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2116.テアによるヌーの諭し方

 ニビシアの町に辿り着いたヌー達だが、まだ冒険者ギルドが何かという事すら分かっていない状態である為、まずはこの町の住民から色々と聞き出そうと、行き交う人々に声を掛ける事にしたのだった。


 声を掛けようと決めて辺りを見回し始めていたヌーは、目の前から歩いてくる若い男女二人組に視線を向けると、その身なりを見て再び溜息を吐いた。


 その二人組もここまでこの町で見てきた者達のように長いローブで身を包んでおり、右手に木の杖を携えていたからである。


(ちっ! どいつもこいつも似たような恰好しやがって。一体何故こんな奇妙な恰好が流行っているのか知らねぇが、見ていて暑苦しいし、辛気くせぇったらねぇぜ……!)


 この大陸の人間達の魔法使いと言えば、皆一様にこの町の住人達と似た恰好をしているが、あくまでそれは冒険者に限る話であった。しかしこの町はミールガルド大陸でも魔法使いの町として有名な程であり、単に冒険者だけではなく、冒険者ギルドに関係のないただの住民でさえ、魔法に関しての研究を行う程に『魔』の概念に精通していて、否が応にもローブ姿が目立つようであった。


「おい! そこのお前ら、ちょっといいか?」


 楽しく雑談していた様子の男女二人組は、目の前の長身の男に突然に怒鳴るように声を掛けられた事で、身体をビクつかせながら顔を上げたのだった。


「な、何ですか……?」


 勇気を出して男は持っていた杖を握りしめながら、ヌーの目を見ながら口を開く。


 女性の方は、そんな男の背中に移動して、恐々としながら男の肩口からヌーの方を見るのだった。


「お前ら、冒険者ギルドって何か分かるか?」


「ぼ、冒険者ギルド……? は、はぁ、それはまぁ、分かりますけど……」


「ほう? 知っているなら話は早い。俺に分かるように冒険者ギルドってのが何なのか、しっかりと説明しやがれ」


 いきなり声を掛けてきて横柄な態度を取るヌーに、最初はビビっていた男も段々と慣れて来たのか、少しだけ余裕を持ちながら再び口を開くのだった。


「なんだよアンタ、冒険者になりたくてこの町に来たってところか? だったら余所の町に行った方が良いよ? この町は魔法使いを優遇するようなギルドだから、アンタみたいな力自慢みたいな奴らは、職員に冷めた対応された挙句に門前払いをされるか、難癖つけられて勲章ランクを一番下で登録させられるかもよ」


 最初はオドオドとしていた男だが、今度はしっかりとヌーの目を見ながら具体的な説明を行うのだった。


()()使()()()()()()()()……か。どうやら冒険者ギルドってのは『魔』の概念理解度を深める学業を学ぶような施設って感じか? 成程、ソフィが調べろって言っていやがったのは、()()()()()()()()()()()()()を一から学べと遠回しに言いたかったわけだな。ちっ! まだ奴からはシギンの野郎や、神斗から『魔』を教わるには、俺の基礎が足りてねぇと思われてるってわけかよ!」


 突然に訳の分からない言葉を吐きながら苛立ちを見せ始めたヌーに、再び怯え始めた男が庇っている女性の手を握ってこの場から離れようとするのだった。


「オイ!! ちょっと待てや、その冒険者ギルドって施設に俺らを案内しやがれや!」


「えっ……!? い、いや、俺達も急いでて……」


「そ、そうよ! 勝手に絡んできて、ちょっとは図々しいとは思わないの!? デートしているんだから邪魔しないでよ! 頭の足りなそうな木偶の坊!」


 捨て台詞のように女性がそう言うと、男はその女性の手を掴んで思いきり走り始めていった。


「上等じゃねぇか……」


 去って行く二人組の背中を眺めていたヌーは、その背中に向けて右手を翳し始める。


 どうやらヌーは二人組に向けて『極大魔法』を放とうとしているようだ。


「――」(お、おい、待てって! あの人間達に何て言われたのかは分からないけど、何も殺す必要まではないだろ! お前ホントに沸点低すぎだっ! こんな調子で声を掛けるたびに気に入らない、気に入らないで殺しまくってたら、この町は壊滅しちまうだろ!)


「あぁっ!? 壊滅させちまえばいいだろうが! 別にこんな町に二度と来る事もねぇし、潰れちまおうが何だろうが、俺の知ったこっちゃねぇよ!」


「――」(それでいいんだな!? ソフィさんと再会した時に笑われちゃうぞ! 結局『冒険者ギルド』一つ調べられなくて、思い通りにいかないからって頭にきて、本能のままに町を壊してきた『どうしようもない奴』って印象を付けられちゃうぞ!)


「ど、どうしようもない奴……だと?」


「――」(だってそうだろ? 調べ物も碌に出来なくて、町を破壊して戻って来るような奴だぞ? 子供でさえもっとマシだって思われてもおかしくないだろ!)


「……」


 どうやらテアの言葉を理解したようで、ヌーは高めていた『魔力』を消し去り、殺そうと照準を二人に合わせていた手を下げるのだった。


「確かに()()()()()()()()()と思われるのは勘弁ならねぇ。俺はさっさとソフィ共の高みにまで上り詰めなきゃならねぇんだ。だと言うのに目指す奴らから見下されちまえば、今後にも関わってくる気がするしな……」


 どうやらテアの諭し方はヌーにとって、非常に効果を齎した様子であった。


 ……

 ……

 ……

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