
九大魔王のブラストは朝食を取り終えた後、リーネが自分の為に用意してくれた部屋に入るのだった。
「さて、では今日も始めるとするか……」
椅子一つない広い部屋の一室の中、ブラストは静かに詠唱を唱えると部屋の中に『結界』が展開されていく。
一介の大魔王達が使う一般的な『結界』とは異なり、ブラストが展開したのは『大魔王最上位領域』の結界である。
しかし当然にこのソフィの屋敷内で『極大魔法』を展開するつもりなどはなく、あくまで『結界』を展開したのはもしもの時の為によるものであった。
ブラストが『結界』を展開した後、静かにその場に座って目を瞑り始める。
そして両手を前に出し始めると、左手に淡い『青』、右手に『紅』のオーラを出し始める。
どうやらブラストは自身の瞑想を行いながら、同時に魔力を手に集約させて『二色の併用』を行い始めたようであった。
『二色の併用』を展開し始めてから数秒が経ち、ブラストの集中は更に高まり始めていく。
やがて自分の心臓の音が聞こえるかというくらいにまで神経を鋭敏にすると、そこでようやくブラストは自身に『金色』を纏い始めるのだった。
――だが、そこで一気に心が乱れ始めたかと思えば、自身の手の平の上で集約していた『魔力』のコントロールが上手く行えなくなり、あっさりと『二色の併用』が雲散していき、自身の『魔力』が暴走を始めようとするのを彼自身が感じ取るのだった。
「ちっ! このままではまずい……!」
暴走していた『魔力』が用意していた『結界』の方に行きかける感覚を覚えたブラストは、そう独り言ちた後に何とかしてこのまま『魔力圧』を放たぬようにと、改めて『魔力コントロール』を行い始めるのだった。
そして何とか落ち着きを取り戻したブラストは、暴走しかけていた自身の『魔力』ごと掻き消す事に成功し、大きく深呼吸をするのだった。
「また駄目か……。くそっ! ソフィ様の行う『三色併用』を目の当たりにしてから、幾度となく俺も再現を試みているというのに、未だに全く出来る気がしない! 『三色併用』は『二色の併用』とはやり方が全く異なるというのは理解したが、では一体『金色』と、どう繋げれば良いというんだ……、っぐ!!」
大魔王ブラストは自分の『三色併用』が上手く行かず、激昂した事で普段抑えていられた『破壊』の衝動が出始めて苦しそうに両手で頭を押さえるのだった。
「はぁっ、はぁっ……っ! 駄目だ、今日はここまでにしなければ……!」
そして出来ない自分に苛立ちを覚えながらもブラストは、その場から立ち上がって展開していた『結界』を消しながら、訓練室を後にするのだった。
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